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ややホラーテイスト?
今日のサクランボ狩りは、空に見られていたらしい。夜になって気が付いたのだけれど、携帯に何通かのメールが届いていた。
>近づくのは危険だと言ったのに何をしてるの⁉︎
>何かトラブってたみたいだけど大丈夫?
>桜の木には、何かいたの?
>でも、おかげで貴方の詳細を少し思い出した。
貴方はそこで何かに会って、その夜、引き寄せられるようにそこへ戻るの。そして翌朝、全身の血を抜かれて発見される。
>ゲーム通りなら、クリスマス辺りのはずなんだけど。いい? 念のため、今夜は絶対に1人にならないで。外出も厳禁よ!!
死に様は血抜きか。
それを知って、なんとなく寒気がする。
やっぱり妖怪は吸血鬼か。桜に潜む吸血鬼。雅だけど、当事者はやっぱり嫌だ。
とりあえず、心配させてしまったので、返事を打つ。
>心配かけてごめん。何かいたわけじゃないけど、近くにあった慰霊碑の下に、札が貼られた怪しい扉があったよ。
>扉破損で先生に報告したけど、先生たちはその慰霊碑のことを知らなかった様子。
>開校前からあったとの噂だけど、なんだか違うみたい。正体不明なのも懸念材料だけど、にんにくと十字架常備しておくよ!
「送信、と」
さて。平気そうな返信はしたけれど。
今夜に限って両親がいない。こんなことがあるとは思わなかったから、今朝の時点で1人で留守番すると言ってしまったのだ。知っていたら、たとえ結婚記念日(満20周年の特別なお祝い)といえども、たとえお邪魔虫と言われても、『想い出のホテル』とやらについて行ってやったのに。
それに、こんなに怖くなるのなら、夕方、リクちゃんの家でご飯を食べさせて貰った時に、お泊まりのお誘いを断らなければよかった。
変なところで強がりな自分が恨めしい。もっとも、ご飯を食べた時はまだ明るく、慰霊碑も偽物という期待があったからだけど。しかし、自分の最後を知ってしまった今は、そんな強がりも最低防御の旅人の服に過ぎない。いや、村人の服、だっただろうか。
ピロリン、と、携帯が鳴り、私は思わず飛び上がった。
>扉破損って、何かの封印を解いたってこと⁉︎ それってすごく心配なんだけど!
空、返信が早い!
>素人知恵だけど、あれからいろいろ集めたからそっちに行っていい? 今から行くから!
これって、お泊りに来てくれるってこと?
嬉しいけど、なんだか返信、早すぎない?
それに来るって行っても、家を教えたことなどない。
私はふと、よくある怪談を思い出した。怪奇現象があって友達を呼び出すのだけど、インターホンが鳴って開けたらお化けに襲われるという話。
ーーーめちゃくちゃ怖い!!
>ごめん。来なくていい。大丈夫。ありがとう。
今度は強がりじゃない。恐怖からだ。
とてもじゃないけど、怯えながら本物か否か分からないものを待つ勇気はない。夜でも平気でネットの怖い話を読んでいたけど、同じ家の中に家族がいたから出来たことかもしれない。
私は結構怖がりだったんだと気が付いた。気づいたところで今はどうにも出来ないのだが。
うー、今日は電気つけたまま寝てやる!
お風呂も明日!!
キッチンから魔除けとして主要なものをかき集め、布団に潜り込んだところで携帯の着信音が鳴り、今度は布団ごと飛び上がった。
「リ、リクちゃんだ…」
安心する反面、驚かされた怒りが満ちる。
「もしもし?」
たがら、不機嫌な声が出てしまう。
『1人で大丈夫か?』
「こ、子供じゃないもん。大丈夫に決まってるじゃない」
つい言ってしまったけれど、声の震えは抑えられなかった。強がりがばれたと思ったところで、素直な言葉が後に続く。
「ーーーって言いたいところだけど! もう今めちゃくちゃ怖い!!」
『やっぱり、うちに来る?』
「怖くて家から出られない」
『迎えに行くよ』
「玄関開けるのも怖い」
『ーーー鍵、あるから。部屋まで行けば、大丈夫だろ?』
「大丈夫…、と思う」
変なものばかり読んでいるからだと、お小言があるかと思ったのに。分かったと、優しげに答えて電話は切れた。
ーーーもしかして、偽物?
再度の恐怖が私を襲う。
リクちゃんのふりをした何かに連れ出されて、いつの間にか学校で、血抜き作業が始まってしまうのか?
ーーー怖すぎる!!
再度布団をかぶると、インターホンが鳴った。今電話が切れたばかりなのに、やっぱり早すぎない? こんなに怖いなら、断ればよかった? 来たのはどっちだ? リクちゃんのふりをした妖怪か、空のふりをした妖怪か。どっちにしても妖怪だ。
かちゃん、かちゃんと、二つ並んだ鍵が開けられる。
そして、ガン、と、大きな音がした。
何? 鍵を開けたってことはリクちゃん?
怪談では、お化けは鍵を開けない。扉は外界との隔たりで、一種の結界のようなものらしい。荒っぽいものは窓を割って入って来たりもするけれど、大抵は、こちらが開けるまで入って来ないことが多い。
ーーーでも、最後の音は?
まさか、リクちゃんは本物で、鉢合わせた空モドキに襲われたとか? そうだ。今日はリクちゃんも一緒にいたんじゃないか。リクちゃんも襲われる可能性を、なぜ考えなかったんだろう!
私は思わず立ち上がった。
布団を被ったまま、にんにくと十字架と料理酒と粗塩を抱えて玄関まで走った。
リクちゃんごめんね。私も戦うよ!
「ああ、アキ、ごめん。ドアガードの存在を忘れてた」
扉の隙間から困ったようにこちらを見ているのは、多分、本物のリクちゃんだろう。




