表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/19

だん@さっちゃんズ

前回のあらすじ!

 ドウブツ園のトリちゃんに目をつけられたれんちゃんは、変装をすべくオタ研のコスプレ衣装を漁る。それを見つけたさっちゃんは、れんちゃんをイベントへと連行、勇者■■□□□□派のれんちゃんに勇者◇◆◆◆◆◆のヒロインの格好をさせ、イベントへと参加する。オタクが吹っ飛ばされるテロを起こしたり、見回りのモンスターを解剖しようとしたりするオタ研だったが、超魔王やノロちゃんの機転で乗り切る。だが、お父さんのせいでうっかりメガネを外してしまったれんちゃんは、トリちゃんに見つかるのだった!


「れんちゃんとだんちゃーん?

 お父さんがまた変なの作ったみたいだから、ちょっと研究室に行ってあげて?」

「はーい」


 最っ悪なコスプレ撮影イベントから数日。

 私ことだんちゃんは、お母さんの声でゲームから顔を上げた。

 正確には顔を上げたのは、私ではなくお姉ちゃんだ。

 今の私は、お姉ちゃんの脳内妹になっているのだから。


(よかったね? やっと元に戻れるよ?)

〈それ、本気で言ってる?〉


 前にもこんなことがあった気がする。

 そしてぬか喜びで終わった気がする。

 今回もロクなものでない気がする。


(だんちゃん? なにかとっても期待してない感が伝わってくるんだけど?)

〈だってお父さんよ? 期待できる要素、ある?〉

(きっと、今回はダンボールロボじゃなくて、超合金ロボでも作ったんだよ)

〈やめてホントに作りそうだから〉


 だらだらと頭の中でお姉ちゃんと話しながら、研究室という名の物置へ。

 ちょっと汚れが目立つようになってきたダンボール製の「七瀬理研究所」という看板を横目に、扉を開ける。


「おお、はずむつらね。待っていたぞ!」


 無駄に自信満々なお父さんの声が飛んできた。

 これは本格的に期待できそうにない。


「ん? どうした連?」

「何でもないよ? ただ、だんちゃんがちょーと不安になっちゃったみたいだから、早く安心させてあげて?」

「任せたまえ! 早速、私の渾身の一作をお披露目しようじゃないか!」


 仰々しい手振りとともに、すぐ隣の机にかかっていた布を取り去るお父さん。

 中から出てきたのは、


「んー? なんだろ、メガネケース?」

「その通り! これぞ霊的制御マシン試作第百拾四号機!

 『ただのメガネくん114号』だ!」


 見た目だけは、本当にただのメガネケースだ。

 が、私とお姉ちゃんはこれがトンデモ発明品だと知っている。


(ええっと、だんちゃん?

 変なことが起こる準備と、がっかりする準備はいい?)

〈あんまりよくないけど、いいよ。一思いにやっちゃって?〉


 そっと、メガネケースらしき物体を開けるお姉ちゃん。

 中には、何の変哲もないメガネが入っていた。

 お姉ちゃんがお父さんに問いかける。


「ええっと、このメガネ、かければいいの?」

「ああ、普通にメガネをかけるだけでいい」


「じゃあ……、えい!」


 ちょっと迷った後、メガネをかけるお姉ちゃん。


 かけるとき、一瞬、目を閉じて、

 次に開いたときには、


 目の前に、お姉ちゃんが、いた。


 まさか今度は私がダンボールロボに!?

 そう思ったのだが、


「すごい、だんちゃんが元に戻ってる!」

「もちろん、本当だとも! 弾も見てくれたまえ!」


 お父さんが、倉庫の奥から姿見を持ってきた。

 そこには、いつも通り、だらしなく制服を着崩した私が。


「え!? なに!? ホントに戻ったの!? ウソ!」

「ふふふ。驚いたかい?

 これぞ、コスプレ撮影会で!

 ちょーさん氏から得たヒントを元に!

 ノロちゃん復活の儀式から得たデータをフィードバックして開発した!

 メガネを起点に霊体を実体化させる装置!

