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なのじゃ!!  作者: デト
第2章
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王都に帰還

「ぷはぁー。やべぇほど、緊張したぜぇ」


 『フォーク』を名乗った集団が、首都ドドギーラから姿を消した後。

 その者達は、人気の無い森の中に居た。


 ここはアルタイル王国内に存在する、普通の森。

 ラインは緊張が解かれた様に尻を地に着き、L字の姿勢で伸びをする。


「ちょっとアルベル! さっき貴方、妹に巨大ペンデュラムで攻撃したでしょ! 見てたんだからね、可哀想じゃない! 大怪我でもしたらどうするのよ!」


「そうだ、そうだ! 俺っちも見てたぞ!」


 人目につかない場所に移動したからか、被っていたフードを捲り、隠していた顔を晒すメディア。

 成人になったばかりと思われる、若々しく美人な水色髪の女性。


 彼女は腰に手を当て前屈みになりながら、静かに木に寄りかかり座るアルベルへ不満をぶつけていた。

 そんなメディアに同調するよう、ラインも「そうだ、言ってやれ!」と、言わんばかりに野次を飛ばす。


「まあまあ、お二人さん。相手も実力者です、手を抜く余裕もありませんでした。アルベルも、妹を気絶させてから連れて行きたかったのでしょう」


 残りのロバートもフードを外し、若きThe神父感を溢れさせる人の良さそうな顔つき。

 肩に届きそうな長い茶髪を手で整えながら、アルベルを擁護。


「へぇ、あの場にアルベルの妹が居たのかい。なら悪い事をしたな。俺がもっと早く合流していれば連れてくる余裕も有っただろうに」


「……問題無い。赤き月まで、まだ余裕はある。守護オーブも手に入れた。アシュレイは、また今度で良い。場合によっては、諦める覚悟もある」


 顔を露にした皆は、歳が20前後の集団。

 10代後半だと思われるレイヴンから、20代前半だろうアルベルとロバート。その間にライン、メディアと言ったところ。


「そういや、守護オーブに関わる事で、お前らに相談したい事があるのさ。──俺の考えでは、もう1つ予備を持っておきたい」


「「ッ!?」」


 指の上で守護オーブをクルクルと回して、レイヴンが伝える。

 奇襲してやっとこさ1つの守護オーブを手に入れた皆は、驚愕し言葉を詰まらせた。

 そんな皆を眺め、レイヴンは回すのを止め、手のひらに乗せた国宝を4人に見せるように続ける。


「俺達はこのオーブの凄さを知らねぇ。アルベルの話だと強力な結界を発動できるらしいが、解除すると一月間のチャージが必要なんだろ? ここまでやって結局、守れないと意味がねぇんだ。後戻りも出来ない。なら、徹底的にやる他、俺達に道はねぇのさ」


 ここでレイヴンは、一度深呼吸を始め。

 頭の中を落ち着かせ、伝えたい事を纏める。


「つまり、ここ最近ですらモンスターが暴れだしているんだぜ。赤き月、ブラッドデーと言っていたな。それが近づくにつれ、俺達も余裕が無くなるって事さ。そうなればブラッドデーが来るタイミングに合わせて、守護オーブを使えない可能性もある。俺はそれを危惧した」


「……。」


 ブラッドデーの直前で、守る対象に危険が迫る可能性。

 その時に守護オーブを使用する事となり。肝心の、ブラッドデーの7日間で守護オーブの使用が出来なくては意味がない。

 理由を聞き、判断に困っていた4人の表情が引き締まる。


「レイヴンに賛成だ。都合よく此所はアルタイル王国。私が王都の道案内を出来る」


「そうね。アルベルの故郷だったわ。人物や宝の場所も、アルベルの『クロスペンデュラム』で探知して見つけられるものね。私も賛成するわよ」


 アルベルとメディアに続き、ラインとロバートも頷く。

 皆が決意を固めた事を確認し、レイヴンも頷き返した。


「本当なら、俺達の情報が広がる前にスピード勝負と行きたいところだが。『ライトケーブル』での、長距離移動。ロバートのムーンフォースもカラに近いだろ。だから休憩して、万全の状態になったら向かう。わかったかい?」


