20.王子様と勇者に救われた少女
19話と20話は、ちょっぴり長めになっています。久しぶりの更新でしたので(苦笑)
そしてこのお話が20話まで続いていることに、自分で驚いています。
早々に完結させる予定がどこにいった(苦笑)
しばらくは物語が続きそうです。
引き続きお付き合い頂けると嬉しいです。
ストレートの漆黒の髪に青色の瞳をした美少女。
彼女は、己のことをリリー・ローズと名乗りました。
この地を治める男爵家の御令嬢との事です。
宿へ向かう道すがら、レイン様の腕に自分の腕を絡め、自己紹介をされています。
あ、私たちの事は、完璧にスルーしている彼女です。
ちなみにアリア様はずっと怒っておられますよ。
それはそうですよね・・・
恋敵が出現したのです。
私は早々にライバルから除外して頂いたので良かったのですが。
リリー嬢は明らかにレイン様を狙っておりますし。
しかし・・・リリー嬢は肝の据わったお方ですね・・・
レイン様に覚えられていないのに、押しが強い!
自らグイグイ行って自己アピールが半端ないです。
レイン様は滅茶苦茶戸惑っていますが。
あの方、自分からはグイグイ行く癖に、自分がグイグイ言い寄って来られるのは苦手なのですね。
うん、頑張ってください。
私には関係ありませんから。
レイン様、こっち見ないでくださいよ。
そんなこんなで、レイン様お勧めの宿に到着しました。
部屋を4室借りて、各々自分の部屋へ向かいます。
・・・が!
さすがにここで帰るだろうと思われていたリリー嬢・・・
なんとレイン様の部屋の前まで着いてきました。
え・・・
この子、どこまで着いてくるんですか・・・?
「えっと、僕たちは部屋に入るから、君はもうここで・・・」
「私、もう勇者様と離れたくありません」
「え・・・?」
「私も一緒のお部屋へ参ります」
「・・・君は何を言っているの・・??」
レイン様、目に見えてドン引きされていますねー
いえ、恋人でもなんでもない男性のお部屋に着いて行くというのは大変非常識な事ですからね。
彼が引いてしまうのも当たり前です。
ちなみに私たちの部屋割は、
レイン様と近衛騎士のどなたかお2人がついて3名で1室
残りの近衛騎士3名が1室
私とシエルが1室
アリア嬢が1室です。
毎回こんな感じの部屋割りで、レイン様とは別室の近衛騎士の3名も必ずレイン様のお隣のお部屋をとられています。
「まあ、勇者様お1人のお部屋ではないのですか?!」
リリー嬢よ、何故そこで驚く?
1人の部屋なら入れてもらえると思っていたのでしょうか?
この発言に噛みついたのは、アリア嬢ーーーではありませんでした。
「娘!あまりにも慣れ慣れしいぞ!我々はレイン様の護衛として同室にして頂いているのだ!それを邪魔するか!」
ここでキレたのはミカエルさんでした。
だけれどーーー・・・
うん、ミカエルさん、やめて。
話が更にややこしくなりますから。
ミカエルさんがレイン様大好きなのは知っていますから、落ち着いて。
「きゃあ!大きな声を出さないで!勇者様、この方怖い!」
そう言って、リリー嬢はレイン様から離れようとしません。
ミカエルさんもアリア嬢も鬼の形相です。
お二人のことが怖いとリリー嬢は言いますが・・・
私にはお二人とも、とてもチャーミングに見えるのですがね。
いつまでも口喧嘩をされているお2人をしばらく眺めていましたが・・・
私ここに居なくてもいいんじゃない・・・?と思い、私はシエルは連れて自分たちの部屋に入ることにしました。
こちらに火の粉が飛んできては堪りません。
私は自分に割り当てられた部屋の鍵を開け室内に入ると、荷物を下ろし、入ってきた扉の方を振り返りました。
「シエル、休憩にしましょうか。お茶とお菓子は何が食べたいですか?」
「我は・・「僕は暖かい紅茶とフィナンシェが食べたいな」
シエルの言葉に被せ気味に発言したのは、渦中の人物の筈のレイン様でした。
「・・・レイン様、何故貴方が私たちの部屋に・・・?」
「君たちが部屋に入っていくのを見かけてね。僕もなんだか疲れてしまって、お邪魔させて頂いたんだ」
「はあ・・・」
自分の部屋のようにスタスタと部屋を横切り、テーブルと共に部屋に備えられている椅子に腰かけるレイン様。
私が遠い目をしながら、そんなレイン様を見ていると、シエルがススッと近寄ってきました。
「アヤツは本当に疲れているようだから、菓子を用意してやろう。それに我もフィナンシェが大好きだ!」
シエルがニッコリ微笑みながら、天使の発言をします。
あああ可愛い!
