表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
なのじゃ!!  作者: デト
第1章
18/53

またも突然に

 モンスター。


 この世界のモンスター達は、月光(ルナ)を浴び吸収することで、肉体を成長させる。

 皮膚や体毛が頑丈になったり、牙や爪が鋭くなったり、体格が大きくなったり。


 そして、ある一定の条件が揃うと『進化』もするのだ。


 ロンティナの森に現れたウッドゴーレム。

 このモンスターも、元は小さな植物型のモンスターが突然変異で進化し、現れた個体。


 これらの進化を危惧して。人々は例え、弱いモンスターでも討伐を惜しまない。


 突然変異の進化とは、1から2に成長するだけでなく。

 1から3、または1から10のように急成長を果たす場合もあるのだ。









 日に照らされた、魔界大陸ガルゾルート。

 第四天の魔王城、ミレシェルアは自分の部屋で眠りに就いていた。


 掛け布団は捲れ、パジャマ姿でだらしなく。

 普段おしゃれしている頭のリボンも外し、少女は幸せそうに大きなベッドに身を預けて熟睡する。


 ──ミレシェルアっ! 頼む、起きてくれっ!


「──んあ?」


 ──聴こえてる? お願いだっ!


「……なんじゃ? カリア殿ぉ」


 睡魔との戦いで開かぬ瞼を擦り、ミレシェルアは隣に置かれた首飾りを手に掴む。

 身に付けていなくても、鏡が近くに存在するなら小さな声が届くらしい。

 鏡に触れた事で先程より大きくなったカリアの声が、頭の中に直接送られた。


 ──モンスターの大群に、襲われているんだ! マカとアシュレイさんが戦っているけど。俺達を守りながら戦うには数が多くて、時間が掛かりそうなんだ。


 ロンティナを出発して1日目。

 今のクロスディア大陸は夜。つまりは、モンスターが暴走している時間帯だ。

 馬車の移動を止め、野宿の時だったのだろう。


「うぬぬ。……わかった。今から、そちらに向かおう」


 魔王ガルスとの約束は、クロスディア大陸が夜の間は魔界に戻る事。

 約束を破ってしまうが、今はカリア達が心配だ。


 首飾りを首に架け、パジャマ姿で素足のまま、鏡を握りムーンフォースを込めて念じる。









「なんじゃ……。これは」


 マカハーンとアシュレイの2人が居るのに自分を喚ぶ事から、余りよろしくない状況だとは思っていたけど。

 予想を遥かに越えたモンスターの大群が、ミレシェルアの乗る馬車を囲むように押し寄せている。


 前方でアシュレイが戦い、後方でカリアとフェツェルの2人を守りながらマカハーンがサポート。

 多くの死体が散らばる中、それでも尽きる事のないモンスター達が迫り来る。


「ミレアさん、2人をお願いしますわ!」


 白髪の少女が現れたのを確認して、マカハーンも群れの中に突撃していく。

 周囲を眺めれば、狼型のモンスターばかりだ。


 ロンティナの森は抜けたらしく、視界に広がる平原の多くが狼の群れで埋まっている。


 昔に討伐したロスターウルフェンとは違う。

 体長は更に小さく、体毛は夜の闇に紛れるような黒さ。


 この数。もしかすると、ロンティナの襲来より多いかもしれない。


「こんなの。あっしは今まで見たこともないっすよ」


 荷台で身体を丸めるようにさせ、頭を抱え怯えた様子のフェツェル。

 ガタガタと震えだす彼の言う通り、目の前の敵は今までどこに潜んでいたのか。そう聞きたくなる程の量。


 裸足で荷台を降りたので、地面がチクチクして痛い。

 ミレシェルアはそう思いながらナイトを発動させる。


 とりあえずは、馬車の前と横を包むように氷の壁で覆った。

 人に育てられたバイフォンは、野生で暮らすモンスターとは違い月光(ルナ)の影響で暴走はしない。


「こんな時。お、俺はどうすれば」


 荷台の後ろからカリアも降りてきて、ボロボロの剣を構えながら周りを見ている。


