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黒白雪  作者: 泉野 戒
12/13

エピローグ 衝動殺人

「全く、ふざけてるよね。今時教師と生徒の付き合いに口出ししてくるなんて、馬鹿げていると思わないかい?」

「そうですね」

「高校生だって、子供じゃないんだ。僕と年だって十も離れていないのに、なんでそこまで頑なに止められるんだ?」

そんなことより、ペンを持つ手を動かして欲しい。

「ほんと、おかしいですね」

「君もそう思うだろう? 全く、おかしいよ。ハッハッハッ」

「ふふふふ」

馬鹿だ。

「しかも本当に付き合ってるならともかく、彼女とはまだ何もしていないって言うのにね」

まだ、ね。

「全く、僕はツイてないよ」

ツイてないのはわたしのほうだよ。こんな時間まで野口なんかと二人っきりで文化祭の準備なんて。

あーあ、学級委員なんてなるんじゃなかったなあ。

「きっと、先生が格好いいからですよ。だから余計に目を付けられるんです」

あ、今のは失敗だったかな?

気があるみたいに思われたらやだな……。

「ところで、雪ちゃん」

「はい、なんでしょう?」

あ、やばい。目の色が変わった。

「君、二組の黒澤くんと付き合ってるって本当かい?」

やっぱりそういう話に持っていくんだ。

「はい、付き合ってますけど」

どうやって乗り切ろうかな。

「信じられないな。どうしてあんな男と付き合っているんだい?」

生徒をあんな男呼ばわりですか。

「いえ、どうしてって言われても……」

「彼より相応しい男が、君にはいると思うんだけどな」

いるかも知れないけど、それはあなたじゃないよ? 先生。

「わたし、そんな大したものじゃありませんよ」

欠陥品だし。

「そんなことないよ」

あなたがわたしの何を知ってるの?

「それに、黒澤くんもあれで意外と優しいところがあったりしますし」

少なくとも、あなたよりはニンゲンができてるよ。

「……ちょっと小耳に挟んだんだけどね。君と黒澤くん、小学生の時に色々あったらしいね」

「…………」

こいつ、何を言う気?

「病院で寝たきりの黒澤くんを、君が絞め殺しかけたとか」

やめて。

「君を責めるつもりはないよ。どうも黒澤くんのほうが、君に頼んだらしいしね」

やめて! 思い出させないで!

「君の力が弱かったおかげで黒澤くんは助かって、その後次第に病状が回復し、数年後に退院した。今では全く後遺症は残っていない」

「……そう、です」

……殺したい。こいつを。

「そうじゃないだろう?」

「…………?」

何が……?

「後遺症はあった。君の中に」

「――っ!」

やめて!

「君は今でも、黒澤くんに対して負い目を持っている。君は悪くないのにね」

「や、やめ……」

「今彼と付き合っているのも、その負い目があるからじゃないのか?

「そのせいで余計に負い目を感じてしまって、悪循環になっている。

「そう、君は暗い感情を常に抱えている。

「彼と別れれば、その感情も少しはマシになるだろう。

「彼だって、そのことはわかっているよ。

「わかっていて離れようとしないのは、楽しんでいるからだ。

「苦しむ君を弄んで、楽しんでいるんだよ。

「なあ、悪いことは言わない。彼と別れるんだ。そうして僕と付き合えば、君は……」

「……黙れ」

「うわっ!?」

殺す。こいつを。殺す。

「な、何を……やめろ白井くん! それを置いて」

殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺――


(黒白雪 終)

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