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なのじゃ!!  作者: デト
第2章
47/53

よっしゃあああ!!

「やるのぅ、あやつら」


「3人の内2人は四大貴族の現当主ですから、当然と言えば当然でしょう」


 レイヴン、ザックス、ズゥイスリーの3人が戦いだして直ぐの頃。

 ミレシェルアとアクゼマーサの2人は建物の影に潜み、様子を見守っていた。


「守護オーブを取り戻す為、儂はあやつの隙を突こうと思っておるのじゃが。弦七(げんしち)はどうする?」


「戦えない事もありませんが、先ほど話した通り援護に徹します。肉体や疲労の回復、身体能力の強化や弱体化が、わたくしの『バイオドクター』が誇る能力ですので」


「おお! 回復の能力とは希少じゃのぅ!」


 この世界の治療は基本、包帯や薬草を初めとし、病院での医療道具を用いて治療する。

 稀に回復効果を持つナイト持ちが現れるが、便利な事から重宝される存在だ。


 度々馬車に乗って王都の外に出ていくのも、王女の身分でありながら外の怪我人を治療していたから。


 そうこう話している内に、相手が建物の中へと吹き飛ばされる。


「ならば、儂の身体強化を頼むぞ。おぬしは姿を隠しておれ」


「それは宜しいのですが。夜慈郎(よじろう)の方こそ、大丈夫なので?」


「心配は要らぬ。守護オーブを取り戻すだけじゃ」


 双剣『キリトリ』も具現化させ、重力で建物の壁に貼りつき、何時でも突撃出来るように構えたミレシェルアは、アクゼマーサへと笑みを浮かべ。


「儂がここぞと言う時に、ヘマした事が有ったかのぅ?」


 自信に満ち溢れる、余裕の表情を見せた。

 それを眺めたこの国の姫も、表情を和らげる。


「ええ、そうでしたね。学校にカップラーメンを持ってくる等、しょうもないやらかしはしても、決める時には決める人でした」


 柔らかく口元を綻ばせ、前世の頃を思い出す。

 アクゼマーサの前世だった弦七(げんしち)は、ミレシェルアの前世である夜慈郎(よじろう)にとっても、一番古くから続く仲である。


 王女は手に持つ大杖をくるくると振るい。先端の、鏡で造られた装飾が光を発した。

 微かに暖かみを感じさせる光が、ミレシェルアの体を包み込む。


「では、行ってくるぞ」


 本来ではあり得ない程の、力強さを実感。

 ムーンフォースによる強化と、『バイオドクター』の強化が合わさり。

 ──それはもう、普段の限界を越えた。


 意識を研ぎ澄ましたミレシェルアの瞳は、『ダウンロード』の能力によって赤みを増し、建物内の、相手が纏うローブの内側に隠した守護オーブを捉えた。


「──今じゃ!」


 月光(ルナ)が蓄えられ、凄まじい輝きを魅せる球体が移動する。

 建物の窓を突き破り出てきた相手に合わせ、ミレシェルアの前方に重力を軽減させる膜を三重に重ね合わせ、そこを通るよう力一杯に壁を蹴った。


 見事なまでに鋭く速い突進は、レイヴンへと迫り、襲い掛かる。






「……。」


 勢いを止めずに近づく相手に、レイヴンは不意にだが視線を向けてきた。

 ? なんだ? 程度の、余り気にした風でもない軽い確認だ。


 しかし、その確認のお陰でミレシェルアの存在に気がつく。


「んッ!?」


 既に少女が持つ剣を振るえば、掠れる位の距離感。

 レイヴンを追って建物から出てきた、四大貴族の当主2人も呆気に囚われている。

 そんな突然の状況にも関わらず、レイヴンは咄嗟に身を捻って攻撃を回避しようと動き出した。


「無駄じゃ!」


 けれど、ミレシェルアの目的はレイヴンではない。

 最初から彼が持っている守護オーブの奪還。

 白髪の少女が持つ双剣は特殊であり、月光(ルナ)に関係するモノしか斬ることは叶わないのだ。

 だからこそ、その刃に薄くムーンフォースを纏わせ双剣を振るう。


(──コイツ。まさか、守護オーブを狙っていたのか!?)