なんていい子!
シエルは本物の天使ですか?!(ドラゴンですが!)
「わかりました、準備しましょう」
「ありがとう、メル・・・トさん」
相変わらずぎこちない呼び方ですね。
私は苦笑を浮かべると、お茶とお菓子の準備を始めました。
レイン様お勧めの宿だけあって、室内には簡易キッチンがついています。
そこでお湯を沸かし、荷物の中から茶葉とお菓子をとり出していると。
コンコンと扉を叩く音が聞こえました。
レイン様がビクッ!と体を震わせ、扉を凝視しています・・・
リリー嬢だと思っているのでしょうか・・・
「私よ、メルト。入ってもいいかしら?」
その声に安心して扉を開けると、そこに立っていたのはアリア嬢でした。
「アリア様、いらっしゃいませ。ちょうどお茶にしようとしていたんですよ」
「ええ、お邪魔するわね」
アリア嬢がスルリと部屋に入ってきます。
その時にチラリと外の様子を伺うと・・・
廊下では、まだミカエルさんとリリー嬢が言い争っていました・・・
うわあ、怖い。
早々にあの場を離れていて良かった・・・と思ってしまった私でした。
室内では、アリア嬢とレイン様が会話を交わしています。
「ふふ、やっぱりここに逃げてきていたのね、レイン様」
「やあ、アリア。いらっしゃい。君もお茶をしに?」
「そうね、とても騒々しくて・・・私も疲れてしまったわ」
「だよね・・・僕もだよ」
私は紅茶を人数分用意してトレーで運びます。
シエルはフィナンシェを入れた器を運んでくれました。
本当に良い子ですね!
「皆さん、お茶にしましょう」
「ありがとう、メルト。紅茶とっても良い香りね」
「僕、このフィナンシェってお菓子大好きだよ」
「むっ!この菓子が一番好きなのは我だぞ!」
「私は、マドレーヌやチョコレート菓子も好きだわ」
「おお!それも好きだ!」
私たちは皆で楽しく、お菓子談議に花を咲かせました。
廊下からは、時折ミカエルさんの怒声と、リリー嬢の金切声が聞こえます。
近衛騎士ーズは頑張ってリリー様を足止めし、レイン様の心の平穏をお守りしているようです・・・
このまま頑張ってください・・・
数時間後、やっと宿を出て行かれたリリー嬢。
そこに残ったのは、グッタリした近衛騎士メンバーと怒り狂うミカエルさんでした。
皆さん・・・お疲れ様です・・・
今日はもうこれ以上何もおこらないだろう・・・
その時の私は、そう思っていました。
しかしーーーーー
波乱な展開はまだ終わっていなかったのです。
その日の深夜ーーーー・・・
私とシエルは、気持ちよくフワフワのお布団で眠っていました。
さすがレイン様お勧めの宿だけあって、ご飯も美味しかったですし、お布団もフカフカでとても気持ちいいです。
フワフワのお布団で熟睡している私たち。
けれど、突然・・・
「きゃあああああああ!!!!」
男性の甲高い悲鳴で、飛び起こされました。
この声は・・・レイン様?!
何事ですか?!!
