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なのじゃ!!  作者: デト
第2章
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ここで会ったが百年目ッ!!

「色々と報告は聞きましたよ。何やら、面倒な事に巻き込まれたようですね」


「うむ。まあ皆が無事じゃった事だしのぅ。多西(たにし)にも会えたし、儂は気にしてはおらぬ。ところで弦七(げんしち)よ、ここはまだ襲われておらぬのじゃな?」


 (フルール)の上月が終わりに近づいた頃。

 温かくなったり涼しくなったりと、気温が落ち着かない季節は、窓を開ける事で心地よい風を部屋の中へと運ばせる。


 アルタイル王国の王女アクゼマーサの部屋にお邪魔しているミレシェルアは、友の部屋のバルコニーで風を浴びながら手すりに身体を預けていた。

 屋根が無いので日光が程よく身を照らし、昼寝がしたくなる気持ちよさ。


 白髪の少女とは違い、バルコニーの扉近くに置いた部屋の中の椅子に座る金髪の少女は、手に持つ本を静かに読みながら答えた。


「ええ。襲撃された報告もありませんし、アルタイル城は大丈夫です。警戒も強めていますから、『フォーク』と名乗る集団も、こっそりとは来られないでしょう。……本当に、その者達はアルタイル王国へと移動したのですか?」


「わからぬ。こちらの方角に移動した、と言う事しか知らぬのじゃ」


 事件からは既に、1週間近くが経過している。

 けれどその間に『フォーク』の情報は手に入らず、動きもない。

 次はどうくるのか、もしくは目的を達成していて時が来るまで身を潜めるだけなのか。

 知るよしも無いこちら側は、警戒心を強めて守りを固める事しかできなかった。


「おぬしもこっちに来い。共に日向ぼっこでもしながら考えよう、のぅ」


「はぁ……」


 肩ほどの高さの手すりに両腕を被せ、更に腕の上に頭を乗せて惰らけて居るミレシェルアを、チラリと横目で眺めるアクゼマーサ。


 そのような状態で何を考える事が出来るのか。

 そう思い呆れたように溜め息を吐くが、本を閉じ小さな机の上に置くと、近くにある大杖を持ちバルコニーへと歩いてくる。


 確かに心地よいものだ。部屋を出た王女はそう思った。

 暖かい日光と涼しい風を浴びて、部屋の中と外での違いを感じる。

 バルコニーから見下ろす光景は、王都アルタイルの南東側。

 平和に広がる街中を二人で眺めては、思考。


「フォークの者達は、どのような見た目なのですか? こちらも報告により、大体の姿は知らされていますが。特徴から暮らしている地域を絞りこむ等、方法が無いこともありません。これらを考えてみましょうか」


