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だん@ドウブツ園

前回のあらすじ!

 ノロちゃんの怪しい儀式からインスピレーションを得たお父さんは、れんちゃんのダンボールロボをバージョンアップさせる。新機能を得たれんちゃんは、ライバル校へ突撃したひでちゃんを助けるべく、飛び立った! しかし、ひでちゃんはライバル校を襲撃したわけではなく、手当てをしてもらった女子生徒を探しているだけだった。ひでちゃんの女子生徒捜索を手伝うれんちゃん。職員室に向かい、先生に女子生徒の居場所を教えてもらう。ひでちゃんはその女子生徒を追いかけ、警察に逮捕されるのだった!


〈ねえ、本当に行くの?〉

(もちろん! だんちゃんの友達が警察に捕まったんだから、確かめないと!)


 早朝。

 普段、学校へ登校する時間よりずっと早い時間。

 私ことだんちゃんは、出かけようとするお姉ちゃんに頭の中から声をかけた。


〈別に、友達ってわけじゃないんだけど?〉

(まあまあ。ひでちゃんがどうなったのか、先生に聞きに行くだけだから)


 そう、あろうことかお姉ちゃんは、極道小鳥遊さんストーカ事件のきっかけになったジャージ先生に話を聞きに行こうとしているのである。


(うーん、きっかけはひでちゃんとトリちゃんを引き合わせる事件を起こした私たちな気がするけど……)

〈極道がストーカになったのは! ジャージ先生が小鳥遊さんの転校先を教えて!

「青春ねー」とか言って煽ったからでしょ!〉

(まあまあ。煽られたひでちゃんとトリちゃんをちょっと見に行くだけだから)


 つまりは、お姉ちゃんも「青春ねー」的感覚の興味の持ち主なのだろう。

 きっと、私と違って進学校に通っているお姉ちゃんは、勉強ばかりで青い春を逃したに違いない。自分に縁がないから、他人の恋愛など気にするんだ。


(だんちゃん? 何か今ものすごく失礼なこと考えなかった?)

〈別に? それより行くならさっさと行けば?〉


 別に行きたくはないが、言っても無駄だと悟った私は、不動武烈学園――通称ドウブツ園へとお姉ちゃんをせかした。



 ―――――☆



(うーん、誰もいないね?)

〈それはそうでしょ? まだ授業始まる1時間前よ〉

(私の学校じゃ、部活とか勉強とかで、早く来てた子もいたんだけど?)


 これだから進学校のお嬢様は困る。

 底辺校では授業が始まって1時間後に来るのが普通だ。むしろ、授業など出ない生徒も多い。私に憑りついて結構な時間が経つのだから、さっさと底辺校の常識にも慣れて欲しいものである。


「失礼しまーす」


 わざわざ挨拶して職員室に入るお姉ちゃん。

 ありえない。

 普通の底辺校の生徒は、先生に挨拶などしないのだ。

 先生たちの方も、何事かと驚愕の表情を向けている。

 が、お姉ちゃんは気にした様子もなく、ジャージ先生に声をかけた。


「ええっと、転校した小鳥遊さんのクラスの先生ですか?」

「ええ、そうだけど……あなたは?」

「あ、この間、ひでちゃん――じゃない、極道くんと一緒に尋ねた、七瀬単ななせひとえです」

「ええっ!? あのギャルっぽい子!? な、ナナナな、なんで!?」


 ジャージ先生は精神錯乱を起こしたようだ。

 そういえば、前に極道と一緒に訪ねたときは、私とお姉ちゃんはお父さんの作った怪しげな試作品で分離していた。つまり、この先生は普段通りのギャルメイクの私と、ダンボールロボのお姉ちゃんしか知らないことになる。

 なるほど、これは錯乱する。

 底辺高ではギャルとダンボールロボはありふれているが、清楚は幻の存在。

 人はありえない未知の存在に遭遇すると、ショックで錯乱するものなのだ。


「そろそろ春なので、服も変えてみようと思いまして。

 それより、その小鳥遊さんの事なんですが?」

「え、ええっとと、そ、そう、そうよね? 気になるわよね?」


 が、お姉ちゃんはそんな先生の精神錯乱を適当な言い訳で流して問いかける。

 先生も、さすが底辺校の教師というべきか、動揺を抑え、話を聞かせてくれた。


「あー、その、極道くん、あの後、教えた住所に直接向かったらしいんだけど、ほら、ヨウチ、じゃなかった、陽光第一学園の制服のまま向かったでしょう?

