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なのじゃ!!  作者: デト
第2章
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乱闘

 何時もの平和だった砂漠の街中で、ムーンフォースやナイトを使用したぶつかり合いが勃発し、騒ぎながら逃げだす周囲の人々。

 王立ヴェルト学園やギーラ学園の者達を始め、暇な冒険者方は一般人達を避難させつつ野次馬根性で現場を眺めていた。


(あやつを中心にして、円形に空間が乱れておる──)


「──ならば!」


 ペンデュラムを垂らした者を凝視したミレシェルアは、その瞳に映る状況を分析し、次の自分が取る行動を選択。

 白髪の少女を覆うように冷気が包み、周りの月光(ルナ)を凍結させて人の形を次々と生み出した。


「ゆけ! ミレシェルア軍団よ!」


 少女の形をした10体の氷で作られた人形が、重力で浮かび動きだす。


「動ければ問題ねぇ! ワリィが、邪魔をするなら俺っちも抵抗するからな!」


 先まで手足をジタバタさせていた者が屋根に着地して、紐にぶら下がる首もとの鏡が輝く。


「『アイアンインパクト』ッ!」


 ローブの袖から出た腕に、鋼鉄の籠手が具現化。


 ぐぐぐっと背を反らせながら両腕を後方に下げると、力強く腕を振るい、胸元前で籠手を纏った拳をぶつけ合わせた。

 その火花が散るほどの衝撃により、その者から風の如く速く透明な衝撃波が放たれ、ミレシェルア軍団を襲い崩壊させていく。


「ああ、儂のミレシェルア軍団が!」


「ちょっと、夜慈郎(よじろう)! なに遊んでいるかしら!」


「別に遊んでおらんぞ!」


 今も尚、数十の銃口から光弾を発射させているルルミルに叱られる。

 ミレシェルアとしては、ミレシェルア軍団を操り、乱れた空間の流れに合わせて複数の箇所から一斉に襲わせる考えであった。

 ただの氷の塊ではなく自身に似た人形の形にしたのは、相手を迷わせる為。

 1つ1つが意思を持った人形だと相手を騙し錯乱させれば、不意を突けやすいと考えたのだ。


 幼い少女2人が、様子見の行動とはいえ苦戦している所。

 屋根下からまた別の者が2人、下から飛び上がってローブの集団を襲う。


「お前のそのフード、僕が外してやるよ」


「事情は分かりませんが。ルルミル様が戦う以上、わたしもお相手させて頂きますぞ」


 ギルドのゴールドランクが2名。

 長き黒髪を靡かせながら長刀を握る、『影姫』アシュレイと。

 カンフー衣装を纏う猫耳を生やした白髪お婆さんの、『連武』ネネチカ。


「「ッ!?」」


 邪魔が増えるのも時間の問題だとは思っていた相手4人だが。

 それでもやはり、最初に見つかったのも、増援が来るのも早すぎた。


 片方は影と同化し、影の触手を操って襲わせ。

 片方は両腕の袖口を合わせて、軽々しく飛び掛かる。


「影……。まさか、『影姫』か!?」


 アルベルと呼ばれた、ペンデュラム使いの者がアシュレイを眺めて驚愕。

 乱れ歪んだ空間に伸ばされた影が軌道を曲げられるものの、その度に影を枝分かれさせて伸びていく。


「くっ!」


 『クロスペンデュラム』の効果をごり押しで押しきられ、右腕に守護オーブを抱えたアルベルが瞬時に身を下がらせたが、判断が遅れた。

 伸びる影が深く被るフードを掠り、捲りあげ素顔を晒す。


「噂は聴いていたが。成長したな、アシュレイ」


 整った顔立ちの、黒髪の美青年。

 その顔の雰囲気は僅かだがアシュレイに似ている。

 そして、そんな彼を眺めたアシュレイは──落ち着き、納得した表情で口を開く。


「生きていたのか。──兄さん」


 真剣、しかし若干揺らめく黒き瞳で青年の姿を捉え、確かに呟かれた。

 そこまで大きな声ではない呟きだったけど、周りで戦う者達の一部が顔を向ける。


(アシュレイ殿の兄じゃと? 確か、兄含めた家族を失ったと。そう言っておったのぅ)


