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前世が「空気清浄機」な消臭令嬢の婚約  作者: 藍銅 紅@『お姉様はずるい』コミカライズ連載中


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第11話 拘束

目を擦る。ごしごしと何度も。

それでも、目の前の光景は変わらない。


大理石の床に残された服。

王太子殿下は……いない。


「あらぁ? どうしたのかしらぁ」


側妃様の声がした。

だけど、答えられる者は居ない。


「ねえ、ナサニエル? あなたのギフトで見ると、どうなのぉ?」


フェアファクス侯爵令息は、青い顔で……頷いた。


「ジェナ嬢の『浄化』のギフトが発動……、そのギフトは確かに『聖女』が持つ『浄化』の力で……。しかし『浄化』をかけられた王太子殿下のお姿は……消失した……」

「服を脱いで、どこかに行ったのではなくて、消失なのねぇ」


……あの虹のようなプリズムのような光に驚いて逃げたのだとしても、服を脱ぐ必要なんてない。


なのに、服だけが残り、王太子殿下の肉体がない。

消えた。

消失した。


「どうして……? あたしのギフトは『消失』じゃないわよー! 『浄化』なのにー!」


ジェナ様が頭をガリガリと掻いた。


「普通の人間に『浄化』をかけても、肉体は消えないわよねぇ。どうして王太子の身体が消えたのかしらぁ?」


側妃様が言う。


普通は消えない。

だけど、殿下は消えた。


『浄化』で。


『浄化』って……、汚れを取り除くことでしょう? 違うの? 『聖女の浄化』は……。


まさか、とは思うけど……。


ええと、プラズマ、クラスター……。プラスとマイナスのイオンを、プラズマ放電して作りだして、空気中に放出して、カビ菌なんかの表面に付着。

酸化力の強いOHラジカルに変化。表面のたんぱく質から水素を抜き出して、たんぱく質を分解。OHラジカルと水素が結合。

つまり、水になって空気中に戻る……。


わたしの『消臭』機能というか、空気清浄機は脱臭だけではなくて、浮遊カビとかの除去とかも、そんな感じできるのよね……。


ジェナ様の『浄化』も、カビじゃなくても、魔素とか、魔物とか、そういった物質のたんぱく質を分解して、空気中に放出できるの……? 

まさか、と思うけど、でも……。


タンパク質かどうかは分からないけど、プラズマ分解的方法で、王太子殿下のくさい元を分解してしまって、そのくさい元が、菌とかウイルスではなくて、王太子殿下の肉体自体だったら……。


『浄化』で、肉体自体を分解した……?


だって、物語とかでよくあるじゃない!

聖女様が聖なるお力で、魔物を浄化したとかって!


今、ジェナ様が使った力って、魔物を浄化する聖女の不思議パワーなんじゃないの?


ああ、違う? 王太子殿下は魔物じゃない……よね?

だけど、消臭ではなく、分解的な浄化がなされたのであれば……。


王太子殿下の肉体は、空気中に雲散霧消したってこと……?


「王太子殿下の身体を、聖女の浄化の光で……分解して消去したの……? だったら……、王太子殿下のお体は、人間の身体とは違って……魔物や病原菌に近いの? だから、くさいにおいがしたの?」


いや、分からない。くさいにおいはギフトによるものだったはず。

でも、王太子殿下のギフトは常時発動型って、以前に王妃様が言っていた。


常時発動?

それ、本当?

誰かがきちんと確かめたの?

そもそもギフトって何?

神様が与えてくださる不思議な力。

だったら……正確なところなんて、わたしたちには分からない。神様の気まぐれを……ただ、ありがたくいただいてきた、だけ。


もしも……、もしもだけど。

呼吸をするたびにくさいのは、ギフトを常時発動しているのではなかったとしたら? 単に、王太子殿下のお体が魔物のようにくさいから、いいえ、魔物と同様の魔素とか何かそういうモノで王太子殿下の内臓とか体が構成されて、その結果息を吐くたびにそのにおいが体の外に漏れているだけだったとしたら……?


王太子殿下のお体は、魔物と同じ構成要素。そして、魔物と同じだからこそ、『聖女』の『浄化』で……消え去った。


仮説どころか単なる思いつき。

正解なのかどうかも分からない。

分かっているのは前世が『聖女』の『浄化』ギフトで……、王太子殿下のお体が消失したという事実だけ。


「ねえ、王妃様ぁ? 王太子殿下のギフトは『くさい臭い』って聞いているけどぉ。前世ってなんだったのぉ?」


前世。

わたしは消臭機能付き空気清浄機だった。

王太子殿下は?


今、わたしが、仮説的に考えたように……魔物とか、モンスターだったとか?


廊下にいる全員が、王妃様を見る。


「前世……」

「前世のせいでぇ、普通なら『浄化』されるに留まるはずなのにぃ『消失』しちゃったんじゃないのぉ?」

「マクシミリアンの前世は……」


自失呆然としたままの王妃様が、ぼそりと言ったのは……。ああ、やっぱり……。



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