 その名も! 『ただのメガネくん114号』!」


 何のデータをどうやってメガネにフィードバックしたかさっぱりだが、とにかくも、お父さんは私を元に戻すことに成功したようだ。

 初めてまともな発明品を渡された気がする。

 でも――


「お父さん? 私はたんちゃんのままなんだけど?」


 困ったことに、お姉ちゃんには何の変化もない。

 相変わらず、私の身体のままだ。


「うん、あくまで今、ここにいる弾は霊体が実体化しただけだからね。

 肉体は連が操作しているままだ」

「ええっと、じゃあ、たんちゃんには触れないの?」


 いきなり、お姉ちゃんに手を握られる。

 しっかりと、感覚があった。


「わ! ちょっと、お姉ちゃん? 急に触んないでくれる!?」

「あ、ごめんゴメン」


 慌てて手を放すお姉ちゃん。

 お父さんの笑い声が響いた。


「ははは、霊体になったからといって、何も幽霊になるわけではないよ。

 まあ、分身が使えるようになったとでも思うといい。

 もちろん、弾の意識は分身の方へ移っているから、今までみたいに頭の中で弾と連が会話したりはできないけどね」

「ええっと、じゃあ、前みたいに制限時間とかないの?」

「その辺は大丈夫だ。が、やっぱり距離は改善できなくてな。

 マシになったが、五百メートルくらいしか離れられない。

 あと、連が『ただのめがねクンいちいちよん号』を外すと元に戻る」

「だって、よかったね、だんちゃん?」

「はあ、まあ、ダンボールロボや超合金ロボじゃないだけ喜んであげるわ」


 まともな発明品かと思ったが、やはり穴があったか。

 ちょっとがっかりしたのが声に出たせいか、お姉ちゃんから声がかかる。


「まあまあ、ちょうど変装も必要だったし、良かったじゃない?」

「う。そういえば、そうだったわね……」


 思わず、嫌そうな声が出た。

 聞きとがめるお父さん。


「うん? 変装がなんだって?」

「何でもないよ。とりあえず、これは素直にありがとって言っとくわ」


 適当に誤魔化す。

 誤魔化しでも私がお礼を言ったのが珍しかったのか、驚いた顔をするお父さん。

 そんな私とお父さんを見て、楽しそうに笑うお姉ちゃん。


 ちょっと居づらくなった私は、さっさと研究室を後にした。



 ―――――☆



 翌日の学校。

 お姉ちゃんはメガネをかけ、私はいつも通り着崩した制服で学校に通っていた。

 一緒に教室に入った瞬間、周囲から一気に視線が集まる。


「だ、だんちゃんが分裂したー!」

「いや、どっちかが偽物だろ!」

「偽物ってどっちだよ!」

「ギャルの方が偽物であってほしい……!」


 最後の不良、後で覚えとけよ?

 ガン飛ばしながら教室を進み、自分の席に着く。

 お姉ちゃんは、当然のようにハコちゃんの席に座った。

 隣の席のさっちゃんが驚愕の声を上げる。


「え? ハコちゃん? ウソでしょ? ダンボールは?」

「うーん、ちょっと雨にぬれてカビが生えたり、必殺技撃ちすぎて焦げちゃったりしたから、今は修理中だよ?」

「そ、そうなんだ……。

 うん、ああ、ええっと、双子の妹とかお姉ちゃんとかいたりする?」

「うーん、双子じゃないけど、妹はいるかな?」

「あ、妹居るんだ……」


 ちらちらと私の方へ視線を向けるさっちゃん。

 仕方ない。フォローしておこう。


「違うからね?

 そっくりだからって、双子とか妹とかそういうんじゃないからね?」

「ああうん、改めてみてみると、似てるは似てるんだけど、全然違うというか。

 清楚系だんちゃんとギャルだんちゃんはやっぱり別人だったんだっていうか。

 むしろ、なんで今まで入れ替わってたんだっていうか」


 どうやらさっちゃんの中では、お姉ちゃんと同化した私(清楚系だんちゃん)分離した私(ギャルだんちゃん)は別人で、(ギャルだんちゃん)はしばらく学校サボっていて、その間、ハコちゃん(清楚系だんちゃん)が代わりに登校していたことになっているようだ。


 うん、誰だってそう考える。

 よし、この設定でいこう。


「ああうん、お父さんがちょっと怪しい実験しようとしてたから、家出してる間、身代わり頼んだの」

「あのお父さんだもんね? だんちゃんも大変ねー」


 適当に言ってしまったが、微妙に嘘は言ってない気がする。

 証拠に、さっちゃんも納得してくれた。

 お姉ちゃんも意図を察したのか、笑顔でうなずく。


「そうそう、でも、お父さん、あー、ええっと、だんちゃんのお父さんの実験が終わったから、もう大丈夫かなって」

「それでたんちゃんはギャルに戻って、ハコちゃんはダンボール脱いだのね?」

「うーん、私としてはもうちょっとあのままでもよかったんだけど、ほら、トリちゃんさんとの一件もあるし。この間のコスプレイベントみたいに、無理に変装するより、こっちの方がいいかなって……」


