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なのじゃ!!  作者: デト
第1章
11/53

親しみを込めて

「──っ!!」


 震える刃先と心の少年に、一匹の狼型モンスターが飛び掛かる。

 ロスターウルフェン。

 全身が逞しい人間の大人並みにある、渋い緑色の体毛を持つモンスター。

 鋭い爪と牙を剥き出しにして、それは、カリアを襲う。


「落ち着きなさい、カリア!」


 一歩も動けない銀髪の少年とは違い。

 マカハーンは、ムーンフォースを剣と身体に纏わせ。背中を向けるよう一瞬でカリアの目の前に立ったかと思えば、手に届く距離にまで迫るロスターウルフェンを縦に切り裂いていた。


 身体が動かなかった。いつも、そうだ。

 カリアをそう思い、恐怖で乱れた呼吸を整える。

 周りを眺めれば森の景色に、目の前の死体を含めて5匹のモンスターが倒れていた。


「怖いかのぅ? カリア殿」

「ごめん」


 今回の移動で初めての襲撃。

 バイフォンが反応した事で、不意を突かれる事態にはならなかった。

 カリアとフェツェル以外が臨戦態勢となり、現れたロスターウルフェンを片っ端から切り裂いていく。

 一匹だけ残してカリアを戦わせた瞬間、先程の状況となった。


「マカも、ありがとう」

「いえ、お気にせずとも構いません。汗も凄いですし、水でも飲んだほうが宜しいかと思いますわ」


 馬車に近付き、荷台に戻ろうとする。そこで乾いた音が響いた。

 そちらを向けば、アシュレイが手を叩き音を発した様子。


「時間も頃合いだろうから、ご飯にしようか。夜になると落ち着いて食事が出来るとも限らないんだ。モンスターの死体も、このままの状態で残すわけにはいかない。僕が後処理をしておくから、誰か料理をお願いできるかな?」


