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なのじゃ!!  作者: デト
第2章
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向かう先はッ!!

 ミレシェルアは、アルタイル王国を繋ぎにドドギーラ王国へと守護オーブを返した。

 元々は、取り戻せれば無償で返す約束であったが。

 どうやらドドギーラ王国側は、本当に信頼しても良いものかを確かめたかっただけらしく。

 国宝を取り戻してくれたお礼にと、渋ることなく報酬を送ってくれた。


 『フォーク』に関しては、動きを掴めず。

 自国の守護オーブを使用したアルタイル王国は、一ヶ月間の充電期間を危惧し厳重なる警戒体制を整え、日々を過ごしている。

 例え近衛騎士団長が任務中につき不在であったといえ、王様の居た謁見の間まで敵の侵入を許し、あまつさえ逃亡された屈辱を糧に、騎士達は特訓のメニューを増加された悲しい話をアクゼマーサはミレシェルアに世間話として伝えていた。


 ここ数日の日常で、何かあったと答えるなら、この位だろう。







 そして、その日はやって来た。

 (フルール)の中旬が訪れ、ぎこちない足取りで朝の街中を歩くカリア。

 目指す場所は、数年前まで暮らしていた実家。


 四大貴族、ノース・セイントリア家の豪邸。


 当主ザックスから出てきた用件。

 護衛の頼みを了承したカリアは、久しぶりに合う家族に対して緊張していた。


「お久しぶりです、カリアお坊っちゃん。話については、ザックス様から聞いております。母君ジェシー様や、妹君サリア様も、貴方様のご到着を楽しみにしておられます」


 大きな屋敷を取り囲むように作られた鉄柵を回り込み、同じく鉄柵で作られた両開き型の門扉の前。

 門番をしている兵を左右に、丁度門の目の前で1人の渋い男性が立っており、カリアに話し掛けてきた。


「こちらこそ、お久しぶりです。モンドールさん」


 少年と向かい合うように立つ、父と同じ年頃の男性。

 彼はセイントリア家の執事として働き、早20年を軽く越す古株。


 モンドールの合図によって門番の2人が門扉を開き、カリアは執事の後を追って敷地内へと足を踏み入れた。


「坊っちゃんが健康的に成長しており。このモンドール、嬉しゅうございますな」


「俺が幼い頃から世話になったからね、心配してくれてありがとう。でも大丈夫。かあ──ジェシー様やサリア様は、元気ですか?」


「勿論、お元気です。一時期は大変でしたが。──ささ、お二方はこの中でお待ちです」


 懐かしい庭を通り、豪邸の廊下を通り。

 そうして、一つの部屋へとたどり着く。

 モンドールは扉を開き、中へと入ったカリアの視界にはこれまた懐かしい存在が映る。


「久しぶりね、カリア」


「ふーん、元気そうじゃない。お兄ちゃん」


 四角い長テーブルを挟むように置かれた長ソファー。

 その片方に、2人の女性が腰を降ろして待っていた。

 1人は前とさほど変わらない大人の女性。もう1人は数年の間に成長している。

 久しぶりの再会にどう声を掛ければいいのか、言葉を詰まらせるカリアに。少年と同じ銀髪を肩まで伸ばした少女サリアが話しだす。


「どうせ、此所には私達しか居ないんだから。お兄ちゃんも気にせず、昔のように接して平気よ」


「……サリア。うん、2人も変わらずで安心したよ」


「それは私達の台詞ですよ、カリア」


 空気を読んでか、執事のモンドールは部屋の外に出ていた。

 カリアもソファーに座り、母、息子、娘の3人は会話を始める。


 「貴方1人を家から追い出す形でごめんなさい」そう話す母ジェシーに対して、「俺も自分自身で決めた事だから」と、心配をかけた今までに申し訳なさそうな表情で答えるカリア。