「皆さん、申し訳ありません」


「心配すんなって、ロバート。むしろお前のお陰でよ、俺っち達は強気で攻められるんだからな!」


 確かに平然そうに見えるが、ロバートの頬には汗が垂れていた。

 ドドギーラ王国の中心地から、アルタイル王国の辺境までを5人。たった一人の力のみで、瞬間移動をしたのだ。無理もない。


 こうして『フォーク』の5人は、身を潜ませ王都アルタイルを目指しながら休憩を挟んでいく。











「くぅ、悔しいかしら! 街中じゃなければ、ルルミルキャノンを放てたのよ!」


「おぬし、自分の技に名前を付けておるのか……」


 場所は変わり、首都ドドギーラ。

 『フォーク』の者達が消えた後、メディアの操っていた霧は直ぐに消滅した。

 技名を付ける友に、ドン引きしているミレシェルア本人は気づいていないが。

 ミレシェルアも、氷人形に『ミレシェルア軍団』と名付けているので同類。


「すみません、ルルミル王女。間に合いませんでした。このツェゲラード、一生の不覚!」


 乱闘が起きていた場所に、騎士団長であるツェゲラードが到着。

 ルルミルと同じように悔しそうな表情を浮かべ、拳を握る。


「そうなのよ! いくらドドギーラが広いからって、移動に時間を掛けすぎじゃないかしら!」


「……それには深い理由が」


 確かに首都ドドギーラの街中が広いとは言え、ムーンフォースで身体を強化し移動すれば、もっと早くこの場所に到着した筈だった。

 訓練生のような未熟者ならまだしも。

 騎士団長であり、狼の獣人族(ビースト族)である彼が本気で駆ければ、滝の流れる岩壁から反対側の岩壁まで数分だ。


 ツェゲラードが語るに。

 自分が移動する道や屋根の上と、あり得ないほど正確に罠が仕掛けられていたと。

 まるで、騎士団長である彼の行動が全て筒抜けになっているみたいに。


(行動を読まれる、か。怪しいのぅ)


 ミレシェルアは思考した。

 最後に現れた赤髪の男性を思いだす。

 今は病院に運ばれたが、ネネチカと言うお婆さんの不意打ちを見切った動き。

 最初から腕輪の鏡を輝かせ、レイヴンと呼ばれた彼の瞳にムーンフォースが込められていた。


(まさか、むむぅ、もしや)


「──むむぅ」


「何を悩んでいるのかしら。夜慈郎(よじろう)には似合わないのよ」


 しまいには、腕を組み唸り声が漏れていたらしい。

 隣にいるルルミルが訝しそうに、白髪の少女を見ていた。


「いや、なんじゃ。やつらのナイトを考えておってのぅ」


「? 振り子と、籠手と、霧は分かるかしら。他の二人はお手上げなのよ」


「まあ、儂の予想じゃが──」


 『ダウンロード』の月光(ルナ)を視る能力により、周りの知り得ない世界が少女の瞳に映りこむ。


 最初に『フォーク』の四人を発見した理由も、煙を上げた王宮から伸びる謎の線が視界に映り、不思議に思ったからだ。

 謎の線の先を覗いてみれば人が居て、更に膨大な月光(ルナ)を蓄える球体を持っていた。

 守護オーブを見たことがなかったので、そのまま流されそうになったが。


 ルルミルの耳に口を寄せ、小声でナイトの予想を説明。


 ミレシェルアには、相手が飛んで消えていった方角も丸見えであった。

 双剣『キリトリ』で『ライトケーブル』の移動も妨害出来たかもしれないが、今回は安全を第一として見守るだけに留めたのである。


 味方の増援が来たからと言えど、追い込まれた敵が何をしでかすか分からない。

 相手の実力が未知数なのも有り、皆を危険に晒す可能性は回避したかった。


「あの人達。ルルミルの家の壁を壊したのよ。許せないかしら……」


「……。」


 ポケットからハンカチを取りだし、少しだけ恨みを込めた表情で布の端を噛み、布の反対側を握る手にも力を込めて伸ばす。

 プンプン状態のルルミル姫を眺めたツェゲラードは冷や汗を流しながら顔を逸らし、騎士団長である彼が破壊した事を、今は内緒にしようと沈黙。


 ミレシェルアはそんな二人の様子を脇目に眺め「あっ」と察したが、内緒にしてあげようと決めた。

 ──結局、バレたらしいが。




 こうして、事件に巻き込まれるも無事乗り越え。

 更に1日が経過した事で、王立ヴェルト学園の生徒達は王都アルタイルに帰還した。

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