 小鳥遊さんのご両親が、不良校がここまで追ってきたって、自分の娘のことを棚に上げて警察に通報したのよ。

 警察も底辺校の不良さんが相手だから、ちょっと長めに拘束されてるみたいで。

 今日、私の方で事情を話しに行くつもりだったのよ」


 我が校の生徒が警察にちょっと長めに拘束される程の底辺校とは知らなかった。

 まったく、誇らしい限りである。


「じゃあ、ご一緒していいですか?」

「ええもちろん――あ、でも、この間、極道くんが叫んでたけど、あなたたち風紀委員よね? 代わりってわけじゃないけど、ちょっとお願いしてもいいかしら?」



 ―――――☆



 数分後。

 お姉ちゃんは、なぜかドウブツ園の制服を着せられ、卒業式の準備の手伝いをやらされていた。

 なんでも、誰もまともに作業をやらないので、先生が極道を迎えに行っている間、さぼっている人がいたら代わりに声をかけて欲しいとのことだ。

 まあ、そうだろうな。

 底辺校の生徒がまともに卒業式の準備なんてできるはずがない。


(私としては、卒業式の準備を午前中にやる方が信じられないんだけど?)

〈授業の代わりにやろうとしたんじゃない?

 ほら、放課後は皆さっさと帰っちゃうし。授業だって誰も聞いてないし〉

(おお、それっぽい! 流石だんちゃん! 警察でも有名な底辺高の生徒の鏡!)

〈……それより、私としては、他校の生徒に頼む方が信じられないんだけど?〉

(それはきっと、だんちゃんが風紀委員ってことがバレちゃったからだよ)


 なるほど、つまり極道のあの大声が原因か。

 もう極道のことなどほっといていいんじゃないかという気がしてきた。


(まあまあ、他の学校の様子なんてめったに見れないわけだし?

 折角だから、見学のついでにいろいろ見ていこうよ?)


 文句ばかりの私と違い、お姉ちゃんは本当に楽しそうに歩く。

 まるで学園祭に来たかのように、廊下をきょろきょろと見渡している。


 廊下で寝転がる生徒。

 ゲーム機で遊んでいる生徒。

 あちこちに落書きがあり、何枚か窓も割れている。

 流石ドウブツ園。我らがヨウチ園と大した違いはない。


〈やっぱり、卒業式の準備っていう雰囲気じゃないわね?〉

(うーん、とりあえず、ジャージ先生のクラスに行ってみよう。

 先生は「勝算あり!」って顔してたし、何かあるかもしれないし?)


 1年牛組と書かれた教室に入る。

 教室では、「卒業式」と書かれた看板が中央に放置され、飾りや塗料が床に散らばり、生徒たちは看板――ではなく、看板を梱包していたであろうダンボールに色を塗ったり、野球のバットや喧嘩で使う獲物に色を塗ったりして遊んでいた。

 流石ドウブツ園。我らがヨウチ園と同じような光景だ。

 お姉ちゃんもヨウチ園で慣れたのか、平然と近くにいたダンボールに色を塗っている男子生徒に声をかける。


「あの、すみません?」

「あ? なん――――!?」


 可愛そうなのは声をかけられた男子生徒である。

 チンピラらしく声を上げたはいいが、すぐに固まった。

 が、お姉ちゃんは容赦なく続ける。


「先生に卒業式の準備手伝って、言われたんですけど、何やったらいいですか?」

「え? あ、いや……」


 固まったまま、挙動不審に陥る生徒。

 可愛らしく、首をかしげるお姉ちゃん。


「ええっ!? 清楚!? お嬢様!? な、ナナナ、なななななんで!?」


 発狂する生徒。

 どうやらドウブツ園に信じがたい珍獣が入ってきたのがショックだったようだ。

 まあ、誰だって動物園にツチノコが飼育されていたら驚くだろう。


「は!?」

「な、なんでこんなところに!?」

「お嬢様が!?」

「お、お化粧しなきゃ!」


 あっという間に広がる混乱。

 しかし、そこはお姉ちゃんである。


「ええっと、先生に卒業式の準備手伝って、言われたんですけど?」


 空気をまったく読まずに、次々と話しかけまくる。

 そういえば、我がヨウチ園でも、初めてお姉ちゃんin私を見たときは「おいどうすんだ」的な反応になっていた気がする。

 流石ドウブツ園。我らがヨウチ園と同じような反応だ。


「は、はい!? ええっと、確か、看板に色塗って……!」


 かわいそうに、話しかけられた方の不良は混乱のまま真面目に作業を始めた。


「おい待て、姫に色なんか塗らせるな!」

「お、おう、ええっと!? おい、女子、何とかしろ!」

「いやそっちこそ!」

「と、とにかく卒業式の準備を――」


 広がり続ける混乱の輪。


 気が付けば、教室みんなで真面目に作業を始めていた。


 それを満足そうに眺めると、そっと教室を出て行くお姉ちゃん。


〈うーん、我に返った時が怖いわね〉

(大丈夫。ちょっと混乱の状態異常を付与する魔法をかけただけだから)