シエルも眠い目を擦りながら、起きてきます。
私たちは一緒にレイン様のお部屋へ向かうことにしました。
「レイン様?!どうされましたか?!!」
ガチャガチャ!とレイン様のお部屋のドアノブを回しますが、鍵がかかっているのか開きません。
私がどうするべきか迷っていると・・・
「メル、退いていろ!我が開ける!」
そう言うとシエルは空中に飛び上がり、勢いよくドアを蹴破ります。
お・・・おお・・・
シエルが・・・シエルがカッコいい!
凄いですよ、シエル!
さすがシエル!
出来る子です!
ドアが吹っ飛んでいきましたが、緊急事態なので気にしていられません。
きっとレイン様が弁償して下さるでしょうから!
私が瞳をキラキラさせシエルのことを見ていると、アリア嬢が駆けつけてきました。
彼女は簡易なワンピースを着ています。
寝間着のまま出てこれなかったようで、悲鳴が聞こえてから慌てて着替えて駆け付けたようです。
女の子ですねー
確かに普通の女性でしたら、服装を気にして着替えるでしょう。
私、寝間着のままですが。
おっと、そんなことを気にしている場合ではありませんでしたね。
レイン様はー・・・
壊れた入口から室内に入る私たち。
そこで私たちが見たものは・・・
床に倒れふすラファエルさんとウリエルさんの姿でした。
(あ、この方たちが本日のレイン様部屋のご担当だったようです)
それにベッドの上で震えているレイン様もいます。
レイン様の無事なお姿にホッとしましたが・・・
そこには異質な者が存在しました。
ラファエルさんの身体を踏みつけながら、部屋の中心に佇み、レイン様の方に顔を向けている人影・・・
そこに立っていたのは、ざんばらの黒髪に真っ白い着物のような薄着をまとった、女性・・・
手には刀を握り締めています。
・・・なんていうホラーですか、これ?
某有名ホラー映画の井戸から這い出してテレビから出てくる女性のようではありませんか?
黒髪が顔にかかり、幽鬼のような女の顔は見えにくいのですが・・・
なんとなーく、姿形で昼間の少女のような気がします・・・
その女性はキロりと瞳だけをこちらに向けると、突然私達に向かって飛びかかってきました。
「キャア!!」
アリア嬢が叫び声をあげます。
そんなアリア嬢を庇うように前に出て、私は振り下ろされる刀を手と手の間に挟み受け止めました。
ーーー・・・そう、真剣白刃取りです。
いつかはやってみたいと思う男の子の憧れです!
私、今は女ですが!
上手くいってよかったー!
私はそのまま流れるような動作で刀を引き、床に当ててその刃を折ります。
そして立て続けに、倒れてくる相手の腹に重い一撃を叩き込みました。
「うっ・・・」と短い呻き声をあげ、幽鬼のような少女はそのまま床に倒れ込み気を失いました。
私は息を吐き出すと、ペタンと床に座り込みます。
人相手に暴力をふるったのは初めてです。
魔獣などは相手にしたことがあるのですが。
人を殴るのが恐かったのか、刀が怖かったのか、私の手はプルプルと震えています。
「バカメル!無茶をするな、我がいるというのに!」
「シエル・・・ごめんなさい。咄嗟に体が動いてしまって・・・」
シエルが床に座り込む私に駆けつけ、心配気に私の震える手を握ってくれます。
弱々しげに笑っていると、アリア嬢も涙目で私に抱き着いてきました。
「メルト、大丈夫?!怪我はない?!私を庇って・・・もう!貴女って人は!」
怒っているんだか、心配しているんだかわかりませんね。
でも涙目で怒ってくれている彼女は本当に優しい女性です。
「私は大丈夫ですが・・・レイン様と近衛騎士の方々は・・・」
私は改めて、ベッドの上に座り込むレイン様を見ました。
レイン様はベッドの上に体育座りをしながら「女の子怖い女の子怖い」と虚空に呟きつつ、目の光を失っておられます。
これは・・・相当なトラウマを植え付けられたようです・・・
新キャラのリリー嬢が大暴走しております。
そして夏更新なのでホラーテイストを練り込んでみました。
結果。
あまり怖くならなかった・・・
また続きを書いていきますー。




