ルイとセイ。
「つまんなーい」
薄暗く、埃が積もった部屋の中。そこだけは拭われているらしい、古いが埃はない机に腰掛けた少女は面倒そうに呟いた。
肩口より少し長いセミロングの髪はスミレ色。癖のついた淡い紫の髪を揺らして彼女は伸びをした。
彼女は簡素な黒のワンピースを着ていて、まだ春だと言うのに惜しげも無く足を出していた。
少女の前には少女より少し背の高い、男がいた。少女より少し歳上に見える。
彼の方も同じくスミレ色の癖のある髪で、少女との血縁関係を匂わせていた。
二人とも生白い肌をしていて、目元だけは少女はつり目、男がたれ目で印象が違った。
彼女の目の前で埃も気にせず地べたに座り込んでいた彼はつまんないつまんないと首を振る少女をちらりと見て、けれどすぐ興味をそがれたように自分の手元に視線を戻した。
「ねえねえねえ!平気で無視するのやめてくれない?あたしが誰かわかってそういう行動に出てるわけ?」
「・・・・興味、ない」
「興味のあるなしじゃねぇってのよ!ばかにしないでよねっ」
ふーんと鼻を鳴らすと少女は偉そうに胸を張った。
「あたしはねっ!魔王になる女なんだから!」
胸を張ってポーズを決めたままチラリと男に目をやる少女。少女の視線を彼は冷めきった瞳を持って見返した。
「正しくは、違う」
「そういうこと言うのきんし〜〜っ!もーセイちゃんてばわかってないなあ!!」
「わかってないの、そっち。俺達、魔王じゃなくて、ただの研究者」
セイと呼ばれた男の冷たい言葉にもなんら堪えた様子もなく少女は大きやため息をついてみせた。
「あーあーあー、そうそう、その通りよ。けど魔王みたいじゃない?魔物に命令を聞かせられるなんて?その上あたし達の最終目標に向かって人をたくさん殺すことになるでしょ?」
「むしろ、魔王より、ただの人殺し」
「んーっもう、いや!あんたと会話すんの楽しくなーーい!!」
「無視、するな言ったのお前」
「うるさいなあ」
セイが面倒そうに見つめるのも全く意に介さず少女は机から届く窓枠に指を滑らせた。
「ここの埃、ほんとにすごいね。誰か掃除してくれないかなあ」
「気になるなら、すれば」
「ばかなの?したらここに人が来てるってバレるじゃない」
「それなら、その机の埃を拭いたお前って、馬鹿ってこと?」
「・・・はいはい!てかまだ来ないのかな、あたしら呼び出しといてホント適当よね、あの人も」
ちょっと拗ねたような声色でそう言うと少女は机の上に寝転んだ。
硬い机に少し不愉快そうにしながら目を閉じる。
「まあ、“伯爵”が来たら起こしてよ、セイ」
「・・・・わかった、ルイ」
それきり少女、ルイは返事もせずじっと体を休めた。
カーテンの隙間から少しだけ差し込む光が、部屋の中の埃と一緒に少女の髪をキラキラ輝かせていた。
セイはそれをじっと見つめてから、手の中の知恵の輪に目を落とした。
難解な知恵の輪。彼の足元には、解かれたそれがすでにいくつも散らばっていた。
セイには簡単だった。知恵の輪だって、この研究だって、なんでも。
けれど彼はただ一つ結論の出ない問題を心に、視線を彷徨わせた。
「ルイ・・・・・俺たち、こんな風に生きてて、いいのかな」
ほんのささやくような彼の台詞はルイには届かず、空気の中に消えていった。
新たなキャラクターです。