 そう話し。カリア、マカハーン、フェツェルの3人を眺める。

 けれど3人は、困った表情をしているだけで料理当番を名乗りでない。


「……丸焼きなら」

「……カリアに同じく」

「あっしは、炭しか残しませんっすよ?」


「……。」


 これにはアシュレイも瞬きをするだけで、言葉が出なかった。


「儂で良ければ、作れるのじゃ」


 後処理をした後に料理か。または、この3人に後処理を任せて僕が料理か。

 3人を眺め直すが、後処理の方法も知らないように伺える。

 呑気な顔をする彼等の頭の上に、「?」が見えそうだ。

 アシュレイが頭痛を起こしそうになった時、白髪の少女が手を挙げた。


「ミレシェルアちゃんは、料理が出来るの?」

「うむ。安心して任せるとよい」

「そっか。うん、ありがとう。後処理が終わったら僕も手伝うから、それまでは1人でよろしくね。……他の3人は、薪を集めて火の準備を頼むよ」


 安堵の息を漏らし、それぞれの役割作業に取り掛かる。

 戦力はアシュレイ、マカハーン、ミレシェルアの3人だ。

 カリアとフェツェルには護衛役も残さないとならず、マカハーンを付ける。

 これが終わったら皆に後処理の方法も教えないと。そう思考して、黒髪の少女は腕輪の鏡にムーンフォースを集中させた。









 少し馬車を引き、荷台ごと停まれそうな森の空間で支度を始める。

 薪拾いに向かうよう言われた3人も、テーブルやらの設置をしてから行動に移った。


「食材を見るに、シチューかのぅ?」


 小麦粉やらバター、ミルク。具材の野菜に、共に食すパン。

 買い物をしていた時はアシュレイが材料を選んでいた。

 1人で食材を確認していたミレシェルアは、確信を得ると調理を始める。

 人間の国の食文化に対する誤解は、既に解けている。


 少し時間が経ったところで、後処理を終えた少女が慌てたように近付いてきた。


「ごめんね、ミレシェルアちゃん。何を作るか言い忘れてた──あ、準備は終わっているようだね」


 後は火か。とアシュレイは呟き、安心した態度で椅子に腰掛けた。

 材料を切り終え火を待つ幼女は、隣に座り、語り掛ける。


「アシュレイ殿。儂をミレシェルアと呼ぶのも長かろう。親しみを込めて、ミレアと呼んでも大丈夫じゃぞ」


 腰に手を置き、足をブラブラさせながら話す。

 それを見ながら聞いていたアシュレイは、微笑んだ。


「うん、わかった。よろしくね。ミレアちゃん」

「うむっ!」


 しししっと笑い、雑談をしながら休憩。

 その後。火も獲得し、シチューが完成した。

 皆で食事をしている最中にも、アシュレイに言った事と同じように、ミレアと呼んでもよいぞ!と語る。


 シチューは美味しく頂き、片付けを終わらせて馬車を走らせた。

 それぞれが何となく決めている席に腰掛ける中、カリアの口が開く。


「アシュレイさんが優しくて助かったよ。ごめん、今まで偏見を持ってた」


 同じ班になってから、ずっと世話になりっぱなしだった。

 学園ではクラス合同による試合の時に、その強さを見せられた程度しか知らない。


「僕は別に、優しくはないさ」


 ただの、心の余裕、その表れだよ。そう返し、脚を組む。


「そうじゃ。アッカドで出会った、カリア殿を馬鹿にしてきた者は何だったのかのぅ」


 ミレシェルアは数時間前の事を思い出し、皆に尋ねる。

 カリアがハルシオンと呼んでいた、同じ学園の男子生徒。

 そこで、ルナフォンを眺めているマカハーンが手を止めた。


「彼は、ハルシオン・ベルガモット。アルタイル王国の侯爵家ですわ」

「ほう。あまり、貴族の爵位には詳しくないが。階級の高そうな家じゃな」


 そんな者が、何故他人を見下すのか。ミレシェルアの口から呟かれる。


「一応誤解を、お教えしときますわ。確かに普段からお優しい人と言う訳でもありませんのですが、彼はカリアにだけ突っ掛かってきますの」

「??」

「貴族の国だからね。彼なりの事情でもあるのだろう」


 余計に分からなくなったが。まあ、考えても仕方のない話、と言う事は理解する。

 話の途中でカリアを覗けば、指を絡めて静かにしていた。


 時間も遅くなってきた所で、ミレシェルアは魔界に帰っていく。


 クロスディア大陸に夜が訪れた事で馬車は停止し、一夜を迎える事にした。


 カリアが、アッカドの宿屋で食事をしてる時に取った決断は──


「俺は、強くなりたい。皆には迷惑を掛けるかもしれないけど、野宿の夜は共に戦わせて欲しい」


 ──との事。


 結局は、昼に襲ってきたモンスターにも恐怖し、戦えなかった。

 夜も寝ずに見張り役をしたが、モンスターが襲ってきても動けない。


 次の日の移動中もそうだった。


 夜になりかけた頃、目的地であるロンティナに到着した一行。

 雑に宿を借りて、汚れた身体を洗い、食事も取り、眠りに就く。


 ロンティナと呼ばれる町は、森に囲まれた所であった。


 木で作られた、頑丈そうな外壁に囲まれた町。

 広さもそれなりにあり、煉瓦で造られた建物や足場が特徴的な町。

 所々で緑も生い茂り、小川も流れている綺麗な景色の場所であった。


 夜も明け、朝食を終わらせた皆は。各自で装備の準備を整え、宿屋前に集まる。

 エルフのフェツェルはロンティナに暮らす知り合いに用があるらしく、1人宿屋に残り、もう少し時間が経ってから向かうとの事。


「まずは依頼を受けた報告として、ギルドに行こう」


 アシュレイの話を聞いて、皆が頷く。


「ほほおおお! 綺麗な場所に、初めて向かうギルド! 儂は楽しみで、心臓が速く脈打っておるのがわかるのぅ」


 ミレシェルアは興奮しながら周りを眺めていた。

 そうして、4人は町の中を歩いていき。宿屋を離れていく。

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