第二話 NPCはごめんだ
創作者、いや神が変わったことにより、この世界は少しだけバグった。その影響で、僕はNPCになってしまったようだ。
あれから、数分、数時間たったが何も変わりませんでした。残念。しかし、進歩もあった。僕の話す言葉はランダムだが、かなり種類が豊富だ。
レオンを呼ぶとき、はじめは”金髪のお兄さん”だったのに対し、今は。
「おい、勇者!」
そう、謎に勇者呼ばわりしております。そしてそんな言葉を発する僕にツボっているのか、みんなその場で戦闘不能に陥っている。どうするんだ。ここに魔物が来たら。
あと、面白いのがよくある待機モーション。僕はてっきり棒立ちになっていると思いきや、手をぶらぶらさせたり、伸びたり。ひどいときは、その場で横になったりしていた。
どちらにしろ、恥ずかしさと自分の体が動かせない恐怖で包まれている。
「しっかし、どうしたものか。宿屋に連れていくにしても、村がどこにあるかさっぱりわからんな。」
ケイルが頭をガシガシとかきながら漏らした。実際、神のお告げとやらも来ないし、完全なるバグである。……もし、これを意図しているのなら、そいつこそ魔王だ。
……流石にないよな?
とりあえず、物語が進行するまで、僕らはその状態で冒険に進むことになった。
「それにしても困ったわね、なんせリヒトくん本人とは会話もままならないもの。」
「ああ。まず、なんでこんなことになっているのか、本人が理解しているかどうかを聞き出すこともできないってのは、何というか、難しいな。」
レオンの語彙力もどこかに消え去ったようだ。僕はそれに対してこういう。
「気にしないで行こうぜ!」
うん。相変わらずキャラ崩壊がひどい。みんなはもう笑わなかったが、やはり違和感なのかちらちらとこちらを見ている。
「……口塞いでおくか?」
「あ、それあり!」
ケイルがご機嫌にそういうと、僕の制御のいかない口元に布を巻いた。それで、対策できるのなら、最初からやってほしかったものだ。しかし、驚くことに自分は声を出さなくなった。本当に、何が何だか理解できていない。
異世界にきて、早一か月ほど。僕は体の機能を取られ、挙句の果て口をふさがれています。異世界転移の中ではおそらく異例で、そして面白いのかそうでないのかあいまいである。
「よし、これで大丈夫だろう。ついてこい!」
ケイルは、僕の手を取りぐいぐい進んでいく。目的地も何もわからない無知の道を。僕は抵抗する力もなかったので、そのままついていった。
しばらく歩いていると、ふと声が聞こえた。
『あーあー。テステス。』
その声は、まるで脳の中に直接話しかけているような声色だった。みんなにもその声が聞こえていたのか、ぴたりと足が止まる。
「な、なに?」
ルマが不安そうにあたりを見渡す。魔物の気配はないのか、さらに眉をひそめた。
「不気味ね。……リーダーどう出る?」
「……少し待て。」
レオンは意外にも冷静に、ルマと同じく周囲を見渡し次の声を待っていた。……よくいる、察しのいいヤツだろうか?
僕も含めてみんな脳に響くあの声を待つ。数分後ようやく聞こえた。
『どうも、リヒトよりノートを受け取った天音風馬……。いや、フウマです。ども。』
天音風馬。お前かよ。もっとこう、魔王に近い幹部とかを期待していたんだが……。みんなは姿は覚えていても名前を知らないのか首を傾げた。というか、二回も挨拶してるし。
『いや、なんか俺が書き出した瞬間、初期化されたんですよ。』
「……は?」
素っ頓狂なあのレオンがだしていた。プログラムを失敗したかのように言われても こちらとしては全く理解していない。バグなのか、それともお前のシナリオ なのかさっさとはっきりしてもらいたい。それが僕らの 唯一、一致した 思いではないだろうか。
僕らは が不服そうにしていていると、フウマは言った。
『だから、リヒトがおかしくなってるの、あの進行書のせい。だから、今は何もしないで休んでくれ。俺も何が起こってるか把握できていないんだ。』
あー、そのパタンね。それなら攻めることはできない。フウマは時々、やらかす。それでもヘラヘラと楽しそうなのは、陽キャならではの反応だろう。
一番ヤバかったのは、テスト中。眠気に勝てず寝てしまった。そして夢の中で百点を取った景色を見て声を上げてしまう。
「やっべ、俺天才かよ!」と。先生までもが同情の目を向けていた。フウマは確かに抜けてはいるが、思いやりがあるやつだし、一応頑張ってはいることを僕も知っている。だからまぁ、僕は気にしていなかった。
だが、仲間の反応は違ったようで、若干苛立っている。
「私たち、あと何か月後に魔王討伐できるのよ。リヒトくんが帰れないじゃない。」
「そうだよ……僕、リヒトくんといるのは嬉しいけど、無理やりここにつれてきた形になるから、早く返してあげたいんだ。」
レオンもケイルもコクリと頷き同意の意味を示した。……あったけえ。露天風呂並みに染み渡る。口を開けたなら「ありがとう」と言いたかった。けれど、運命の定めには逆らえないわけで、僕は口を布で覆われているままである。……なんなら、会話をしすぎて待機ポーズを取っている。腰に手を当ててふんぞり返っていた。
ある意味黒歴史である。




