16.美しく回り続ける世界
舞台は、ヴァレンティ公爵邸の、目も眩むほどに華やかな大広間。
シャンデリアの眩い光が降り注ぐ中、セルジオ様とマリア皇女殿下の、盛大な婚約披露パーティが執り行われていました。
アンナという「不名誉な汚点」が消え去った今、社交界の重鎮たちは、非の打ち所がない我が家の完璧な美しさを、心からの言葉で称賛していました。
ひな壇には、私たちが命をかけて作り上げた「完璧な家族」が並んでいます。
当主として圧倒的な威厳を放つ、最愛の夫アレク。
その隣で、公爵夫人としての完璧な気品と美しさを湛え、勝利の微笑みを浮かべる私、キティ。
マリア皇女殿下の手を取り、未来の当主として完璧な優しさと理性の笑みを浮かべる十九歳のセルジオ様。
そして、私の手によって完璧な淑女の手本として美しく育てられた、可憐なアニー。
「素晴らしい……なんと美しく、高貴な公爵家だ」
「ああ、これこそがヴァレンティ家の本来のあるべき姿だな」
「一点の曇りもない、まさに理想の家族だ」
社交界の人々は、口々に私たちを祝福し、持て囃しています。
もう、誰も、あの凍てつく駅で粉々に砕け散った「氷の薔薇」のことなど、覚えてもいませんでした。
私はアレクの差し出してきた手に、そっと自分の手を重ねました。
振り返ったセルジオ様の琥珀色の瞳は、ただ冷ややかに、不純物の消え去ったこの完璧な世界の完成を喜び、静かに微笑んでいました。
――あなたが死んでも、私たちの世界は、こんなにも美しく回り続けるのよ。




