10年前の話
3
俺は昔から自分が王子なのが嫌でしょうがなかった。そう言うのも俺は世界が見たかった。カメラで世界を撮りたかったんだ。今考えると馬鹿らしい話だが幼い頃の俺は必死だった。だからある日父親と大喧嘩して家出してしまったんだ。
そこで街を渡り歩き、たどり着いたのがアイスト達がいたスラム街だった。
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これからどうするか、帰るべきか帰らないべきか。あたらしい街にきたのはいいものもここは治安が良くないらしい。戦争孤児が集まる街だと運転手は言っていた。金もそろそろ尽きそうだ。でも帰ったら親父に怒られるのは目にみえている。
どうするかと考えて居ると猫がいた。 毛並みがいいシャープな猫だ。じっとみつめられている。
「にゃー。」
一鳴きすると猫は歩きだす。なんとなくついて来いと言ってるような気がしてふらふらとついていった。
その猫は路地裏に入り狭い道をひたすら渡る。少しゆっくりなのは俺がついて来やすいように気を使っているのかも。
「にゃー。」
急に開けた道の先には教会があった。古いがとても綺麗にみえた。
思わず近づいていく。
「君も家なき子かい?」
「え?」
後ろから話しかけられてびっくりして振り返ると俺と同じくらいの子がいた。
「あれ、違うのかい?でも君もユズに導かれてここに来たんだろ?」
「ユズ?」
「猫の名前さ。 小さい子供がいたらここに導くようにしてあるんだよ。賢いでしょ?」
「俺は別に家が無いわけじゃないぞ。」
「でも帰れないんだろ?ならここにいろよ! 歓迎するよ?」
俺の手を引っ張りながら言った。
「ちょっ!おい!」
「お前名前は?俺はアイスト。よろしくな!」
「え、いやだから止まれよ!」
そのまま2人で教会の中に入って行った。
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「大丈夫か?」
「いや、俺、体力、ないから。」
少ししか走ってないのに教会に入ってすぐに息をきらしたこいつ。何で走ったりしたんだよ。
しかしやっぱり綺麗な教会だ。戦争してる国とは思えないな。
「おーい!アイストー!何処に行ったの?」
向こうのドアから誰か出てきた。
アイスト…こいつのことだよな。
「こっちにいるぞ。」
「え?あぁ、ありがとう!…貴方新人?見ない顔ね。」
ぐっと顔を近づけてくる彼女。近い!近いから!
「俺はフラン。暫く世話になる。」
「あらそう!私はグレイヴ・ニュート。まぁニュートって呼んでよ。で、なんでこいつはバテてるの?」
アイストを見ながら言った。
「俺を引っ張って走ったからだな。」
「なるほど。笑えるほど体力ないのになにやってるんだか。」
心底楽しそうに笑うこいつはきっと心配なんか微塵もないだろう。
なんだか可笑しくて一緒に2人して笑った。
「2人とも〜。笑わないでよ!」
復活したアイストが怒ったように声をあげたがそれがまた可笑しかった。
しばらくするとアイストが急に起き上がった。
「あ、ロスを探してたんだった!ニュート、後は任せた!」
すぐにまた教会から出て行ったアイスト。
「ロス?だれだ?」
「…。ここに住んでるやつだよ。私はあんまり好きじゃないけど。」
なんだか良く分からないがニュートとは仲の悪い奴ならしい。これ以上は聞かないほうがいいだろう。
「さ、案内してあげるよ。こっち来なさい。」
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その後俺は晩ご飯をご馳走になり与えられた部屋にいた。一人部屋なんて贅沢だな。
案内してもらいびっくりしたのは思ったよりこの教会に人が居たことだ。だいたい20人くらいはいるだろう。そして全員子供だ。一番年齢が高いのはニュートだ。それでも俺より一つしか変わらない。大人が1人も居なかったのは彼らが戦場孤児だからだろう。二番目はアイストともう1人だけならしい。誰かから金銭面で支援してもらってるわけでもないのにお金はそれなりにありそうだった。 教会にくる人からご飯をもらったと言っていたがそれにしては量が多かった気がする。
色々考えて疲れたな。
俺はカメラを片手に礼拝堂に向かった。
廊下は静かで自分の足音以外は何の音もしなかった。礼拝堂のドアを開けようとして光が漏れているのにきがついた。
だれがいるんだろう。
隙間から覗くと誰かが歌っていた。
「〜♪」
これは、讃美歌だろうか?綺麗な声だと思った。
静かに聞いているとピタリと声がやんだ。
「〜♪、…誰だ?」
歌っていた声とは違う冷え冷えとした声にびっくりして言葉が出なかった。めちゃめちゃ怖いなこいつ。
「おい、そこにいるやつだ。泥棒なら容赦しないぞ。」
俺がいる方向に棒を向けている。見えてるのかよ。
「いや! 俺は今日から世話になってるフランだ!」
「あぁ、アイストが言ってた。あとあいつも言ってたな。」
「あいつ?」
「そうそう。えーと、あれだあれ。最年長の。」
最年長は、1人しかいないよな。まさか名前覚えてないのか?
「もしかして、ニュートか?」
「あぁ、それそれ。」
全く変わらない様子で言うこいつ。これは嫌われるな。いくらニュートでも名前覚えなければ嫌うわ。
「で、お前名前は?俺はファントム・ロスト・クラスターだ。」
「!…俺はフランだ。クラスターの種族か。初めて見た。」
「お前知ってるのか。クラスターに反応されたのは二回目だ。意外に博学なんだな。」
クラスターの種族とは戦闘部族の名前で最強といわれる部族だったらしい。でも暫く続く戦争に駆り出されて滅んだと最近は言われていたが、生き残りだろうか。
「まぁ知っててどうと言うことはないがな。よろしく、フラン。」
「あぁ、よろしく。」
ロスの手をしっかり握り握手した。
「こんな時間まで何してたんだ?」
何気ない質問だったがロスは楽しそうに笑った。
「んー。金稼ぎ。」
「やっぱり誰か稼いでたのか!可笑しいと思ったんだよ。こんな時間まで大変だな。」
「まぁ、賞金首のやつらは夜しか歩いてないからしょうがないな。」
そう言ったロスにギョッとしてみたがロスはおかしそうに笑った。
「何びっくりしてんだよ。そんなものだろ?お前はいいとこの坊ちゃんだから分かんないだろうけど。」
「い、いいとこの坊ちゃん?」
「そそ。アイストが言ってたからな。良かったな、拾ってもらえてもらえて。
もしかしたらお前今頃売られてたかもよ?」
そう言って笑ってロスは廊下のほうに出て行った。
俺が坊ちゃんなのはばればれなのか。
「やっぱり家帰ろうかな。」
ここら辺をうろちょろするには強くないと無理な気がする。
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あれから色々考えたが家に帰ろうと思った。挨拶だけしてここともさよならだ。しっかり写真はとっておいた。
「あれ?フランもう帰るの?」
「あぁ、アイスト探してたんだ。世話になったな。これやるよ。」
アイストにある手紙を渡しといた。
「何これ?」
「後で開けろよ。」
疑いながら渋々受け取るアイストだが帰ってあけてからびっくりするだろう。
「じゃあまたな!」
「え、あ、バイバイ!」
あの中には俺の全財産とお礼の手紙が入っているのだから。
『大変お世話になりました。この恩はいづれ返します。
スイスリヒ・フランより』




