見送り
「「チャオ!」」
翌日の朝。
ベルニカ王国に帰還する、ティマシールとセシェリアの元に。
ミレシェルアは、見送りに来ていた。
周囲にはロンティナの長や、町の住民達が集まり。
昨日護ってくれたお礼を、感謝の気持ちを込めて渡している。
「のぅ、三竹。腹黒の逸瑠と居て、何も悪さをされとらんのか?」
内緒話風に、サイドテールの少女に近づき話す白髪の少女。
「既に何度か。逸瑠の魔の手に、巻き込まれているよ」
どこか遠くを見つめ、感傷に浸るようにセシェリアは語る。
それを眺めたミレシェルアは。「やはりな」と呟き、続けた。
「逸瑠のナイト、『エンジェルアーツ』だったかのぅ。透明ではなく半透明なのは、奴の腹黒の現れじゃな!」
「夜慈郎も思う? 実はミーも、そうだと思ってた」
2人でクスクスと笑い合う。
「黙って居れば。2人共、すべて丸聞こえですよ! ウチは優しさの塊なので、今回は見逃してやるですが。次に何かを言えば、『エンジェルアーツ』でお仕置きするです!」
ゴシック傘を朝から差し。片手を腰に当て、不満を含めた面で会話に加わるティマシール。
心外だと言わんばかりに、会話をしていた2人を眺め、ジトっとした目を向けていた。
「じゃあのぅ、三竹。帰りも気を付けるのじゃぞ」
「うん。夜慈郎も、怪我しないようにね」
そんな傘を差す少女を確認するや。ジト目を向けられた少女達は、互いに言葉を交える。
ティマシールは自身に指を差してキョロキョロと、交互に2人を観ていた。
「ウチにも言いやがれです!」
「「ハハハハハ」」
間を空けて、3人の笑い声が響いた。
ここまでの流れも懐かしかった。
「夜慈郎。コレを渡しておくです」
上に羽織る桃色の浴衣の内ポケットから、1枚の紙を取りだし。ティマシールはそれを、ミレシェルアに渡す。
何だろうと思い中身を覗けば、数字が2列書かれたメモであった。
「ミー達の、ルナフォンの番号だよ」
「いつか手に入れた時でも、連絡よこせです」
「そうじゃな。アルタイル王国の姫も調べねばならんし、楽しみにまっておれ」
そこで町の人々から頂いたお礼を仕舞い終わった、騎士の者が近づいてくる。
準備も終わり、出発するとの事。
「"調べ事"はついでで、旅行のつもりだったけど──」
「──夜慈郎にも会えた事ですし。来てよかったです」
双子姫はそう伝え、背中を向け馬車に歩きだした。
「儂もじゃ。もう会えぬと、思っておった。またのぅ」
「またね」
「またです」
優しい風が町に吹き、綺麗な白髪が流れを生む。
多くの騎士に囲まれた数台の馬車は動きだし、ロンティナの外へと向かいだす。
「またのぉー!」
久しぶりに再会した、前世の友と別れる。
町の人々と共に、ミレシェルアは相手が見えなくなるまで腕を振り続けた。
見送りも終わり。白髪の少女は1人、町を歩く。
カリアは朝の筋トレ中。マカハーンとアシュレイは宿屋で寛いでいるのだろう。
そんな時、町の子供達が集まってきた。
エルフ族ダークエルフ族と、人間族の子供達だ。
「昨日はありがとー!」
「モンスターさん怖かったのー」
「おねえちゃんすごかったよ!」
ミレシェルアに近い年頃の子供達。
ツヴァイドラゴンが飛んでいた場所の、近くに居た者や。その後の、双子姫と共に戦っていたのを見ていたらしい。
「ふふ。お礼を言われるのは照れるものじゃな」
王都アルタイルの商店街でもそうだった。
あの時は自分の勘違いで戦いに参加したのが遅れ。怪我人が出てしまったから、申し訳ない気持ちも有ったが。
こうやって子供達にお礼を言われ、嬉しい気持ちが生まれる。
「そうじゃのぅ。儂だけがお礼を言われるのも、勿体なかろう。ギルドに向かい、冒険者殿にも感謝の言葉を伝えようではないか」
