リーシャ、似たもの同士。
「うらやまけしからーーーーん!!!!」
「うっわうるさ!」
防音魔法をかけていて良かった。相当な音量で叫んだ千草はなにやら唸っていた。
というか理由も原因も検討は着いているが。
「しかたないじゃない、私だってちょっとキュンとしたわよ」
「当たり前でしょ!あんなに可愛い弟がいるなんて!ああ〜っ私が生で聞きたかった!『すきじゃない?』なんて完全っに小悪魔じゃん!ショタの手管をどこで習ったのかしらあの子はっ」
すっかりショタコンでウィルコンと化した私の契約精霊は暫く喚いてから息をついた。
「ま、出てこれなかっただけでもうばっちりご主人を通して見てましたけど」
「じゃあいいじゃん」
「よくないっ!」
薮蛇だったらしく大きく吠えた千草にため息をついた。
どうどうと手で抑えてから、本題を切り出す。
「で、どう?」
「うん、昨日もご主人が寝てたあいだに話したりはなかったよ。精霊使いが荒いよね〜。本来水って集音は長けてないんだけど」
「ふうん。報告を先延ばしにする意味はないし、昨日から今のところもないなら暫くは黙っててくれるつもりなのかしら」
さあ、と首を傾げる千草を尻目に椅子に座り直した。
私がクークリオンに現時点で知らせた最大級の情報、時系魔法。昨日のあれからと、私が寝ている間、そして今にかけてフィデルや他の人間に話した形跡はなかった。
必要に迫られなければ沈黙を守ってくれるようだ。
「ご主人もでも、災難よね。昨日1日、萌えで終わりたかったでしょうに」
「そりゃあそうよ。あんなところで、あんなところで時間を無駄にしたから・・・・・っ」
「したから?」
目をぱちくりと瞬かせる千草の横でギリギリ歯を噛み締めた。
そう、私はとんでもない失態を犯した。
「私が戻った頃にはクークたんの使ってたカップ、洗われちゃってたのよ!!!!!」
「うわ、うっるさ」
心からの雄叫びをしょうもなさそうにしている千草は万死に値する。
いや、万死に値するのは私だ。折角の機会だったというのに・・・・・なんたる失態、なんたる損失!
「まあまた来たらでいいじゃん」
「よくないっ!」
どこかでしたやり取りを立場を変えて行って、私はため息をついた。
寄りにもよって昨日じゃなくて良かったのに、義母もタイミングが悪い。
「でもカップ収集は普通に気持ち悪いけど。この前間接キスしたので満足しときなよ」
「うううう〜〜わかってるけど諦めつかないの〜〜!!!」
ヲタク心は複雑である。
どんよりした気持ちで私はノートを手に取った。
いつぞやに纏めた林檎の王冠の詳細ノートだ。
思い出してはこまめに書き足していたそれをパラパラめくった。
スタンピードの所を再度見直そうと思ったのだ。
スタンピードが起こるのは今年の冬。詳しい日はわからないが、吹雪の次の日と言う描写があったため、吹雪いた日は身構えて置く必要があるだろう。
規模も大規模だったということしかわからない。
クークリオンの魔法生命を絶たれるこの事件を私はなんとしてもうまく乗り越える必要がある。
「冬までに私にできること・・・・・」
ペンをとって書き加える。
「まず、魔法の確認。ゲームでしか使ってない上級以上の攻撃魔法もどこかで試しておきたいわね」
「広い目立たない場所がいるよね、それ」
「ま、私の顔が割れなきゃとりあえずはそれでもいいけど」
国外かどこか、離れたところで行うものとするのが手っ取り早いだろう。
勿論人的被害が出ない程度の広さは必要だ。
「あとは・・・・・私に“殺し”が出来るかも確認した方がいいかな」
ごくんと唾を飲む。
できる・・・とは言いきれない。私は純日本人だった。目の前で悲惨な事故を見たとかいう経験もないし、殺生もせいぜいが魚類まで。意志を感じられるくらいの高等生物など以ての外で、そういう時どうなるのか、私は私の事を知らない。
いざと言う時躊躇って失敗しましたは許されない。
試す必要があった。
「人は無理にしても、知的にある程度高い魔物くらいはやってみるべきね」
お試しで殺せる人間はいないし、いたとして流石にそれを良しとするほど良心がないわけでもない。
ゴブリンだとか、喜怒哀楽が多少見られる魔物を殺すくらいが丁度いいだろう。
正直に気乗りはしないが、これもこれからこの世界で生きていくのに必要なことだろう。
「なによりクークたんのためになり得るもの」
「ご主人の行動理念はわかりやすくていいわね」
「当たり前!」
ふんすと拳を握ってみせると千草が笑った。
私もそれに笑い返すと、ノートを閉じた。
ブックマークが300を回りました!ええーなんかほんとに書き出した時には予想してなかった数字です。ありがたいありがたい。
ひとつのブックマーク、ひとつの評価の喜びって書き手に回るまで分かってなかったなあ・・・。




