第四話 そこにあったのは
あのバグはいったい何だったのだろうかと、達観できるほど時間が過ぎていく。みんなのいつもの雑談を小耳に挟みながら、改めて創作者ではなく、主役になったという事実をかみしめた。
まあ、そもそもの話どうやって異世界転移したんだよ。という話ではあるが。そして、どうやれば帰れるかも今はあまり理解していない。みんなと話し合って”魔王を討伐したら帰れるのでは?”という結論に至ったが、それが正しいかも定かではない。
つまりは、僕の旅が無駄に終わる可能性もなくはない。それでも足は進んでいる。物語の一員としてだけではなく、今を生きるため。
そんな僕らがしばらく歩いていると、先頭を歩いていたレオンが立ち止まった。
「……城門だ。」
「え?城なの?」
僕らがレオンの声を聞いてふと見上げると、そこには巨人も通れそうなほど高くそびえたつ壁が存在した。……やっば、本物かよ。僕が済む日本にもたくさんの城が存在する。だが、洋風のそれも憧れていた、ファンタジー世界の城がこの先にあるらしい。
ふつうにうれしい。ふつうに自慢できる。アトラクションでもない、ガチの城。それも見世物ではなく、国の象徴。それが見れるのだから。
しかし、ここは現実。城下町に入るには許可証が必要なようだ。
「まあ、俺らは問題ないが。問題はリヒトだ。冒険書がさっきのフウマ?によって初期化されてなくなってるんじゃないか?」
しまった。そう言っていたな確か。僕は、少しだけもたつきながらカバンをあさる。もしなかったら、入れないのだろうか。そんな不安を抱えながら、僕は中身をぶちまけた。
そういや、僕は異世界転移して荷物は一つも持っていなかったはずなのだが、何故あるのだろう。そんな疑問をよそに一つ一つ見ていく。
投げナイフ。なぜか、あの時買ったものとは異なるが、確かにそこに佇んでいた。
次に、水。ペットボトルではなく竹の水筒。ちゃんと世界観を守っている。
最後に一枚のカード。”ギルド証”。よかった。ちゃんと持っていた。ほっと胸をなでおろしていると、いきなりケイルに肩をたたかれた。
「よかったじゃねえか!!」
「あ、はい……よかった、です。」
「それならみんな入れるな。よし、行くぞ!」
ケイルにそのまま背中を押される形で歩いていく。ああ、やばい、楽しみだ。
門の前には二人の門番がこちらを見ていた。かなり本格的で、鉄の鎧を着ている。先がとがりすぎて、反射できらりと光る槍を手に持ち、声をかけてきた。
「ギルド証、又は招待状を見せろ。」
「ああ。」
レオンがみんな分のギルド証をまとめて、門番に提出した。しばらくじっと見ていると、門番は目を見開く。
「これって、噂の?」
「ああ。間違いない……確か国王様が探していたよな。」
もごもごと話しているが、僕らにはがっちり聞こえている。何を言っているんだといわんばかりに、みんなどこか不機嫌そうだ。
「……君たち、少しここで待っていてもらえるかな?」
「なんでですか?」
「お願いします。」
理由を言わない門番たち。一人は門の中を駆け抜けていった。よくある、国王陛下に呼び出されるシーンだろうか。定番だが、そこを見れるのなら得である。
大抵、お金がかかるからな。今の僕らはおそらく金欠。資金等をもらえるのなら、なおさらいいだろう。それに、国王がどんな顔なのかを見てみたい。
それはさておき、ここで足止めされるのかと思うところもあった。
「ちょっと、門番!明日でもいいでしょう?もうすぐ夜。宿屋が満室になったらどうするの。」
アンナが若干の怒りをこめながら門番に問い詰めた。今の時刻は日本時間でおよそ六時頃だろう。当たりは夕暮れ時のオレンジ色に染まっていた。冒険帰りの人たちが、僕らの後ろに列を作って待っている。確実に進路妨害をしているのは、僕らではなく門番になりそうだ。
この世界はやはり異世界だ。考え方がまるで違う。僕ならきっと、門番のことに従いその場で待つ。そしてみんなに前を譲るだろう。
ま、それはさておき、確かに困る。今ここで足止めを食らっている間にも客室は埋まっていく。挙句の果て、一つも取れなくなったら、僕らは野宿をしなくてはいけない。せっかく来た城下町をそんなちんけなもので終わらせてたまるかといわんばかりに、アンナは言い放った。
明日でもいいだろ、と。さて、門番はどう出る?
僕がわくわくしていると、先ほど出ていった門番が戻ってきた。もう一人の門番に話しかけるなり、二人ともぺこりと会釈する。
「こちらの方についてきてください。」
ええっと、拒否権も何でついていかなきゃいけないかも説明してくれない感じかな?みんなが尋ねようと口を開いた瞬間、門番はすでに歩いていた。
僕らは彼を見失わないように。あるいは、物語を振興するために足を速めた。この世界はやっぱり、僕の世界とは違う。
それがまた、僕の好奇心と創作意欲を引き立てているとは、誰も思うまい。僕はまだここを現実だとは自覚していなかったようだ。
バグが解消され、ようやく自由自在に動けるようになった。僕らは、神が用意しているであろう、未知の先にある何かを求めて旅を続ける。




