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なのじゃ!!  作者: デト
第1章
17/53

四大貴族

「そういえば、儂。その四大貴族とか知らんのぅ」


 小さな手でコップを包むように持ったミレシェルアは、優雅に茶を口に注ぐ金髪の少女に尋ねる。

 四大貴族と言う言葉と、王都アルタイルの東西南北を守護する貴族と言う事は、これまで共に過ごしている間に聞いていた。


 マカハーンは静かにコップを置くと、考えるように人指し指を唇に当てる。


「四大貴族とは。他の貴族と違い、強さを証明出来た者がなれる貴族ですの」


 そこまで伝えた後、どう説明をしようか。

 彼女は悩みながら、口を開く。


「条件さえ整えば。その権力は、王族の血縁者である公爵家よりも上になりますわ」


 彼女が語るには、それぞれが守護する王都の地区内。

 西地区を守護するマカハーンの家。ウエスト・アンジェリーナ家の権力は、西地区に関わる事は公爵家よりも上になるとの事。

 それ以外なら公爵未満、侯爵以上の権力となるらしい。


「強さを証明出来るのなら、平民でも成り上がる事が可能なんだ」


 隣で話を聞いていたアシュレイが、椅子に背を預け話した。

 ミレシェルアはコップを机の上に置き、腕を組む。


「色々あるのじゃな。場所によって権力が上下したり、一般市民でも成り上がれるとは。問題に発展したりせんのかのぅ?」

「貴族だからこそ。その程度の事で、事を荒立てたりしないのさ。他の四大貴族に喧嘩を売るようなものだからね」


 脚を組み、黒髪の少女は茶を飲んで口を潤していく。


 他者が四大貴族に下克上を果たすのには、条件も存在した。

 四大貴族側は地位を賭け、挑戦者側は四大貴族側が望むモノを賭けるのだ。

 それらを国王の権威の下で取り決め、決闘が始まる。

 敗者は失い、勝者はどちらをも手に入れる。


 だからこそ、滅多な事がない限り決闘は起こらない。


「アシュレイ殿は強いけど。四大貴族を目指しておるのか?」


 頭を傾げ、可愛らしい仕草をしながら純粋な疑問を贈る。

 コップが唇に触れた状態のアシュレイは、予想外の問いだったらしく。面白可笑しそうに笑いながら否定した。


「そもそも僕。──ヴァレリアス家は元々、四大貴族の一角だったんだ」

「元々?」


 隣で心配そうに眺めるマカハーンに「大丈夫」と伝え。アシュレイはミレシェルアを眺めてくる。


「6年前に、僕以外の家族が亡くなったんだ。両親と兄の3人。兄を鍛える為に、外に出掛けてね。残ったのは財産のみ」

「その。……すまんのぅ」

「ふふふ。昔の事だからね、もう大丈夫だよ。それに僕としては、今の自由な生活の方が合っているみたい」


 ポーチからギルドカードを取りだし、金色に塗られたそれを見せびらかしてきた。

 当時は10歳にも満たない幼い時代。少女1人の生活は、大変だったに違いない。

 そこから鍛練も重ね、アシュレイはここまで強くなったのだ。


「悔しいですが。才能はアシュレイさんの方がありますわ」


 2人が本気で戦い合った事はない。

 しかし、マカハーンとアシュレイの実力には差が存在した。

 四大貴族、アンジェリーナ家の現当主に鍛えられた少女として、独学で強くなった同じ年の少女に負ける事は悔しかろう。


「のぅのぅ。ならカリア殿はどうなのじゃ?」


 次の疑問は、強さを求める銀髪の少年へ。

 ミレシェルアが聞き直した瞬間、部屋は静かになった。

 白髪の少女が2人を確認すると、困った表情をしている。

 あっ、しまった。と思うも、マカハーンが真剣な顔を向けて答えた。


「カリアが強くなろうとする理由は。多分ですが、私が原因ですの」

「マカ殿の?」

「……へぇ。面白そうな話だね」


 先程まで困っていたアシュレイは、表情を戻してマカハーンを見た。


「ずっと昔ですわ。まだ私とカリアが幼かった頃。その、こ、告白をしたことがありますの」


 顔を赤く染め上げ、金髪の少女は俯く。

