3.刃を宿した揺りかご
やがて、アンナは十六歳で男児を出産しました。
名を、セルジオ。
「見て、お姉さま!私のかわいい、天使のようなセルジオよ!」
ベッドの上で赤ん坊を抱くアンナは、狂信的なまでの歓喜の瞳をしていました。
プラチナブロンドの髪を持った愛らしい赤ん坊。
「お母様、お母様……!」
数年が経ち、少し大きくなったセルジオは、厳格な父親を怖がり、いつもアンナの後ろに隠れて泣くようになりました。
「大丈夫よ、セルジオ。お父様は怖いけれど、お母様は世界で一番セルジオを愛しているわ。
だから、ずっとお母様のそばにいなさいね」
「うん! 僕、お母様が大好き!
お母様だけがいれば、他は何もいらない!」
息子をぎゅっと抱きしめ、歪んだ万能感に浸るアンナ。
私はその光景を、部屋の隅から静かに見つめていました。
「アンナ様、セルジオ様は本当にアンナ様によく懐いておいでですね。
本当に、なんて可愛らしいお子なんでしょう」
「ええ、当然よ!この子は私の宝物。
アレクみたいに冷たい人間には、この子の可愛さは分からないわ。
この子は私だけのものよ!
さあ、セルジオ。お母様は夜会に出かけてくるわね。みんなにあなたの可愛さを自慢してこなくちゃ!
良い子にして待っててね、セルジオ。帰ったらまた抱きしめてあげるわね」
もう一度セルジオをぎゅっと抱きしめてからアンナが部屋を出た後、私は一人、セルジオの前に立ちました。
残された幼いセルジオが、さっきまでの泣き顔を嘘のように消し去り、じっと私を見上げていました。
その琥珀色の瞳は、すでに母親の赤毛の血など一滴も感じさせないほど、父親のアレクに酷く酷く似ていました。
「……賢い子」
私はセルジオの頬をそっと撫で、耳元で囁きました。
「あなたはヴァレンティの男。
あのような愚かな生き物に、引きずられてはダメよ。
完璧に、冷徹に育ちなさい。
でもね、アンナお母様を安心させるために、今は可愛いお人形のフリをしていなさいね」
幼いセルジオは、感情の消えた瞳で、小さく首を縦に振りました。
ああ、完璧だわ。
この子は、いずれあの哀れな母親を自らの手で切り捨てる、最高に鋭利な刃になる。
私は胸の内で、声をあげてあざ笑っていました。




