第八話 のどかな一日
温泉でしっかり疲れを取っ払った僕たちは、ご飯を食べて次の日を迎える。まだ、国王陛下の部下も門番も来ていない。今日ものんびりできそうだ。
豪華な夕食を終えた僕らは、その後ぐっすりと寝て……次の日を迎えた。昨日の食事はそれはもう、おいしかった。天ぷらとか、サラダとか。見たことがあるものからないものまでたくさん。
とにかく、食べ物を食べるのはあくまでも作業だと思っている僕にとっても、思い出深い味だった。
さて、前置きはこの辺に、国王陛下が金銭やら地図やらを用意してくれるまでは完全に自由時間だ。ただ、行ける範囲は限られている。まあ、こまることはほとんどないのだけど。
僕らは、特に外出するわけでもなく客室でのんびりしていた。
「ねえ、リーダー。僕ね、これからのことちゃんと話をするべきだと思うの、話し合わない?」
ルマが足をぶらぶらとさせながら、そう尋ねた。確かに、その通りかもしれない。計画性のない冒険は、あてずっぽうになるだけで無駄が増えてしまう。寄り道はいいが、ほどほどに。そういうことだろう。
レオンはしばらく、剣を磨いていたがルマの提案に小さくうなずく。そしてみんなの顔を見ながら言った。
「まずは、地図をもらってからだ。確か、リヒト。俺たちの初期案には途中には何も書かれていないんだよな。」
「え、ええ、そうです。」
皆の話を聞く側に回ろうと思っていたが、意外にも主役は忙しいらしい。レオン以外にもケイルやアンナに見られながら話をした。
「あの、フウマというやつがどれだけ考えれるかはわからない。ただ、相当長旅になると思う。そこでまず、資金をどう使うかが問題だ。」
レオンは指を膝の上に置きながら、考えるように目を伏せた。どこの世界でも金は大事だ。人が働く理由の一つでもある。それを、どう使うか。
「資金をもらってからすぐ装備を買うのに使うか、それともギルドにでも預けて、もしもの時に蓄える?まあ、私はどちらでも構わないよ。」
アンナは髪をくしでとかしながら、尋ねた。レオンは顎に手を当てる。
安定を取るなら、きっと装備を買ってそろえたほうがいいだろう。それで、余った金貨は持ち物にいれて多くはもたず、預けるのもいいだろう。
ま、そこらへんはすでにこの世界に慣れている先輩方に任せようか。
皆が据わっている中、ベッドに横になるケイルが言う。
「ギルドには何回かよれるし、レベル上げにはダンジョン攻略とか行くんだろ?なら、装備をそろえてから行ってもいいんじゃないか?あと、正直食事とかも用意したい。疲れたときに、狩りしないと行けなかったら、大変だろ?」
ケイルの言うことは思ったよりも筋が通っており、レオンが小さくうなずいた。アンナも賛成気味だ。
「賛成!じゃあ、はじめは装備と武器を集めよう。」
「ああ。わかった。」
まず一つ目の議題は解決した。資金はまず、装備やら武器、食事を買うのに使うということを。
穏やかな時間が過ぎている。ここには戦闘のセの字もない。本当に異世界なのだろうかという実感はないが、学生生活のころとは比べ物にならないほど、ゆっくりできている。あそこは何かとイベントとタスクに追われてしまうから。
資金の話を終えたレオンは次に方針について話し始めた。
「魔王城へのルートが確定するわけだが、真っ先に行けば最短だがきつい戦いになるだろう。それは正直俺たちにとっても、リヒトにとっても厳しいとおもうんだが、どう思う?」
レオンが尋ねた後、ルマが手を挙げていう。
「さっき、ケイル君が言ってたみたいに、ギルドの依頼をこなすってのがいいと思う。」
「ええ、私もそう思うわ。リヒトは?」
また振られた。これは断りづらい内容である。小さくうなずき、賛成の意味を示す。ケイルも寝ながら親指を立てた。レオンはその反応を見てまたもや小さくうなずく。リーダーは公平に意見をまとめる立場になる。流石だ、前はいたずらをして申し訳ない。心の中でほめておこう、かっこいいと。上から目線だが。
「よし、じゃあ適度に依頼をこなす路線で行く。」
「はーい。」
ルマのあっさりとした返事とともに、一度話題が尽きた。二つの項目しか予定していなかったのだろうか。いや、違う。多分計画するまでもなく、自分たちはしっかりしていると判断したのではないだろうか。確か、ダンジョンの時も妙に冷静だったし、物語のキャラクターということを自覚している。
だから、ぶっちゃけ何が起きても大丈夫、どうにかできると考えているのだ。僕もその通り。この穏やかな空間が続く限りなんでもうまくいくと思ってしまう。
うーん。当初の予定とは違うな。もっと戦闘をしたり、冒険をしたり。ファンタジー感がある生活を送りたかった。ま、これは主役になるということを決めた後の価値観である。もとは、彼らを見て居たかっただけだ。
何を考えているかはわからないが、仲間想いであることはわかるレオン。いつも文句ばかりだが、ちゃんと根拠を持って反論をするアンナ。にこにことみんなの元気を出してくれるケイル。そして、のんびりとマイペースな魔法使いルマ。
この四人に僕が加わってもシナリオは大きくは変わらなかった。それが何を意味しているかを、僕はなんとなく察することとなる。
僕が没にしたもう一つの理由。ただ、小学生だったからではなく、中学生に上がるうえでの心境の変化だろうと。