 それを聞いたミレシェルアは、少し前のカリアを思い出した。

 王都アルタイルの林で会話をしていた時、焦がれた反応をしていた少年を。


 ──なんとなく予想はしておったが。……やはりか。


 恋話の予感は的中していた。

 どうもムーンフォースが扱える10歳になるずっと以前から、強くなって私を迎いに来てくださいね!と幼い子供ながらに約束をしていたらしい。


 アシュレイに至っては、ニコニコして面白そうに話を聞いていた。

 年頃の少女として、恋話を聞くのが楽しいのかもしれない。


「ですが、これは私の予想ですわ。実際にカリアが、覚えているかも分かりませんもの」

「なるほどね。まあ、僕は見守っているよ」


 カリアとマカハーンの過去は知らないが。

 ミレシェルアは、間違いなく2人が両思いなのだと理解できた。

 熱熱で、茶が沸くかと思った。危ない危ない。


 カリアを強くするつもりだが、今は変に伝えない方が良いだろう。

 儂もアシュレイ殿と同じく見守るかと心に決め。コップを持ち、茶を飲む。


 冷えていた。












 ギルドからの護衛依頼を受けて、10日以上が経過。


 護衛依頼の報酬として、20万ディアを貰い。

 初日のモンスター襲来から町を守った実績で100万ディアを獲得。

 学園側からの依頼も予想より節約が出来ており、50万ディアが残っていた。


 帰りでもお金は使用するが、ハプニングもあり金は貯まっている。


 ロンティナの長と共に居た。馬車の御者であるエルフ族のフェツェルと再会し、皆は王都アルタイルを目指して出発。


「結局俺は、何も出来なかった」


 バイフォンに引かれ、揺れる馬車の中。カリアは1人、落ち込むように座っていた。

 運び屋のカリアとしては、十分な働きをしただろう。

 彼が嘆いているのはモンスター討伐関連の事。また、何も出来なかった。


「落ち込むでない、カリア殿。強くなる事を目指すなら、前を向き生きるのじゃ」

「そうですわ、カリア。男なら男らしく、シャキッとしなさい」


 うじうじしていても何も変わらない。

 2人に言われ、少年は背筋を伸ばした。


「いやぁ。僕としては楽しい日々だったよ。実を言うと、こう複数人で依頼を受けたり、移動するのは殆どなくってね。僕なりに緊張していたんだ。ミレアちゃんにも会えたし、大満足!」


 確かに、笑顔を浮かべている彼女は満足そうにしている。


「私も、父や従者の方々と出掛けても。討伐以外の事は周りの方々が終わらせてしまうので、アシュレイさんに色々教えてもらえて良かったですわ」


 余分に討伐してしまったモンスターの後処理、簡単な料理、ギルドの依頼受注や依頼達成後の報告。

 四大貴族のお嬢様として育ったマカハーンとしては、初めて知る事が多く。

 けれど、アシュレイがゆっくり丁寧に教えていき。マカハーンの要領が良かった事と合わさって、直ぐ理解できた。


 食材を、剣で斬れば速いですわ!と、鞘から抜いた時は焦ったが。

 ミレシェルアとアシュレイの2人で止め、色々斬る剣では汚いと必死に説得もしていた。


「皆さん、楽しそうで良かったっす! あっしなんて、忙しい友人の手伝いで大変だったんですから。まあ、お礼は沢山頂けたっすけどね」


 モンスター襲来でロンティナの長は忙しく、折角遊びにきたフェツェルも手伝いでいっぱいだったらしい。

 馬車の荷台には、食べ物に紛れて木箱が積まれている。

 聞いたところ、中には甘味が入っているとか。エルフの彼は甘党だった。


「儂も、来て良かった」


 景色を観ていくだけでも楽しめた。

 驚愕し喜んだのは、見た目は変わったが前世の友に会えた事。

 そして、他の友との再会、その可能性がある。


 カリアを鍛える事が第一だけど、合間に調べる算段だ。


 アルタイル王国の王女、アクゼマーサを。


 相手は、一国の姫だ。苦心するだろう。

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