 おそらく適当に言っているのだろうが、お姉ちゃんの方も微妙に嘘は言っていない気がする。昨日、お姉ちゃんがお父さんに言いかけた「変装も必要」なのも、極道が叫んでいた「トリちゃんの殴り込み」のせいなのだから。


「まあ、私としては、変装じゃなくて服のイメージとかそういうのを変えてほしかったんだけど?」

「もー、だんちゃん、だから、ダンボールからメガネに変えたんじゃない」

「あのね、トリちゃんが狙ってるのって、おね……じゃない、ダンボールなしのハコちゃんなんだから、むしろメガネだけじゃだめでしょ?」


 一言付け加えると、抵抗するお姉ちゃん。

 さっちゃんがそこに入ってきた。


「うーん、でも、だんちゃん、ハコちゃんがだんちゃんみたいなカッコするのはちょーっと勿体ないと思うよ?」

「ほら、さっちゃんもこう言ってるし」

「あー、うん、ハコちゃん、私が言いたいのはそういう事じゃなくてね?」


 じろじろと、お姉ちゃんを見るさっちゃん。

 コスプレイベントを思い出したのか、後ずさりするお姉ちゃん。

 が、もちろん逃げられない。

 がっちりと、さっちゃんに手を掴まれた。


「よし、行こう」

「え? ドコに?」

「せっちゃんのトコ。ファッション研究会やってるから」



 ―――――☆



「うん、事情は分かったわ!

 このせっちゃんが!

 ハコちゃんをダンボールロボから、立派な普通の女の子にしてあげよう!」


 ファッション研究会部室。

 事情を聞いた途端、せっちゃんはそれはもう楽しそうにお姉ちゃんの手を引っ張って、あっという間にこの部室までお姉ちゃんを連行していた。ちなみに、せっちゃん以外にもしーちゃんやすーちゃんも一緒だ。今は授業中なのだが、気にしてはいけない。


「だって、ハコちゃんが清楚系だんちゃんだったんだよ?」

「その清楚系だんちゃんの服をいじれるんだよ!?」


 とのことだ。

 ああ、これはきっと夜まで拘束されるに違いない。


「よーし、じゃ、さっそく行ってみよっか!」

「大丈夫。まずはいつも見たいな清楚系からやってくから」

「そうそう、あーしらも手伝うし!」


 あっという間に、かわいそうなお姉ちゃんはせっちゃん達に部室の奥にある更衣室へと連れ込まれていった。奥から「え? え?」「ちょっと待ってさっちゃんあふんおふん」などという声が聞こえてきたが、それもすぐに歓声でかき消される。


「よしっ! ○○○○の新作ブラから!」

「きゃー、ハコちゃんかわいい!」

「女子力MAX!」


 更衣室の中で何やってるんだろう?

 と思いながらも、一人残された私は、目についたファッション誌を読み始める。

 そういえば、お姉ちゃんと入れ替わってから、こういうの読んでなかったな。

 懐かしさすら感じながら雑誌を読み進めていると、


「はーい! まずはノーマルな清楚系!」


 お嬢様ファッションなお姉ちゃんが出てきた。

 相変わらず腹立たしいくらいに似合っている。

 何かを期待した目で見つめてくるさっちゃんズ+お姉ちゃん。

 ごめん、反応の仕方が分かんない。

 そんな目で見つめ返すと、再び更衣室に連れ込まれていくお姉ちゃん。


「うう、頑張って耐えたのに、だんちゃんの反応が薄い……」

「負けないでハコちゃん!」

「やっぱいつもと一緒なのが仇になったか!?」

「ここはインパクト重視で!」


 何を耐えたんだろう?

