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生徒会室は図書室のある棟の2階にある。リクちゃんと2人、ノックをして扉を開けると、教室に来た2人を含め、7人の男女が待ち構えていた。
会長、副会長、会計二人に、書記が二人。それからーーー?
「陸也くん‼︎」
甘い声で叫んだのは、先日遭遇した偽ヒロインだった。ああ、そうか。彼女の仕業だったのか。
「陸也君、もう大丈夫だからね。すぐに解放して貰えるから、安心して?」
走り寄ってきた彼女に心底嫌そうな顔をしながら、リクちゃんは彼女は無視して、生徒会長に向き合った。
「どうも。2年3組の東陸也です。今日は彼女への誤解があったようで、付き添わせて頂きました」
「君は、彼氏君?」
「まあ、そう思って頂いても結構です」
「え、『お母さ…」
思わず否定しようとした口を塞がれる。と同時に、彼がちらりと視線を送った先を見ると、偽ヒロインがショックを受けたように固まっていた。
ああ、そうか。
彼女がヒロインだとすると、リクちゃんにアプローチしていたと考えられる。でも、彼女は偽ヒロインだから、リクちゃんのお好みには合わない。だから、私が彼女であると誤解させれば諦めるのではないかという作戦か。
なるほど。甘いな、リクちゃん‼︎ 偽ヒロインというものは、ヒロイン補正を信じて突っ走るから強いんだ。
しかし、生徒会を巻き込んだところで、なんだか本当にネット小説のようになってきた。
自演自作でイジメの冤罪を仕立ててくるのだろうか。
私、上手く回避できるかな。
リクちゃんがあちら側に行ってしまったら即負けだ。私にはまだ、独り立ちの力はないから困ったな。
「ーーーそういうことで、僕は彼女に私物化されているわけでも、イジメられているわけでもないと、分かっていただけましたか?」
私が心の準備をしているうちに、リクちゃんは簡単に誤解を解いてしまったようだ。
生徒会室のトゲトゲとしていた空気が消え去り、生徒会長は私に頭を下げた。
「こちらの勝手な解釈で申し訳なかった」
「ああ、はい。どうも…」
私もつられて頭を下げる。懸念していた、偽ヒロインがごねて私が糾弾されるイベントは起こらなかったようで、やや淋しい気もしないでもないが、ホッとする。
「では、僕たちはこれで失礼しますが」
「ああ。今回のことはすまなかった。君たちも何かあったら言ってくれ。今度は先走らないように対処する」
「はい。その時はお願いします」
二人で頭を下げて退出しようとしたその時。
「あ、待って。陸也君!」
偽ヒロインが呼び止めると、リクちゃんはあからさまに嫌そうな顔をした。
「名前で呼ぶの、やめて欲しいって何度も言ってますよね?」
「あ、あの、でも…」
「『でも』じゃないです。人が嫌がっているというのに、それこそイジメじゃないですか?」
「ごめんなさい。でも…」
「それに!」
声を荒げながらも、私をそっと扉の外に押し出すと、リクちゃんは偽ヒロインを突き刺すような視線で睨みつけた。
「彼女の冤罪を広めるのもやめて下さい。僕は彼女を大切に思ってる。親に言われたからとか、断れないからとか、そんなんじゃない。僕がそうしたいからだ。
何も知らないくせに勝手に決めつけられるのは迷惑だ。今後、一切、僕に構うな!」
ピシャリと扉を閉めて、リクちゃんは息を深く吐き出した。
「なんか、溜まってたんだね?」
リクちゃんがあんなに声を荒げて人を糾弾するなんて、初めてだ。そっと肩に触れると、彼は疲れたように顔を上げた。
「あの女、初対面からいきなり名前呼びで馴れ馴れしくて、気持ち悪かったんだ。あ、いや、初対面から気持ち悪いって失礼な話だけどさ」
「ううん。確かにそうだと私も思うよ」
「見かければ寄ってくるし、知りもしないアキのこといろいろ言うし、うんざりしてた」
「うん。かばってくれてありがとう」
心から御礼を言えば、リクちゃんはやっと表情を緩めた。
「帰ろうか」
「うん」
私も笑みでそれに応える。久しぶりに、彼が弱っているところを見た気がする。
いや、決して弱っていることを喜んでいる訳ではない。断じてない。
そして、リクちゃんがはっきり拒絶したため、もう二度と偽ヒロインに関わることはなかった。と綴りたいところだけれど、同学年であることに代わりはない。
私は再び彼女に対面してしまうのだった。