「えー! でも、顔が怖いよ」
「ゴツいそうびを着ていてあぶないよ!」
ミレシェルアの提案に、子供達は不安な表情を浮かべていた。
「安心せい、儂も着いていこう。彼等は案外、優しい者達じゃよ」
優しく微笑み、子供達を連れてギルド支部に移動する。
ワイワイとはしゃぎながら、子供達はミレシェルアを囲み着いてきた。
少し歩き、目的地であるギルド支部に到着。
涼しい風が吹いているが、開いた両扉を通って中に入っていく。
中には、見た目の厳つい者達と、普通な者達で半々と言ったところ。
ヒャッハー的なモヒカン頭、バイキングみたいな被り物をする者、鎧に身を包む者達と色々存在した。
大人達は大勢の子供達が入ってきた事で、頭を傾げこちらを見ている。
「この子達が、皆に伝えたい事があるそうじゃ」
後ろに隠れている子供達を安心させるよう、優しく背中を押してあげた。
「あ、あの……。も、モンスターから町を護ってくれて、あ、ありがとー!」
「「ありがとう!!」」
覚悟を決めたのか。子供達がゾロゾロと身を乗り出し、大きな声で気持ちを伝える。
大人達は、まるで鳩が豆鉄砲を食らったようにアホ面を晒し。そして表情が和らぎ、口を大きく開いて笑いだした。
「ああ、任せろ! 俺達は冒険者だからな!」
「勿論だとも。オレ達が居れば、モンスターなんてヘッチャラよ!」
「勇気出したな君達。だったらワイ等も、それに応えて守り通してやるぜ!」
「感謝か。久しぶりに言われたさね」
「がはははは! 子供達の笑顔が守れてよかったぜよ」
皆が皆。頬を赤く染め上げ、照れているのを隠しながら豪快に反応を見せる。
この人達は昨日、ギルドから提出された護衛依頼を受けた者達だ。
依頼達成の報酬は、余り良い額とも言えないが。
それでも文句を溢さず、皆が受注していた。
その時は、ミレシェルア、ティマシール、セシェリアの3人も、感心して傍観した程。
ベルニカ王国の騎士達は、申し訳なさそうにしていたが。
そんな彼等にも笑顔で「気のすんな! 町は守ってみせる! また、何時でも遊びに来い!」と、伝えるのみ。
共にモンスターと戦い、友情が芽生えていたのかもしれない。
冒険者達の見た目による、子供達の誤解も解き。
ミレシェルアは、笑顔の皆と別れてギルド支部を出ていった。
更に、数日が経った頃。
カリアは町の人達と共に、バリケードの強化に取り掛かっていた。
戦力にはなれないから。今出来る事を手伝っているらしい。
「すまないな坊主。次はこっちを運んでくれるか」
「はい。俺に任せてください!」
荷物を運び、荷物を運び、荷物を運ぶ。
運び屋のカリアと呼ばれるように彼は成長していた。
マカハーンとアシュレイは町の護衛依頼も兼ねて、本来の依頼である森の安全確認を毎日している。
ウッドゴーレムの討伐は済んでいることを報告し、既に依頼達成の証はギルド側から貰っていた。
現在は、宿屋の部屋でミレシェルアを含め3人。
町の人から頂いたお茶を淹れ、のんびりと暮らしている。
「このようなお茶は初めて飲みましたが。美味しいですわね」
「少し苦味が有るけど。これはこれで風味があるよね」
「ふぅ。暖まるのぅ」
椅子に腰掛け、部屋の机を囲んでいた。
ここ数日は、モンスターに襲われる事もなく。
あの襲来が嘘だったかのように、周りの森も静かである。
たまに単体でモンスターが現れるものの、問題なく討伐して終わっていた。
「2人は強いのぅ。まだ若いのに、凄いのじゃ」
と語る、7歳の少女。
そんなミレシェルアに苦笑を浮かべ、マカハーンは語る。
「四大貴族の者として、鍛えられましたもの」