 そういえば、お姉ちゃんはゲームのアバターの魔法を使えるんだっけ。

 清楚系でお嬢様が混乱させてくるとは、なんとも嫌なゲームである。


(よし、この調子でいこう)


 が、お姉ちゃんは次々と生徒に話しかけ、混乱を広げていく。

 そして、先生が返ってくる頃には、


「な、なにこれ?」


 いかにも不良校な学園が漂白され、美しい学校の姿に!

 帰ってきたジャージ先生も驚愕している!


(うん、お姉ちゃん頑張っちゃった!)

〈ちょっと頑張りすぎね?〉


 壁の落書きやら割れたガラスやらがきれいさっぱり修復され、卒業式の飾り付けが綺麗に完成し、1年牛組の牛も横棒二つとノが取れて1年1組に戻っていては、それは驚くだろう。


「押忍! さすが姉御!

 陽光第一学園! 壱年弐組! 極道秀男! 感動しました!」


 どうやら極道も無事解放されたらしい。

 大声で感動している!

 しかし、その大声がよくなかった!


「ああ? なんでこんなところにヨウチ園が!?」

「はっ! 襲撃か!?」

「ぶっ○せーーー!」


 一斉に自分を取り戻し、極道に襲い掛かる不良校の生徒たち!


(あ、まず!)


 思わず攻撃魔法を放とうとするお姉ちゃん。

 しかし、その前に。


「おら待てやお前らぁ!」


 極道の横にいた、武装したギャル生徒が大声で叫んだ!


「げ、小鳥遊の姉御!? なんでこんなところに!?」

「て、転校したんじゃ!?」


 どうやら小鳥遊さんは元不良のまとめ役だったようだ。

 極道を手当てしたという話と、ジャージ先生から優しい娘といわれていたから、てっきりお姉ちゃんと同じ清楚系でお嬢様系だと思っていたのだが、どうやら違ったらしい。他の生徒を別の意味で「可愛がって」いたようだ。


「お前ら! こんな綺麗に不良を忘れやがって! 根性叩きなおしてやる!」

「押忍! 陽光第一学園! 壱年弐組! 極道秀男! お供します!」


 なぜか極道も一緒になって暴れ始める。

 拳やら武器やらが飛び交い、血しぶきが飛び、汚れていく学校。

 所詮ドウブツ園はドウブツ園だった。


「うんうん、これぞ正しい我が校の景色ね」


 それを見てうなずいているジャージ先生。


「ええっと、喧嘩はダメだよ?」


 しかし、そこに空気を読めないお姉ちゃんが突っ込む。


「は!? な、なんでこんなところに!? 清楚系お嬢様が!?」


 ショックで固まる小鳥遊さん。


〈よし、この隙に帰ろう!〉

(え? お姉ちゃん、もうちょっとみんなと遊びたいんだけど……)

〈いいから! ほら! 極道連れて帰る!〉


 こんな所に長居は無用だ。

 私はお姉ちゃんをせかすと、混乱に包まれるドウブツ園から脱走した!



 ―――――☆



 後日。

 昼休み、いつものヨウチ園と揶揄される底辺校。

 お弁当を食べようとするお姉ちゃんin私に、さっちゃんが話しかけてきた。


「だんちゃん、私、今日、購買でパンだから、ちょっと待ってて?」

「いいよー」

「あ、それと知ってる?」

「知らなーい」

「隣のドウブツ園にさ、すごい清楚系お嬢様が入ったんだって。

 で、不良束ねてた小鳥遊って人が、そのお嬢様のこと、探してるってさ。

 なにか、『極道を取られた!』『決着つけてやる!』とか叫んでるらしいよ?

 うちの学校じゃ、今のだんちゃんみたいなお嬢様がいたら告白罰ゲームで遊んでるトコだけど、向こうの学校はずいぶん毛色が違うみたいね?」


 いろいろ心当たりがあるのか、笑ってごまかすお姉ちゃん。

 私はそんなお姉ちゃんに、取り敢えず脳内ボイスでエールを送っておいた。


次回予告!

 ドウブツ園のトリちゃんに目をつけられたれんちゃんは、変装をすべくオタ研のコスプレ衣装を漁る。それを見つけたさっちゃんは、れんちゃんをイベントへと連行する! 果たして、れんちゃんは無事にイベントを乗り切ることができるのか!

※ 次回は、1/24(金)投稿予定です。


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