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前世が「空気清浄機」な消臭令嬢の婚約  作者: 藍銅 紅@『お姉様はずるい』コミカライズ連載中


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第12話 魔物

「魔物」


ああ、やっぱり。王太子殿下は魔物だったのか。

いや、前世が魔物ってだけだけど。

でも、大聖堂で洗礼を受ければ、前世の影響が出る。


わたしは人間の身体なのに、空気清浄機のギフトが使える。

ファンやモーターもついていないのに。

そして、ギフトを使うときは……両掌があたたかくなる。


魔法みたいに、不思議な力を使っているだけではなく。

ギフトは、今のわたしたちの肉体にも作用するのだ。


それで……、王太子殿下の、お体の、魔物の影響部分が……、聖女様に最大出力で浄化された。そうして肉体自体も浄化された……。


仮説だけど。

細かいところは違うかもしれないけど。


でも、事実として、王太子殿下が消えた。肉体がなくなった。

考え方の筋としては……、まちがっていないと思う……。


「物語のように『聖女様』が『魔物』を『浄化』しちゃったから、『魔物』は倒されましたぁ、なのかしらぁ?」


側妃様の声が廊下に響いて……。


王妃様が、側妃様を睨む。恐ろしい形相で。


「ナディア! お、おまえがっ! マクシミリアンを浄化しろなんて言ったから!」


恐ろしい形相で、王妃様が側妃様を睨むのに。

側妃様は平然としている。


「あらぁ? あたくしは前世聖女様に『ねえ、どうかしら? 前世聖女様? 『浄化』してぇ、初めからにおわないようにできるのぉ?』 って聞いただけよぉ? 『本当にマクシミリアンのギフトを消せる? 『浄化』して、二度とにおわないようにできるのなら……。あなたをマクシミリアンの婚約者にしてもいいわ』って言ったのは王妃様でしょぉ」


他人のせいにしないで頂戴と、側妃様が笑う。いや、嘲り嗤う。


……確かに、そう。

側妃様は、できるの? って聞いただけ。

浄化していいって言ったのは……王妃様。


わたし……、わたしは……ジェナ様にお願いしますって、頼んだ。


わ、わたしも、悪いの? わたしにも、王太子殿下が消えた責任が……ある、の……?


目の前が、真っ暗になりそうだった。


わたし……、わたしは……王太子殿下が嫌で。消臭しても、ありがたく思われないどころか、王妃様たちを騙す詐欺師扱いで。疎ましがられて、睨まれて。

それなのに、王太子殿下のくささを消すために、やりたくもない婚約者にさせられて。さっさとお別れしたいのに、王妃様は首を縦に振ってくれなくて。


消臭するための空気清浄機だったわたしが、消臭したくないって思うほどに、心の底から王太子殿下が嫌だった。


だけど、こんなふうに、消えてほしかったんじゃない!


消臭の役目はジェナ様にお願いして、わたしは王太子殿下なんかがいない、別の場所で、皆様のために不要な臭いを消したいだけだったのに。


どうして、こんなことになるの⁉


わたしは、直接的には、王太子殿下を消失なんてさせていない。


だけど。


わたしも、罪に、なるの?


だって、王太子殿下が消失した。その場にわたしもいた。

直接の力としては、ジェナ様の『浄化』の力が王太子殿下を消した……ということになるのだろうけど。


『浄化』を願ったのは……、王妃様だけではなく、わたしもだ。


ガタガタと、体が震える。


「お父……様……」


しがみ付くけれど、お父様だって、この状況をどうにもできない。


そして、わたしたち……この場にいた全員は、拘束された。


と言っても牢屋に入れられたわけじゃない。

王城の客間に一人ずつ連れて行かれ、その客間から出ないように言われただけ。

もちろん部屋の外にも、部屋の中にも騎士? 兵士? 区分は分からないけど監視役がいる。


多分、事情を全員に聞いて、王太子殿下がいなくなったことを、正しく判断しないといけないんだろうな……ってことは、分かる。


王室の客間から出られない。

監視がいる。


王妃様も、側妃様も、自室から出ないようにと国王陛下からのご命令が出されているらしい。


多分、というか普通に考えて、王妃様と側妃様から起きた出来事を聞いて。

それからフェアファクス侯爵家のナサニエル様にも話を聞いて、その次にお父様で、わたしかジェナ様が最後に事情を聴取されるってカンジなのかな。


……わたしは、罪に、なるのだろうか?


もしも、わたしが、王太子殿下なんかもう嫌だ、消臭なんてしない、婚約者も辞めさせて……なんて、言って。学院の授業も休んで、自室に引きこもっていなければ。


王太子殿下が、浄化されるようなことは、なかった……?


確かに浄化したのはジェナ様だ。

そして、ジェナ様に浄化をさせたのが、王妃様。

その王妃様は……側妃様に誘導されていたような気もするけど……。


でも、一番最初の原因が、わたし……?


わたしが、我慢して、王太子殿下を消臭し続けていたら?


少なくとも、王太子殿下が消えるようなことはなかった……?



ああ、分からない。考えがぐるぐるするだけで、その先が分からない。


そう、その先……、わたしに責任があるのかないのか。つまりわたしが、罪に、問われるのか、問われないのか。


どうなんだろう?


分からないまま、時間が過ぎ……。


そうして、わたしに対する尋問の番が来た。





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