「サリアもごめん。俺が家を出たから、代わりに辛い想いをさせてると思う」


 四大貴族の次期当主になる為、特訓を初めとした稽古の心配だ。

 昔はカリアが次期当主になると信じ、カリアに集中して教育を施していた。

 四大貴族に子供が少ない理由も、愛情と躾、特訓への時間を注ぎやすい故。


「そう言ったって。どうせお兄ちゃんは、マカさんを好きな癖に。アンジェリーナ家は1人娘だし、そうなると、どのみち家を継ぐのは私だもん」


「っ!? サリア!? どうしてその事を!!」


 突如、妹の口から告げれるカリアの秘密。

 見る人が見ればバレバレな秘密だが、カリア自身はバレていないと思っていたらしい。

 ひっくり返したような声を発して、慌てたような反応を見せていた。

 それを聞いていた母親が会話に混ざる。


「ごめんなさい。つい、口が滑って」


「!!!?」


 カリアが誰を好きなのか。という話は、誰にもしていない。

 それでも筒抜けだった状況に、恥ずかしさの余り思考が停止してしまうカリア。

 けれどこの話を切っ掛けに、3人は気兼ねなく話せる以前の関係に近づけたのは間違いなかった。


「そうそう、お兄ちゃん! 私、ミレシェルアちゃんに会ってみたい!」


「ミレシェルアに?」


 すると、サリアが思い出したように席を立ち、興奮したように新しい話題を持ち掛けた。

 父ザックスを伝って、ミレシェルアの事は知っている様子。


「パパが褒めてたわよ」


「そうねぇ。この前カリアに会った時かしら? 貴方の纏う雰囲気から、成長を感じとったのでしょうね。素晴らしい師に出会えた、なんて嬉しそうに語っていたわ」


「父さんが、そんな事を」


 この前の祝いの言葉も嬉しかったが。

 やはり、世話になっているミレシェルアを褒められるのも気分がいい。


 なにより、カリア自身ですら自覚できる程に成長をしているつもりだが。

 周りから強くなったことに気づいてもらえると、実感が強まる。


 ミレシェルアは教える事も上手く、『ダウンロード』の能力により。

 普通の人と違い、操作に失敗したムーンフォースの流れを見逃す事はしない。

 だからだろう。駄目なところは直ぐに教えられ、変な癖が付く前に操作が上達していた。


 カリアからしても、ミレシェルア以上にムーンフォースを教えることが上手な人を知らない。


「これから一週間近く、馬車の旅が続きますもの。カリアが世話になっていますし、お礼もしないといけないわ」


「わかった。ちょっと話し掛けてみるよ」


 王都アルタイルからガンフォールまで、普通なら一週間と言う短い期間でたどり着けない。

 四大貴族セイントリア家が使う、キングバイフォンに引かせた馬車だからこそ、その程度で到着出来るのだ。


 鏡を使った大移動、ミラーゲートも。各王国の中心となる街にしか設置されていなかった。

 滅多に使用される事もないが、騎士の街が辺境の地に存在する事から、どちらの街から移動しようと差は余りないとの事。

 土地勘のある方が移動が楽そう、と言う考えも存在するが。


 して、腕輪の鏡を使ってミレシェルアに話し掛けるカリア。


(──と言う理由で、母さんと妹のサリアがミレシェルアに会いたいらしいんだ)


 鏡を額に当てて、思考を送り念話を飛ばす。

 カリアの話を聞いていたミレシェルアから、返事がきた。


『すまぬ、カリア殿。少しの間、こちらの用事でそちらには行けぬ』


「えっ!?」


『心配するでない、たかが数日じゃ』


 まさかの返事に、口から声が漏れたカリアだったが。

 慌てて手で口を塞ぎ、聞き返す。


(ちなみに、用事を聞いてもいい?)


『ふっふっふっ!! 気になるか、カリア殿。仕方ないのぅ、教えてやろう。なんとこれから、家族揃っての旅行なのじゃ!』












 夜が始まろうとしている大陸、魔界大陸ガルゾルート。

 暗き世界は、微かな自然の光と街灯や建物の窓から溢れる灯りによって照らされている。


 第四天の領地で暮らす、魔族(マダラ族)の中の魔人族。

 魔王城が建てられた崖下に広がる街には、そんな者達が平和に生活している。


 機械の技術力は劣っているものの、人間達が暮らす街とそう変わらない。

 こちらも食べ物を売る店が有ったり、本屋が有ったりと普通だ。


 3人の御付きを従えたミレシェルアも、今は街の中に居る。


「さて、土産物はこれで良いじゃろう。城に帰って、向かうとするかのぅ!」


 先頭を歩くミレシェルアと、それぞれ少しずつ荷物を抱えた御付き。

 ユーリエッタ、ククリアン、ハーベスの3人と移動し第四天魔王城に戻る。


「初めて第四天の領地を出るのぅ! 楽しみじゃ。今から儂がゆくぞ、第三天の領地よ!」

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