「そこにおるのが良かろう。──マカ殿、力を貯めるのじゃ!」


 所詮は数だけが多い、それだけだ。

 前方で戦う2人も、次から次へと敵を切り裂きながらナイトの能力で応戦していた。


 その数を減らす手伝いをしようと、ミレシェルアは上に向けた手の平の高度を徐々に挙げていく。


「──っ!? そう言う事ですわね!」


 最初は理由が分からなかったマカハーンも、周囲のモンスター達が地面から浮いていくのを眺め、『エレキネシス』を集中させた。


 ミレシェルアのナイトにより、月光(ルナ)の持つ重力を増幅させたのだ。

 前方で戦う2人を巻き込まないよう調整し、モンスターのみが順番に浮かび上がり、一点の場所に吸い込まれるように纏められていく。


 皆の見上げた先に、モンスターの塊で作られた球体が出来上がった。


「……凄い」


 カリアは見上げ、見続ける。

 マカハーンとアシュレイが下がるように跳躍したタイミングで、金髪の少女は雷を纏う剣を振り降ろした。


 瞬間。

 耳をつんざく轟音。吹き飛ばす衝撃。まばゆい閃光。焦げた臭い。


 塊を、雷が襲い。全てを焼き焦がしながら地面まで貫いた。


 その衝撃は凄まじく。大地すら抉り、重力から逃れたモンスターをも吹き飛ばす。


「半分は片付いたかしら」


 若干呼吸を乱し、マカハーンは周りを確認。

 やや前方の上空に焦げた塊がボロボロと崩れ落ちていくのと、範囲外で助かったモンスターの残りが窺える。


 皆に余裕が生まれた。


 数も減り、距離もある。

 最初は長期戦を覚悟したが、ミレシェルアのお蔭で短期戦で終わるだろう。


 気を持ち直し呼吸を整えたマカハーンは、残りの敵を駆逐しようと崩れ落ちる塊に背を向けた。


「マカッ! ──後ろだッ!」


 刹那。

 カリアの緊迫した声が、皆の耳に届く。


 ソレを。ソレが現れるのを観ていたのは、見上げ見続けたカリアのみ。


「んなっ!?」


 少年の声を聞き、次に確認したのはミレシェルアだった。

 咄嗟に腕を前に翳し、凍結を発動させる。


「──えっ?」


 マカハーンとアシュレイは、反応に遅れた。

 1人離れた所に立つアシュレイは問題ない。


 驚いたように声を漏らし、マカハーンは振り向く。











 モンスターの『進化』条件は、月光(ルナ)の蓄えと環境であった。


 元は同じモンスターでも。蓄えた月光(ルナ)の量と、環境によって『進化』する分岐が変わるらしい。


 今回襲いかかってきた狼型のモンスターは、ブラックウルフと呼ばれる弱い存在だ。

 普通に進化しても、ロスターウルフェンに変わる程度の弱いモンスター。












 金髪の少女が振り向いた視線の先。


 崩れゆく肉の塊から巨大な身体を現し、その大きな口を開いて飛び掛かってくる一匹。

 全身が膨れ上がる筋肉に包まれた、荒々しい真っ黒い見た目。


「──ヘルハウンドだとッ!?」


 遠くから信じられないと言った、アシュレイの言葉が響いた。


 馬車なんてひと飲み出来るような巨大なモンスター。

 ツヴァイドラゴンなんて相手にもならない程の、強き生き物。


 それほどの危険な存在が、よだれを垂らしながら口を開けてマカハーンに襲いかかる。


 少女の身体は動かなかった。

 突然の事だけなら、今までの経験を基に反応出来ただろう。

 今回の敵は、彼女からしても未知。

 純粋に恐怖で染められた体と心は、マカハーンの動きを阻害するのに十分過ぎた。


 ミレシェルアの凍結が敵を襲うが、勢いが止まる事もない。


 ただ呆然と立ち尽くす彼女の目の前に──


「──マカぁぁぁぁあッ!!」


 ──普段なら、何も出来ない少年が現れる。


 カリアが両腕を広げ、庇い立つようにマカハーンの前に駆けてきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