表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
乙女ゲーの主人公にTS転生した私、シナリオを放棄して推しの悪役令嬢と2人で学園ダンジョンに挑む!  作者: 真嶋 青
第一部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

46/55

第45話 狂気

 腕の中でグズグズ泣いているリゼット。

 その姿に胸が張り裂けそうなほど愛おしさを感じてたが、どうやらそれどころではないらしい。


「転生者、と言いましたか? ダークネス伯爵子息……いや、クロード」

 

 転生者として記憶を取り戻してから、そんなこともあるかもしれないと考えていた。

 

 私以外の、転生者がいる可能性。

 

「ほう。その反応。どうやら、本当に転生者らしいな。通りで、平民が規格外な魔法能力を持っているわけだ」


 私の反応を見て、クロードは納得顔で頷く。

 余裕そうな態度をとっているが、奴はどうして平然と立っていられるのか不思議なほどに、全身を焼けこげさせている。

 

「いや、それは私が主人公だからであって、転生は関係ないよ」

「主人公? 何を言っているんだ貴様は?」

「ん? いや、だから、私はゲームの主人公の、リーナ・フローライトだから……」


 クロードは首をかしげている。


(あれ? もしかして、こいつ、ここがゲームの世界だって知らない?)


「げーむ? なんだそれは?」

「え? ゲームを知らないの?」


(ゲームを知らないって、こいつはいつの時代から転生して来たんだ? 江戸時代とか言わないよな?)


 そこまで考えて、自分の考えに穴があることに気づく。

 私は異世界からこの世界へ転生している。

 そして、世界が二つしかないと考える方が不自然だ。


(もしかすると、クロードの中身は、私とは違う世界から来た人間?)


 プリンス・ヴァイブスというゲームとは全く無縁の世界からの転生者。

 それが、目の前のクロード・ダークネスなのかもしれない。

 

「ふむ。貴様からは色々と情報を引き出す必要がありそうだ」


 クロードは、私と言う存在を興味深そうに眺める。

 まるで、実験用のモルモットを観察するような目で。

 

「あんたがまともな奴なら、聞かれたことには素直に答えてやっても良いんだけど」

「まとも、とは?」

「人をゾンビにしたり、ダンジョンに瘴気をまき散らしたりしない人のことかな」

「ふむ、参ったな。どうやら、我はお前がいう()()()ではないらしいぞ」


 ケタケタと愉快そうに笑うクロード。

 その姿は、もはや完全に私の知るクロード・ダークネスとは乖離している。


(クロードが転生者で狂人か……私がシナリオ放棄なんてする前から、この世界のネジは外れてたってわけだ)


 これまで起こっていた数々のイレギュラー。

 その元凶は、どうやら目の前の男だとわかった。

 

「お前の目的はなんだ、クロード。シャルルたちを誘拐したり、ゾンビを作ったり。あんたはいったい何がしたい?」

「……リーナ・フローライト、貴様は、魔法というものをどう思う?」

「なんだって?」

「魔法だよ。我はこの世の魔法を愛しているのだ。それはもう、心の髄から」

 

 どこか陶酔したような目。

 クロードをは私を見てるようで、何か違うものを見ているような気がした。


「それとお前のしたことの因果関係が見えてこないんだけど」

「察しが悪いな小娘」

「いいや? 私は最愛のご主人様から察しがいいと評判だよ」


 未だに私の胸の内にすっぽり収まるリゼット。

 その頭を優しく撫でる。


 彼女は私の話を聞いてどう思っているだろう。

 まだ話を聞くほど冷静になれていないか。

 あるいは、あえて私が話し終えるのを待ってくれているのかもしれない。


「魔法の実験だよ。全ては、我の魔法を至高の領域へ至らせるための試みだ」

「だから人間の死体を動かしてみたって?」

「そうだとも。あれは素晴らしかろう? 死者の魂魄を肉体へ強制的に縛り付けるのだ」


(つまり、アンデッドの中にはしっかり人の心が宿っていたわけだ……)

 

 私に助けを求めるようなあの姿。

 思い出すだけでも胸糞が悪くなる。

 

 クロードはイカれている。

 悪意があるわけではなく、ただただ倫理観が壊れている人間。

 稀にみる本物の狂人だ。


 詳細は不明だが、ガービンの肉体が変様していたのも、こいつの実験とやらの成果なのだろう。

 人の心身をともに弄ぶなど、考えるだけでも吐き気を催す。

 だが、目の前のこいつは、それを嬉々としてやるに違いない。


「シャルルたちはどうした? まさか殺してないだろうな」

「ハッハッハ! 殺すわけなかろう。あれにはダンジョンの五十層を攻略してもらわねばならん。そのために、少しばかり肉体を強くする必要があるのだよ」

「肉体を……まさか、ガービンみたいにしちまったんじゃないだろうな?」

「うむ。まさに」


(おいマジかよ。シャルル、あんなバケモンになっちまったのか?)


 青黒く変色した筋肉に覆われる巨体。

 イケメン野郎からブサメンを通り越してバケモンに変身なんて、いくらなんでも私だって同情する。


「勘違いするな。お前が相手をした実験個体は、あくまでもプロトタイプ。シャルル殿下には完璧な処置を施しているとも」

「そうかよ。それで、アルフレッドと他の子たちはどうした?」

「アルフたちには我の実験に付き合ってもらっているよ。実験は肉体の損傷が激しくてな。アルフには殿下のために体を張ってもらっている。いやはや、3人も回復魔法師を用意した甲斐があった。おかげで、まだ死なずに我の実験に耐えてくれている」

 

 私の全身に鳥肌が立つ。

 目の前の狂人が、もはや人ですらない悪魔なのだと、私はようやく理解した。


「本当ならば、アルフではなく、リゼット・ベルナールを使って実験がしたかったんだがね。貴様が邪魔をしてくれたおかげで、計画が狂ってしまったよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