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前世が「空気清浄機」な消臭令嬢の婚約  作者: 藍銅 紅@『お姉様はずるい』コミカライズ連載中


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第3話 王妃様からのお茶のお誘い

「えええええ⁉ 王妃様からの呼び出された⁉」

「ああ。一度エアリスを連れて、個人的なお茶会に来てほしいとのことだ……」

「お、王妃様からのお誘い……」


オズウェストリー子爵家は建国から続く貴族の家ではあるけれど、王家との繋がりなどはない。

目立った功績すらも全くない。

温泉地や風光明媚な湖なんかもない。

観光名所となっているのはオズウェストリー子爵領ではなくて近隣の領地だ。

だから、大街道を通る人は多くても、我が家の領地で宿泊や滞在する人は……極めて少ない。

ええ、王都から東へと向かう大街道沿いに領地があるというだけの田舎でございます……。

大勢の貴族が集まるような夜会ならともかく、王族からの個人的な招待状など、一度たりともいただいたことはないのに……。


「何故……」


分からずとも、相手はお王妃様だ。断ることはできない。

戦々恐々とした気分で、呼びだされた日を待って、そして、お父様、お母様と一緒に王城へと向かった。


お城の使用人に案内されたのは、広い薔薇園の真ん中に設けられたガゼボ。

屋根はあるが、壁はないので薔薇の花々や庭園の噴水などが見える。

空は晴れて、爽やかな風も通る。


わたしはそんな風景を見ながら、王妃様のご登場を待っていた。


しばしの後、大勢の使用人を引き連れた王妃様が現われた。

慌てて立ち上がるお父様とお母様。わたしも立ち上がって頭を下げた。


「待たせたわね。座ってちょうだい」

「はっ! 失礼いたします!」


あたりさわりのない挨拶を交わした後、王妃様が言った。


「それでね、来てもらったのは……、エアリスさんが授けられたというギフトについて聞きたかったのよ」


……なるほど? 王妃様も、汗臭いとか、お体がにおうとか悩んでいるのかしら……なんて。口に出したら不敬かな?


そんなことを考えている間に、お父様とお母様がわたしのギフトを説明する。

シチューの煮込みのにおいをすぐに消したこと。

剣術練習後のエイベルお兄様の汗臭さを消したこと。

お母様の生理のときのにおいを消したこと。

ちなみにお母様の場合、一番最初にギフトをかけたときは、朝に使えば夜まで消臭効果は続いていた。二度目、三度目と繰り返すことに、消臭効果の時間は長くなって、今では三日くらいは消臭効果が保つようになってきたけど。多分、わたしがギフトの使い方に慣れたのか……、レベルアップしたかだろう。


王妃様は、真剣な顔でお父様とお母様の説明を聞いていた。


「においを消すギフト……。有効よね、きっと……」


王妃様はしばらく考えていたけれど、何かを決心したのか、わたしのギフトの力を借りたいと言ってきた。


「わたしの……?」

「ええ、そうなの。あなたの力なら、きっとマクシミリアンのギフトの影響を打ち消せる……」


マクシミリアンというのは王太子殿下のお名前だ。


「十日前のことよ。マクシミリアンも洗礼を受けたの」


確か……わたしよりも半年ほど後にお生まれのはず。だからわたしの次の次くらいの洗礼式にご参加したのかしらね?


「それで……、授かったギフトが『くさい息』というもので……」


へ?


「く、くさい息……」

「ええ」


まさか、王太子殿下の息がくさいってこと……?

それは、あまりにも悲惨では……。

ええと……、前世は何だったんだろう? 気になる。もしかしてラフレシアとかいう花が前世? 確かかなりくさいと聞いているけど……。


説明するより体験したほうが早いと、王妃様はわたしたちを王太子殿下の私室まで案内してくださった。


「……ここが、マクシミリアンの部屋よ。今、ドアを開けさせるから、覚悟をしてちょうだい」


使用人が恭しくドアを開ける。

途端に、部屋の中から廊下に向かって、腐った肉を何日も放置し続けたようなにおいが流れ出てきた。


王妃様は既にハンカチを取り出して、そのハンカチを鼻に当てている。

お父様とお母様はとっさに息でも止めたのかもしれない。顔色が段々と青くなってきた。


ああ……、ものすごく、くさい。

目がシパシパして、痛みさえ感じてしまうほど。

もう耐えられない!

消臭したい‼


わたしは両手の掌を、廊下に立ったまま部屋に向けた。

ギフト発動! 

空気清浄&消臭!

最大出力! 


どのくらいの間、全力を出していたのか。

恐ろしいほどの臭気が段々と薄れてきた。わたしは一歩、部屋の中に足を踏み入れた。

臭気を除去しては、また一歩進み。消しては進みを繰り返す。


臭いの発生源は……、居室と続きになっている隣の部屋のよう。わたしは半開きになっているドアから中を、そっと覗き込む。


するとその部屋には大きな天蓋付きのベッドがあって……、そこに短い青緑色の髪の男の子がむすっとした顔で腰を掛けているのが見えた。ああ、そっちは寝室なのね……。


「誰だキサマ。王太子である俺様の部屋に勝手に入るとは!」


……怒鳴られてしまった。

確かに、単なる子爵家の娘が王太子殿下の私室に許可もなく入室するのは不敬だけど。

でも、このにおい……、消すためにはにおいの発生源近くまでたどり着かないといけなかったのだもの。

と、とりあえず、ドアのところからできる限りの消臭を……。


そうしているうちに、わたしの横をすっと王妃様が通られた。


「ああ! 臭気が消えているわ! マクシミリアン! あなたを抱きしめることができる!」

「は、母上……?」


いきなり王妃様に抱きしめられて、王太子殿下は驚きの表情。


「エアリスさん! ありがとう! これでマクシミリアンのギフトが打ち消せたのね!」


王妃様が喜んでくださっているのは嬉しい。

だけど。


「あの、すみません。今は消臭はできましたけど。これが永続するわけではないと思います……」

「え?」


王妃様の目が点になった。

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