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なのじゃ!!  作者: デト
第1章
27/53

これからもよろしく

 暗き世界。

 夜が訪れ活動を始める魔族(マダラ族)


 魔界大陸ガルゾルートの、第四天の領地に建つ魔王城で。

 第四天魔王ガルスが玉座に腰掛け、本を読んでいた。


「──久しぶりだな。フィンよ」


 クロスディア大陸の内容が記入された本を閉じ、玉座の間の窓枠へ視線をおくる。

 大の大人が立って通れる程の大きな窓が開いており、1人の者が窓枠に背中を預け腕を組みながら立っていた。


「本なんか読んじゃって。アンタには似合わないじゃないか、ガルス。明日は血でも降るのかねぇ」


 スッと窓枠から降りた者は、背中に生やしたコウモリの翼をひろげ窓を閉じ。

 赤色の髪を後頭部で結びポニーテールにさせた女性は、ゆっくりとガルスへ近づく。

 身長はさほど大きくはないが、彼女の纏う雰囲気は大人びて落ち着いていた。


「それもクロスディア大陸の本を、ね。懐かしいじゃあないか。何かあったのかい?」


 その紅き瞳で、ガルスの手に持つ本を眺め。

 襟の張った赤黒いドレスに身を包む彼女は、腰に手を当てクスクスと笑う。


「我の娘がな、最近よく遊びに行っておるのだ」

「ミレシェルア姫が? へぇ、よくアンタが許したねぇ」


 この女性は、ガルスが娘に対して過保護なのを知っている。


 彼女の名前は──フィンドレア。

 第四天魔王から親しくフィンと呼ばれる彼女も、魔王だ。


 第一天魔王、不死者(アンデッド)を統べるヴァンパイア。


「我としては、行かせたくもない。──フィンよ。此所に来るまでの、モンスターの状況はどうであった?」


 肘を掛け、頬を手の甲に乗せたガルスは不満そうである。

 やっぱりかい。と苦笑を浮かべたフィンドレアは、真剣な表情に変わり告げた。


「アンタが想像している通りさね。明らかに数が増えている。まあ私達魔王に牙を折られた、根性のない雑魚共さ。気にするレベルではないのは確かだよ」


「……。」


 魔族(マダラ族)の王は、6人存在する。

 第一天から第六天の魔王達は、その強大な力を駆使して魔界大陸に生息しているモンスター達を威圧していた。


 本来、知性を持たない大半のモンスターは本能に従って暴れるのみ。


 そんなモンスター達すら、恐怖によって大人しくしてしまう。

 魔王達が外を歩けば、知性のないモンスターでも本能に従って服従の姿勢を示すしかない。


「それは、フィン。貴様が外を移動している間だけだ。魔王が大人しくしている間は、奴等も暴れだす。だからこそクロスディア大陸は、こちら以上にモンスターが暴れていることだろうな」


「だろうねぇ。なにせ、日に日に──"ブラッドデー"が近づいてるんだからさ」


 ここで会話も終わり、ガルスに背中を向けて歩き出すフィンドレア。


 「レイナの所に遊んでくるさね」と言葉を残し、玉座の間を出ていく。

 第一天の魔王が此所に来た理由も、ミレシェルアの母レイナと喋る為だった。


「……我も、ミレシェルアの様子を見にいくか」


 玉座から立ち上がり、ガルスは歩む。

 最近のミレシェルアは訓練場で何かを練習していた。

 器用に何でもこなす娘が、珍しく苦戦しながら。












「うぬぅ。難しいのぅ」


 両手にムーンフォースを集めてはバチバチと放電させるようにして、金色銀色の輝きが空気中に消滅してしまう。

 つまりは失敗であった。


「いったい、何をしているので? ミレシェルア様」


 魔王の娘に従う大人の女性が3名。

 メイド服を着た彼女達は、自分達の主であるミレシェルアを眺め、困惑している。


「ふっふっふっ! 内緒じゃ!」

「またですかー? 私達にくらい、教えてくださっても良いではありませんかー!」


 肌はミレシェルアに近い肌色で、頭に角を生やした綺麗な者達。


「教えてくだされば、私達が手伝える事もありましょう」


「駄目じゃ。それでは完成した時に、皆を驚かせぬじゃろう! それに書庫を調べた結果、記録が無かったしのぅ。知っている者が居ないとみた! なぁに、儂の眼で見ておる。完成は時間の問題じゃのう」


