15.白銀に溶ける赤※レックス視点
「ひっ……!
あ、ああ、あああああ……っ!!」
冬の駅の物陰で、俺――レックスは、ガタガタと全身の血が凍りつくような恐怖に震えていた。
ただの偶然だった。
駐屯兵として駅を警備していたときのことだったんだ。
アンナがフラフラと駅を歩いているのを見かけ、思わず物陰に隠れてしまった。
そこで俺が目撃したのは、かつて俺が賭けの道具として弄び、そして捨てた女が、公爵家の人間によって冷酷に線路へと突き落とされる瞬間だった。
ガラス細工のようなエメラルドの瞳と一瞬目があった。
直後、線路に飛び散る、鮮やかな赤。
それは彼女の燃えるような赤毛のようでもあり、散り際の本物の薔薇のようでもあった。
「あいつら……正気じゃねえ……!
ヴァレンティ公爵家は、邪魔なものは実の親だろうが何だろうが、虫ケラみたいに殺すんだ……!」
次は俺だ。
公爵夫人を寝取り、あの完璧な家族に最大の泥を塗った男。
俺が生きている限り、あの冷徹な化物たちが俺を逃すはずがない。
「クソっなんでこうなるんだ!アンナ…アイツのせいだ…ただの軽い火遊びだったはずなのに…俺も公爵家に殺される!
逃げなきゃ……!
前線へ、誰も俺を追ってこられない、あの地獄の戦場へ……!」
俺は恐怖に狂いそうになりながら、異国の最前線に志願した。
激戦地?生存率が皆無?そんなの関係ない!国内にいれば間違いなく消されるんだ…!
異国なら奴らも追ってこないかもしれないじゃないか!
命からがら、死地へと向かう列車に飛び乗った。
死にたくないんだ!
あの美しく完璧な公爵家の復讐から、少しでも遠くに逃げ切ってやる。