 そこでやっと、ミレシェルアの刃が自分に向けられた攻撃ではないと、レイヴンは理解する。


 ムーンフォースを纏わせた双剣の刃はレイヴンのローブの一部を切り裂き、縛っていた紐も切られた事で守護オーブが彼から離れ、静かにゆっくりと落下しだした。


 この瞬間。

 まるで時が止まったように、この周辺に居た5人は、時間が過ぎるのをゆっくりに感じた事だろう。

 ミレシェルア、アクゼマーサ、レイヴン、ザックス、ズゥイスリーの5人は。それぞれが反応を見せ、未来に繋げる。


 落ちていく守護オーブを、慌てて自分の手の中に戻そうと動くレイヴン。

 一瞬遅れて、四大貴族の当主2人は状況を理解し、ミレシェルアの援護をしようと突撃を再開した。


 この中でも、一番早く動いていたのはミレシェルア。

 自身が失敗する事を一ミリも想像していなかった少女は、瞬時に剣を握る手を地面へ伸ばし、手のひらが地に着くと前転をする要領で、足のかかとを使い空中に舞う守護オーブを蹴りあげた。


 その結果が功を成し、レイヴンの伸ばされた手が何も無い空間を掴む。

 ミレシェルアは地に着けた細い腕を曲げ、強化された腕の力だけで身体を飛び上がらせ、宙に舞う守護オーブを空中でキャッチ。


「よっしゃあああ!!」


「よしっ!」


 ミレシェルアとアクゼマーサが、共に歓喜の声を発する。

 眺めていたこの国の姫も、小さくガッツポーズをしている程だ。


 空中で美しく舞う、白髪の少女を眺めたレイヴンは思考した。


(この子供、いや違う。コイツが持つ剣を中心にして、俺の『リベリオン』が妨害されたのか!?)


 未来を視る能力がありながら、ミレシェルアの突撃に気がつけなかった。

 今、この瞬間も『リベリオン』を発動させているレイヴンの瞳には。

 白髪の少女の両手に掴む双剣を中心に、未来が見えない小さな空間が存在した。


「ちっ! 返せ!」


 体勢を崩していたレイヴンだが、そんな事はお構い無くミレシェルアに向かって無理矢理跳躍する。

 少女の脇に抱えられた守護オーブを取り返す為、また腕を伸ばすが。


「じゃあのぅ──」


 目の前で、少女の姿が守護オーブごと消えていった。


「はっ? ……消えた?」


 レイヴンは、ミレシェルアが魔族(マダラ族)である事も、使い魔召喚でこちらに来ていた事も知らない。

 それ故に、いきなり姿を消した少女に困惑してしまう。


(ナイトの能力なのか? 俺の『リベリオン』を妨害した力も考えると、隠す能力か?)


 どう見ても10歳以下だろう小さな少女が、ムーンフォースを使えているのも驚きだが。

 レイヴンはドドギーラでミレシェルアを見ており、覚えていた。

 仲間の4人と戦っているのを、途中からであるが傍観し知っている。

 空を飛んだり氷を使ってくる事も、だからこそ姿が消えた事に理解が追いつけない。


 ミレシェルアの『ダウンロード』と『使い魔召喚』を知らない彼には、知るよしもなかった。


「はぁ──」


 レイヴンは己の失態に溜め息を溢す。

 せっかく、仲間達がドドギーラで入手した守護オーブを奪い返されるとは。そう思い、自身の情けなさに呆れた。


 今も『ストレート』と『ボルケーノ』のナイトを使い、空中に居るレイヴンへと直線的に向かってくる2人が居る。


(──非情にならねぇとな)


 レイヴンが普段使う武器も、不用だと考えて故郷に置いてきた。

 彼にとって、武器を使う事は命を奪う時と決めていたらしい。

 赤髪の青年は、仲間達と違い自分だけは覚悟が足りなかったと、反省する。


 当主の2人。

 ザックスは神速で突きだすように攻め、ズゥイスリーは足裏から噴火の力で勢いをつけ突進していた。

 手を抜かず、気を引き閉めた状態で、最速の攻撃をした筈だった。


「「ッ!?」」


 その攻撃は、相手に届かない。

 レイヴンから放出された凄まじく密度のあるムーンフォースによって、進行を受け止められたのである。


「邪魔だ。もういい、失せな」


 2人の身動きを空中で止めたレイヴンは、周囲に広げた金色銀色の力を暴発させた。

 まるで風船が破裂したようにムーンフォースを弾かせ、その衝撃によりザックスとズゥイスリーが吹き飛んでいき、今度は2人が建物の壁を突き破っていく。






「嘘……でしょ……!?」


 離れた場所で建物の影から覗く、王女アクゼマーサは驚いた。


 ムーンフォースを使用して、物を動かす事は少女もよくおこなう。

 それにはかなりのコントロールや集中力を必要とし、力加減を間違えると破壊しかねない危なさがあるのだが。


 王女の視界には、纏ったムーンフォースで宙に浮かび続けるレイヴンの姿が、そこに存在した。






 

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