 そうして、ミレシェルアは手の平でムーンフォースを放出し。

 左右の手を向かい合わせ、それぞれ放出させた輝きをぶつけ合わせた。

 結果は先程と同じく、霧散して消えてしまう。


 失敗を繰り返す少女を眺め、従う彼女達。

 ユーリエッタ、ククリアン、ハーベスの3名は心配そうに見守る。


「──やはり、此所だったか」


「っ!? 魔王様!」


 そんな時、訓練場にガルスが現れた。


「珍しく苦戦しておるな、ミレシェルアよ」

「まあのぅ。パパ殿にも内緒じゃぞ?」


 父ガルスが現れても、手もとを眺め集中し続けるミレシェルア。

 本当に珍しい。この場に居る少女以外の者が、そう思った。


 何時ものミレシェルアなら、大抵の事は瞬時に覚え特訓を終わらせる。


 魔族(マダラ族)でも、ムーンフォースを扱えるようになるのは産まれて10年近くが経つ頃。

 彼等、彼女等から見ても、ミレシェルアは天才の領域だ。


 実際には精神がお爺ちゃんであり、心が出来上がっていたので、産まれた時から微力ながらにムーンフォースを操れた。

 最初はナイトまでは無理であったが、ムーンフォースの扱いに慣れ数年前に習得もしている。


 魔王であるガルスも、そんな娘を誇りにおもい。

 従う彼女達も、自分達が一生を尽くすに相応しい存在だと、心の底から忠誠を捧げていた。


「むっ? カリア殿が呼んでおる」


「ミレシェルア様ー! またクロスディア大陸に向かわれるのですか!? 私達は淋しいですよー!」


「ククリアンの仰る通り。最近なにかと、あちらの大陸に向かわれますが。お気に召したので?」


「こら! ククリアン! ミレシェルア様から離れなさい! ……くっ、羨ましい」


 首飾りを掴み呟くミレシェルアに、涙を流し抱き着くククリアン。

 ユーリエッタは頷きながらも、情けない同僚の言葉を肯定し。

 ハーベスは、心酔する主に抱き着くククリアンを引き剥がす。


「ミレシェルアよ。向こうで楽しんでおるか?」


 そんな中、静かに娘を眺め、聞きだすガルス。


「うむ。新しい事もいっぱいでのぅ。向こうの者も優しいし、世話にもなった。本当なら皆で遊びに行きたいぐらいじゃ」


 笑顔で振り返り、答えるミレシェルア。


「そうか。──ならいつか、娘が世話になった"お礼"もしないとな」


 魔界大陸ガルゾルートとクロスディア大陸は、関わりを持たなくなって長い。

 種族は違くとも、どちらの大陸で暮らそうと人である事に違いはなく。

 お互いに知らぬ仲のまま時が過ぎ、それで納得もしている。


 無理に関わりを持とうと考えもしたが、失敗を恐れた結果だ。


 魔族(マダラ族)は、仲間想いの種族。

 見た目がいろいろ違う種族で多く棲息するが。

 1人は皆の為に、皆は1人の為に協力的である。

 つまりは、仲間が傷つくのを嫌う。


「ミレシェルアが楽しめておるなら、それでよい。──行ってこい」


「パパ殿も、休憩を大切にのぅ! 行ってくるのじゃ!」


 首飾りを握った少女の姿が消えていく。

 皆の前に、丸い鏡のような影のみが残った。












 クロスディア大陸に召喚されたミレシェルアの前に、何か物を持つカリアが立つ。


 進級試験から数日後。

 今日は、その結果が発表される日だと聞いている。


「俺、合格したよ! ミレシェルア!」


 周りに人の居ない、何時もの林の中。

 カリアは開口一番に、嬉しそうな表情を浮かべた。


「よかったではないか、カリア殿。まあ、儂が師になったのじゃ! 当然と言えば、当然の結果じゃのぅ! しかし、それでも、よくぞ頑張った!」


 両手を腰に当て、少し海老反りながらも誇らしげにする。

 そんな少女を眺め、カリアは手に持つ物を差し出した。


「はい、これ。俺だけが貰ってばかりだったから、ミレシェルアにもお礼を渡そうと考えていたんだ。元々は君が稼いだお金で申し訳ないけど、感謝の気持ちだ。受け取ってほしい、本当にありがとう」


 すこし照れるようにして、少年は小さな箱を渡す。


「これは──ルナフォンか!」


 頑丈な白い紙の箱に描かれたモノを眺め、中身を理解。

 いつか買おうと考えるだけで、購入していなかった。

 こちらの世界の携帯電話、ルナフォン。


 前世の友である転生者から頂いた、電話番号のメモもある。

 2人には、長いこと待たせた。


 嬉しそうに箱を持つ少女の反応に胸を撫で下ろし、カリアは話し掛ける。




 


「これからもよろしく。ミレシェルア」

これにて、第1章は終わります。

なんか淡々と進む感じになってしまいました。

小説を書くのは難しいですね。

感想、ブクマ、評価ポイントもありがとうございます。

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[一言] 続き楽しみにしてます❗️
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