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第一話 違う意味で主役になりました

 僕は前まで傍観者だと思ってた。


 クラスでの会話もずっと小耳に挟むだけで、窓際の席で黄昏るようなそんな人である。行事も楽しんでいるふりをして……って、過去回想はこの辺にして。


 僕、北条理人は改めて言うが、異世界転移した。これといって、普段と変わらないんだけどね。


 適当に後ろをついていき、適当に相槌をするという。聞かれたことには嘘を交えながら適当に……僕って本当にちゃらんぽらんな自由人ではないだろうか。


 さて、そんなことはさておいて、あの館掃除から約一か月が過ぎた。え?時間軸どうなっているんだって?


 それは単純明快。


 ええっと、例のノートがほかの人の手に渡ったことにより、一旦エラーが起きたみたいです。それで、一旦リセットという形で新たな章に移ったと。なんともゲームチックな展開で


 誠にうれしい話ではあるが、こまった話がある。エラーにより、ここはどこ?状態が発生しています。ここで出会った創作キャラともはぐれたし、また孤立してしまった。


 なんともまぁ、皮肉な話である。主役になろうと決意したばかりだと言うのに。まぁそれも、予測不可能なイベントであるわけで、もしかしたらあいつ、天音風馬が仕組んだものかもしれない。忘れた人もいるかもだから改めて紹介しよう。


 天音風馬は僕のクラスメイトでつい最近この世界の神になった男だ。厨二病ではなくてね。どういうわけか、こちらの世界に来て、僕の代わりにこの世界を書いてくれている。こいつが今の創作者で、僕はその登場人物の一人である、それが現状だ。


 それより、ここはどうだろうか。今いる場所は、草原が広がっている。デジャブを感じたそこの君。まさしくその通りだ。この世界に来た時に僕は異世界転移の定番中の定番。


 森の中、街も見えないザ・自然のど真ん中にいるのだ。おかしい。確かに僕たちは、廃墟を掃除した後街に行き、宿屋に止まったはずなんだが。エラーというのは、意外にも世界に影響を与えているようだ。


 悩んでいても仕方がないという声が聞こえた気がして、僕はその場に立つ。涼しいそよ風が心地いい。


 しばらく風に当てられていたとき、違和感が一つ。


 前髪が目にかかって邪魔だなあと思っていた時だ。


 全く体が動かない。比喩ではない。金縛りにあったみたいに、指先までもが動かない。そして、挙句の果てに口が勝手に動いたのだ。


「あー、異世界転移したのか。」


 何その冷静系主人公。いや、今更だが?そう思っていると、体までも勝手に動き始めた。


 右に一歩。左に一歩。まるで、誰かがコントローラーで僕を動かしているようなおぼつかない足取り。


 ええっと、そういう意味で主役になりたくなかったんだけど。僕は訳も分からず、前進し続けていた。




 しばらく、自分の足に任せて歩いていると、見慣れた四人がそこにいるではないか。


「あ、いた!創作……いや、リヒト!」


 赤髪の弓師、アンナが、こちらに指をさして駆け寄ってくる。ああ、感動の再会……しかし、僕の口から出た言葉は、まったく違った。


「はじめまして、僕、北条理人……?」


 いやいや、何自己紹介しているんだ、僕。僕が眉をひそめて困惑していると、四人も困惑していた。


「お、おい。こいつ、再開したっていうのに、自己紹介しだしたぞ。」


「へんなのー。」


 茶髪のタンク、ケイルと水色の髪の魔法使いのルマがじーっとこちらを見て、不思議そうに首を傾げた。傾けたいのはこっちだってば。本当にゲームキャラになったみたいに勝手にしゃべって、勝手に動いて、挙句の果て自己紹介している。NPCかっ!


 しばらく無言を貫いていた、金髪の勇者レオン。ゆっくりこちらに近づいてきて、肩に手をのっけて来た。

 じっと青い瞳をこちらに向けて静かに尋ねる。


「リヒト。俺の名前を言え。」


 低く、そして命令するような声。僕の行動を一つ一つ観察するように、レオンは僕を全身くまなく見ていた。


 そんなの簡単だ。さっきも言ったように。目の前の男は”レオン”。子供のころに書いた、没案一にて登場した、一般人なのに勇者になった男。挙句の果て、僕は放置して一か月前に怒られたからな。


 そう思って口を開こうとした。


 動かない。いや、”動かせられない”。あろうことか、自分はにこにこして、主人公面している。完全なキャラ崩壊……いやそれより、これはいったいどんな悪夢だ。


 そして、また勝手に口を開いた。


「金髪のお兄さん?」


 僕が絶対言わないような、あいまいな表現をこの体は言葉にした。あーもう、絶対シバかれる。


 すると、レオンはクスッと笑った。ええと、見世物じゃないんだけど。レオンは目を細めて、額にデコピンをしてきた。


「いたっ。」


 口ではそういうが、僕は全く痛みを感じていない。レオンはクスクス笑っている。まるで、花を咲かせるような、柔らかな笑みで……ええとこの人、ツボってる?


 おいおい。嘘だろ。こちとら、体動かせなくて恐怖でいっぱいなんだが。むしろ、後ろにいるみんなも、笑いをこらえている。


 よかった。この人たちがまともじゃなくて。ふつうの人なら、胸倉掴まれてたよ。


 そんなこんなで、僕の異世界冒険譚はおかしな形で再開した。一体、何が起こっているのだろうか。

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