3
そういうばネット恋愛小説でも定番の、生徒会というものがこの学校にもある。選挙は9月で、でも、立候補者はほとんどいないので、信任、不信任のアンケートが取られるくらいのものだ。
今の生徒会メンバーは全て二年連続立候補だそうで、新しいイベントを作ったり、随分と活躍をしたらしい。同じ高校生なのに、人種が違うすごい人たちで、私には接点など何もないと思っていたのだけれど、何故だか関わることになってしまった。
「お前が杉崎亜樹か」
2年生の教室に3年生が入って来るのはとても目立つので、私はクラス中に注目をされてしまった。
「はい、そうですが」
呼ばれる心当たりもなく、それでも一応返事はして立ち上がった。丁度キリカがいなかったので、誰だか確認することが出来なかったけれど。
「お前がある生徒を私物化して、好きに扱っていると聞いた。俺は生徒会長として、校内のイジメは見逃せない」
「はあ…」
セリフから、生徒会長であることは分かった。
それは分かったが、生徒を私物化とか、イジメとか、全く心当たりがない。私が気づいていないだけで、誰か被害を被っているのだろうか。
「ーーー本人で間違いないんだよな?」
「同姓同名がいないのなら、多分…?」
うっかり口を開けたまま考えていたせいか、生徒会長だという彼は、やや自信をなくしたようだ。
「とぼけているんだろう」
後ろに控えていたもう1人の3年生が、冷たい視線をこちらに向ける。
「詳しく話を聞きたい。今日の帰りに生徒会室まで来てもらおうか」
「はあ…、分かりました」
逃げないようにと言い残して、彼ら二人は去って行った。
「何かあったの?」
お手洗いから帰ってきたキリカが、先ほどすれ違った二人を気にしながら聞いてきた。
「うん。なんだか私がイジメをしているとかで、放課後、生徒会室に来いって」
「アキが? イジメ?」
キリカは信じられないと、眉をひそめる。
「あんたの場合、イジメる側より、イジメられながらも気付かず終わるタイプと思うけど」
「失礼な。気付くよ、私だって」
思わず本音をこぼしてしまったかのような物言いに、さすがにむっとして言い返した。
「彼らが言うには、私は誰だか生徒を私物化して、好きに扱っているらしいって。いつも一緒にいるのって、キリカくらいしか思いつかないんだけど」
「私があんたの好きになるとでも?」
「もちろんーーー、そう、だよねえ…」
悔しいけど、キリカも嫌なことは嫌と言える女だ。
本屋に行けなかった私の代わりに、買って来て欲しいとメールでお願いしたけれど、自分の趣味を疑われるものは買いたくないと拒否されたばかりだ。
「それ、あんたの幼馴染のことじゃないの?」
「リクちゃん?」
「立場が逆で伝わっているのかも。だって『お母さん』は子供を私物化するものだよ。うまく言いくるめて、好きに扱われるのが子供だよ」
「ああ。まあ、イジメられてるわけじゃないけど。逆なら誤解があるかもしれないね。そっか。じゃあ放課後はリクちゃんと行ってみるよ」
キリカの中でリクちゃんは『お母さん』で定着している。頻繁に授業中の態度やクラスの様子を聞かれたり、仲良くしているお礼の飴を貰っているらしい。
実母より過保護な母だがーーー。
とりあえず、今あったことをリクちゃんにメールして、放課後、生徒会室に向かうことにした。