 などとと思いながら、再びファッション誌に目を落とす。


「次は! 白ギャルハコちゃん!」


 が、すぐに制服をだらしなく着崩したお姉ちゃんが出てきた。

 どうやらさっき無反応だったのがいけなかったらしい。

 やたら期待した目で見つめてくるさっちゃんズ+お姉ちゃん。

 仕方ない。付き合ってやろう。


「35点」

「ええ!? なんで!? だんちゃんとおそろいだよ!?」

「そういうカッコすんなら陰キャオーラ消してから出直してこい」


 抗議の声を上げるお姉ちゃんを突き返す。

 更衣室の中に引っ込むさっちゃんズ+お姉ちゃん。


「ううう、ついに私もギャルデビューと思ったのに、だんちゃんが冷たい……」

「負けないでハコちゃん!」

「やっぱ被ったのはマズった?」

「次は陰キャオーラを生かそう!」


 ギャルデビューってなんだ?

 などとと思いながら、ファッション誌のページをめくる。


「次は! 地雷系ハコちゃん!」


 が、すぐに地雷系ファッションに身を包んだお姉ちゃんが出てきた。


「はい却下」


 秒判定である。

 引きこもりオタクのお姉ちゃんを地雷女に進化させるわけにはいかない。


「うううう、ちょっと恥ずかしかったのに……」

「負けないでハコちゃん!」

「ちょっと振り切りすぎちゃったかな?」

「よし、じゃあ、今度はテンプレな感じで!」


 ファッション誌そのままのお姉ちゃん。

 モデルよりきれいとかムカついたので60点。

 なんちゃらコレクションで出てきそうな服。

 常識考えろ30点。

 勇者◇◆◆◆◆◆のヒロインなお姉ちゃん。

 それもういいよマイナス10点。


 その後もお姉ちゃんのファッションショーは続く。

 ようやく終わったのは、昼休みのチャイムが鳴ってから。


「よし! これで行こう!」

「うん、清楚系でありながら微妙な陰キャオーラを生かしたコーデ!」

「ワンポイントのネックレスも完璧! だんちゃんもそう思うよね!?」

「ああ、うん、似合うにあう、80点」


 ついに決まったのか、盛り上がるさっちゃんズ。

 適当に相槌を打つ私。

 お姉ちゃんが不安そうに聞いてきた。


「ほんとう? だんちゃん、昼休みだからって、適当に言ってない?」

「言ってないって。わりと本心よ?」

「じゃあじゃあ、残りの20点は?」

「結局、一周回って普段と同じ制服に戻ったところかしらね?」



 ―――――☆



 後日。

 お姉ちゃんの周りに、授業そっちのけでせっちゃん達が集まっていた。


「ハコちゃん、次はこの辺なんてどうかな?」

「ちょっと振り切りすぎじゃない?」

「今度こそこっちで大丈夫だって!」


 すっかり人気者になったお姉ちゃん。

 邪魔しちゃ悪い。

 私はお姉ちゃんから離れられるようになったのをいいことに、教室を出てファッション同好会の部室へと向かう。この間はファッションショーに邪魔されたが、これでようやくゆっくり読める。

 そう思ったが、


〈あれ?〉


 唐突に、視界が切り替わった。

 目の前には、盛り上がるさっちゃんズが。


「うわー、ハコちゃんって、メガネ外したらホントだんちゃんそっくりだよね?」

「うーん、でも雰囲気とか全然違うくない?」

「やっぱりこっちの可能性も探ってみるべきだって!」


 どうやら、話しているうちに、メガネを取り上げられたらしい。

 何とかメガネを取り返そうとするお姉ちゃん。


「えーっと、取り敢えず、メガネないと落ち着かないから返してほしいな、とか?」

「えー、ハコちゃん、もうちょっとこっちで頑張ってみようよ?」

「そうそう、ちょっとだけ! ちょっとだけだから!」


 が、あっという間にせっちゃんとしーちゃんに押し切られそうになる。

 仕方ない、助けてやるか。

 とりあえず話題をそらして――などと考える前に、


「押忍! 不肖! 陽光第一学園! 壱年弐組! 極道秀男!

 姉御! ご報告があります!」


 極道が教室に入ってきたかと思うと、大声で話しかけてきた。

 どうやら今のお姉ちゃんを、ハコちゃんではなく清楚系だんちゃんと勘違いしているようだ。

 当たり前のように集まる視線の中、


「トリさんから! 姉御あてに! 果たし状を預かってまいりました!」


 極道は、実に余計なものを差し出してきた。



次回予告!

 トリちゃんから果たし状を突きつけられたれんちゃんは、トリちゃんの突撃を受ける。感動したれんちゃんは風紀委員一同でお祓いをしようとするが、さっちゃんズがそこへストップをかける!

※ 次回は、1/27(月)投稿予定です。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