 中でもミレシェルアは、昔ロンティナの宿屋で聞いた会話を思い出す。

 アシュレイ・ヴァレリアスは元々四大貴族の生まれで、兄の特訓に出掛け両親と共に帰らぬ人になったと。


「うへぇ。その娘がアルベルの妹か。すげぇ美人じゃん!」


 襲いかかるネネチカを相手にしながら、籠手を装着した者がアシュレイを見る。

 ネネチカから繰り出される素早い拳の数々を、ギリギリで防いでいた。


 しかし、老いたからといえど、相手が視線を反らし生まれた隙を逃すほど鈍ってはいない。

 ネネチカが瞬時に首飾りの鏡を輝かせ、細長い棒を具現化させるや振るいだす。


「ぐぼあっ!?」


 咄嗟に避けに徹したが、その棒が伸びだし顔面に直撃。

 アルベルと同じくフードが捲れ、紫髪の男性の顔が表れた。

 更に追撃しようとするネネチカだったが。横から近付いてくる謎の霧を視界に捉え、後方にジャンプして距離をとる。


「何油断してるのよ、ライン! 情けないわね」


「仕方ねぇだろ、メディア。男と言うもの、可愛い女は目で追っちまうんだよ!」


 ラインと呼ばれた男も跳躍し、霧を出したであろうメディアと言う名の者の近くに退避した。







夜慈郎(よじろう)。あれは、どういう状況なのよ」


「……儂に聞かれても」


 一方、アシュレイとアルベルの向かい合っている2人側は。

 事情を全く知らないルルミルが攻撃を止め、ミレシェルアに近づき耳打ちし。

 ミレシェルアもアシュレイがどう動くのか分からず、見守っていた。


「お前も私達と来い、アシュレイ」


 キリッとした男前な顔のアルベルが話す。


「意味が分からないな。久しぶりに再会出来たと思えば、僕に盗みの片棒を担げと言うのか? それ、守護オーブだろ? 幼い頃に四大貴族が護る対象の1つとして、僕達は父さんに教えられたからね」


 チラリとアルベルの右腕に抱える半透明な球体を眺めたアシュレイは状況を整理し、この争いの悪者がどちら側なのかを考えていた。

 元々、この国の王女とミレシェルアが悪事を働くとは考えてもいない。

 相手側が争いの原因だとした前提で行動に移ったが、だいたい理解した。


「兄さんが生きていると言う事は。父さんと母さんも、無事なの?」


「いや、私を庇って2人は亡くなられた」


「そうなんだ。そして身を呈してまで守った息子が、盗みを始めたと言う事かな? 報われないね」


「……理由は後で話す。今はどう思われようと構わん。だからお前も、こちらに来い」


 会話を交えれば交える程、アシュレイの持つ長刀に影が纏まりだす。

 生きていた、久しぶりに再会出来た兄への失望か。

 徐々に増していく影は、アシュレイの心境を表しているかの様に大きく。


「もういいよ。理由なんて、捕まえてから聞けばいいから……」


「それはつまり、私と敵対すると言う事か。ならば、仕方ない」


 ここで会話も終わり、アシュレイが眼光を鋭くさせ。

 対して兄のアルベルは「ロバート。玉は任せる」と呟き、後ろに佇む仲間に守護オーブを投げ渡した。


「気絶させ、連れていくでも構わんな」


 空いた右手で背負う長刀の柄を掴み、静かに刃を抜き出すアルベル。

 同時にアシュレイは突撃し、互いの刃が衝突し合った。



 それから数分間。

 アシュレイはアルベルを。

 ネネチカはライン、メディアの2人を。

 ミレシェルアとルルミルが、アシュレイとネネチカを援護しながら、守護オーブを持つロバートを狙って戦いが続いた。


 途中で増援を恐れたのか、メディアと呼ばれる女性がナイトの能力である霧を拡散させ、周囲の者達を襲い。

 回避した者も居れば、霧に飲まれ意識を失う者も多数。


「わたしの生徒達に何をしたのです?」


「安心して、殺してないわ。邪魔されると嫌だったから、眠ってもらっただけよ」


 そんなやり取りが、おこなわれていたと言う。




「……凄い」


 下手に近づくと霧をくらう為、距離をおいた者達が感想を溢す。

 4対4の、皆がナイトを発動させた戦い。


 ギーラ学園の生徒達は同じ歳のアシュレイと、幼い少女2人の戦う姿に感嘆し。

 王立ヴェルト学園の生徒達はドドギーラ内の争いに変に首を突っ込めず。

 どちらの者達も、とりあえず包囲を維持しながら眠った者達を退避させていた。


 見回りをしていたドドギーラの兵達も次第に集まり、強者達の足を引っ張り兼ねないので戦いに参加する事はないが。

 皆から見ても、泥棒側が不利になっていくのが見て分かる状況。


「──中々やるな、あいつら」


 生徒達や冒険者の中に紛れたローブを纏う者が1人、乱闘を眺め歩みだす。

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