「おお、そのような事も確かに出来るのぅ」


 顔、と言うよりは服装等の特徴。

 和洋の国ベルニカなら和風洋風の衣類を好み、吹雪の国クインレギアスならモコモコとした服装を好む。


 前回は砂漠の国ドドギーラに現れたので、服装で判断をするのは難しい。

 フード付きローブを纏っていたので尚更だ。


 むむむっと唸りながら、何かヒントは残っていないのかと記憶を探る。

 けれど、ローブの印象が強くて思い出せない。


「ローブなら思い出せるのじゃが。そうじゃのぅ──ほれ、あそこに人がおるじゃろ? あんな感じのローブじゃ」


 丁度良い感じに、『フォーク』が着ていたローブと同じ感じの者達を見つけ、隣のアクゼマーサに教えた。

 ミレシェルアの視線の先を辿ると、それなりの遠く離れた位置で、数人の者達が街の屋根の上で争っているらしい。


「「……。」」


 偶然参考になる相手を見つけ、眠たいのを堪えて観察。

 都合の良い事もあるようだ。そう考えながら、二人はそれを眺めていた。


「……と、言うよりも。あれが、フォークなのではありませんか?」


「ぬっ!?」


 いち早く不審に思ったのは、この国の姫。

 アクゼマーサの呟きを聞いたミレシェルアは、変な声を漏らして意識を覚醒。

 友の言う通り、よく見れば『フォーク』と名乗った集団にも見える。


「ぬわあああ! そう、やつらがそうじゃ! おのれ、ここで会ったが百年目ッ!! 儂のではないが、守護オーブは返してもらうぞ!!」


 まさか、こんな真っ昼間から事が起きるとは。

 ドドギーラも真っ昼間だったが、国が警戒心を持った状態の真っ昼間を、襲いかかるとは考えてもいなかった。


 白髪の少女も現場に向かおうと、ムーンフォースを放出し鏡に注ぐ。

 数階もの高さがあるバルコニーの手すりを飛び越え、重力で飛んで行こうとした時、声を掛けられた。


「まって、夜慈朗(よじろう)。わたくしも共に向かいます」


「おぬしは戦えるのか? 弦七(げんしち)。言っておくが、やつらは強いぞ?」


「援護に徹しますから大丈夫です。わたくしの『バイオドクター』は、そう言う能力ですので」


「ほほぅ。確かにおぬしのナイトは、儂も知らぬのぅ。まあよい、ゆくぞ」


 話の最中にバルコニーを飛び越えようとしないアクゼマーサを眺め、空を飛べないことを理解したミレシェルアは、友も浮かし共に飛んでいく。










 二人の少女が、フォークに気がつく数分前。

 フードを深く被り、ローブを着た5人の集団が王都アルタイルの路地に身を潜めていた。


「ここも広いなぁ。下手をすれば迷子になっちまうぜ」


「そうね。私達の里に比べれば、どこの街も広いわ。そのお陰で隠れやすくて、ありがたいのだけど」


「しかし、移動で時間も掛けてしまいました。アルベルが居たから、ここまで誰にも気付かれず潜入できましたが。ドドギーラの時とは違い、お城も攻めにくい事でしょう」


 アルタイル王国の辺境から、王都アルタイルまでの移動に時間が掛かった様子。


 ライン、メディア、ロバートの三人は物陰に隠れながら街を伺い。

 昼の首都は人が溢れるように賑わい、表通りの移動は困難に思える。


 ドドギーラと違い、フードを被るような人々も見えないのが難点。

 このまま街中を移動すれば、怪しさで目立ってしまうだろうか。


「構わねぇさ。どのみち行動を起こすなら、夜と決めていたんだからな」


 レイヴンは腕輪の鏡を僅かに輝かせ、常にナイトを発動させている。

 ドドギーラで手に入れた守護オーブも、彼の纏うローブ内の腰辺りで縛り、隠していた。


 今はとりあえず、夜まで静かにしていようと皆が体力温存を目的とし、座り込んだ瞬間。


「んっ!?」


 勢いよく立ち上がったレイヴンが、路地の左右に伸びる道を眺め、溜め息を漏らす。


「……ふぅ。どうやら、相手に見つかったみたいだ」


「「!?」」


 賑わっている表通りとは違い、静寂な路地に緊張がはしる。

 フォークの皆が立ち上がり、周囲への気配を探りいれた。


 しかし、気配を捉える事も出来ず。姿を見せてくる事もない。

 ただ不気味な時間だけが、彼らを支配していく。


 レイヴンを除く4人が緊張により喉を鳴らした。

 ゴクリッと、小さな音すらお互いに聞こえる事で違和感に気がつく。

 先までの、表通りの賑わいによる騒音が止んでいたのだ。


「来るぞ! 跳べ! お前ら!」


 張りつめたようなレイヴンの合図。

 彼の声を皮切りに、フォークは一斉に路地を跳躍した。


 同時に路地の両脇から金色銀色の光弾が襲いかかる。

 回避した光弾それぞれが正面から衝突し、その爆発した勢いによって発生した風に更に上へと押し出された。


「次は上だ!」


 建物よりも高く押し出された身体は隙を生み、彼らよりも更に上から影が迫る。

 眩しそうに上空を眺めたレイヴンがソレを察知し、仲間に伝えた。


 攻めてきた人数は二人。

 どちらもがその手に剣を掴み、太陽の光を背にして静かに攻撃してきた。


 迫る二人は、同時にアルベルへと剣を振りおろす。


「まずは1人」


 冷たく放たれた言葉と同時に、二人の刃がアルベルの胴体に接触。


 けれど、その攻撃がアルベルに傷をつける事はなかった。

 ロバートが瞬時に『ライトケーブル』を発動させ、フォークの皆が光ると同時にすぐ近くの屋根上に逃れたのである。


「良い反応だ」


 攻撃した片方がロバートを称賛し、二人も屋根の上に着地。


「君達が、報告にあった『フォーク』だろう? 問題を起こしてくれたお陰で、私達の仕事が増えてしまったじゃないか」


「まったくだ。しかし、それも終わる。貴様達を捕らえてな」


 姿勢を整え、落ち着いた雰囲気を持ってフォークと向かい合う男性二人。

 対して、フードの中で冷や汗を流したアルベルが口を開いた。


「──四大貴族、現当主か」


「……へぇ。コイツらがそうかい」


 権限を利用し。戦いに巻き込まないよう、周囲の人々までこの場から遠退けさせれる人物。

 北を守護する四大貴族と、西を守護する四大貴族。


 ザックス・ノース・セイントリア。

 ズゥイスリー・ウエスト・アンジェリーナ。


 カリアとマカハーンの父親二人が、フォークの前に姿を現した。

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