第九話 金の使い道
のんびりとこれからのことを考えた僕たち。すると、物語が動いたようだ。ついに、金が来る。地図が来る。
コンコンとノックをする音が聞こえた。レオンが許可すると、一人の男性が入ってくる。大きなカバン、それから一枚の布。おそらく、準備は整ったのだ。
「勇者様でお間違いないですね?」
「ああ。」
性格にはまだ勇者ではないのだが、事務的なやり取りを経て、その荷物はレオンに渡された。男性はその他に言葉を発することもなく、部屋をあとにしたようだ。なんとも、無口な男である。
レオンは小さく頷くと、僕らの方に視線を向けた。
「買い物にいくぞ。」
早すぎる、さっき受け取ったばかりだろう?僕が困惑しているうちに、みんなも渋々と言った様子で準備を始めた。従順すぎる。もっとこう、やる気に満ち溢れるとか責任感を感じるとかそういうものはないのだろうか。
まあとりあえず、買い物編第二回目だ。前回は僕の武器を買いに行ったが今日は違う。みんなの新装備と、食事等である。準備を終えた、僕らは宿屋をあとにした。今日も止まっていいと、フロントの人に言われたので服等はおいていく。
そんなこんなで僕らは歩き出した。
「まずは、装備を見に行く。資金は合計で金貨三千枚。」
「へぇ、三千枚。太っ腹。」
金貨がこの世界でどれほど価値があるかはわからないが、かなりの量だろう。なぜなら、アンナがごきげんになっているからだ。僕はのんびりと彼らを見ながらふと思う。
えっと、この世界の装備ってガチモンの装備か?と。ゴリゴリの鎧。あるいは、キャラクターという設定を守った、軽装すぎるあのアクセサリーまみれの装備。見栄え重視なら後者を。安全重視なら前者を。
今の装備はシンプルだ。動きやすい、元の世界で言うジャージみたいな。ま、それよりは色合いや個性がわかりやすい代物になっている。
「分前とかはどうするの?制限はなし?」
ルマは首をかしげてそういった。僕の質問をよそに、彼らは会話を続けるこの感じ。ここが現実だということを思い知らされる。
「三千枚だろ?装備は大体、金貨百枚以上が妥当だよな。それを四等分ってことは、一人当たりどれぐらいにする?なあ、リーダー?」
いきなり頭がよさそうな会話をしたケイル。僕もそれを聞いてざっと計算をしてみた。
「余分に用意するとして、三百枚。それを五人で分けるのなら、千五百枚。ですが、武器買ったりしなくてはいけませんね。」
「……あんた、頭いいのか?」
気付けば、僕は口にしていたらしい。ああ、あの考えすぎて周りが見えていなかったようだ。顔が一気に赤くなるのを感じる。
もう、何やらかしていると思いつつ、なるようになれという風に話に混ざることにした。
「はい。食材といっても、消費期限があります。今すぐ買い足してもダメにしてしまいます。なのでそこまで考慮しなくても大丈夫だと思います。ちなみに、武器の相場はいくらでしょうか?」
気になることは質問しないと、僕は理解できないし考えることもできない。すると、レオンは顎に手を当てながら話してくれた。
「大体、半額ぐらいだ。装備は全身を考慮しての金額だからな。ただ、場合によっては高額になる。剣や弓は安定型だが、盾や杖はどうも、左右されやすい。」
杖はなんとなくわかるが、盾だって?結構意外な話である。
「盾?つまりケイルさんの武器は高額になる場合もあるんですね。」
「ああ、そうだな。だが、俺はこれで行く。だから考えなくてもいいぞ。」
そうか。別に今すぐ買う必要はないんだ。その核心を持つと、アンナも手を挙げる。
「私も、弓本体は変えるつもりはないわ。ただ、弓矢は切れかけているから、見に行きたいわね。ま、魔法で作ってもいいんだけど。」
ルマとレオンは何も言わない。おそらく買いに行くのだろう。そして、僕の買ったはずの探検はリセットにより消えてしまった。用意しないといけないだろう。
「よし決まりだ。武器を購入するのは俺、ルマ。そしてリヒト。補充はアンナ。ケイルは買わん。」
「そうだぜ。で、みんなで同じ店行くのか、分担するかどうする?」
レオンはそれを聞いてあっさり言う。「俺らが武器を見ている間、ケイルは食材を見てくれないか。そういうところは詳しいだろ?」かなり期待されているのか、ケイルに食材担当の座を与えた。
ケイルはこくりとうなずき了承したらしい。器が広い男である。
「まず、荷物を増やしたくはない。だから、装備をみんなで見に行こう。」
『うん』
だから、このパーティーは計画的過ぎるというか、現実的過ぎる。まあ、今に始まったことではないから別にいいのだが。僕も四人についていくように足を動かした。
しばらく歩いていると、周囲にいる人がうわさ話を始めた。
「みてみて、あれって勇者様じゃない。」
「きゃあー!かっこいい!」
ああ、出た出た。ただ、主人公側で見るのは何気に久しぶりだ。レオンは不愛想な顔のまま直進。ケイルはそれをみてにこっと笑った。
「おいおい、勇者さんよ。ちょっとはにこっとしろよ。」
「黙れ、ケイル。俺はまだ勇者になるかもしれないってだけだ。まだ勇者じゃねえ。」
そこはちゃんと否定するんかいと思いつつも、周囲の声は泊る気配はなかった。これから、こういう声も多くなるんだろうか。僕が見られなくてよかったと安心しつつ、少しだけ同情している自分もいた。




