リーシャ、作戦を練る。
クークたんがうちに来てから、早くも1週間が経過した。
1週間といえば7日もあるのだが、この時間に私ができたことは少ない。色々と手を打って行きたいことはあるのだが、今の環境では私が意見を言うことすら難しいのが現実だ。
「ふぅ」
出来ることから、と纏めた前世の記憶から作った林檎の王冠の詳細ノートを眺める。
クークたんのことは勿論、他の攻略対象やこの国についても覚えているだけ書いてみた。
まず、この国の名前はコローナ。どこかの国の言葉で王冠、という意味だったはずだ。
なんちゃって中世風な世界観で、モンスターと魔法がある。
通貨の単位はポウム。こちらはまたどこかの国の言葉で林檎の意味。運営に考える気が無いのを感じた。
次に人物。何を置いてもまずはクークたんだ。
名前はクークリオン・ハースベルト。
今は19歳で、私とは5つ違い。ハースベルト家はうちと同じ伯爵家だが、うちより力のある所でクークたんは去年から王宮で働いている。
ハースベルト伯爵様、現当主様の意向らしい。長男のクークたんは間違いなく跡継ぎだが、若いうちに色んな事を学ぶよう仰られたとか。
兄弟は弟と妹が1人ずつ。年が離れた妹にも怖がられているのが最近の悩みだとファンブックに書いてあるのを見て死ぬかと思った。
身長が186センチで目つきは鋭く、多分初心者は怖いと思うタイプの顔だが私にはそれがたまりませんありがとうございます。
自分が無愛想で顔が怖いのを分かっているがツンツンデレなので優しくしたり愛想を振りまいたりはできずにいる。
黒髪は肩にかかるくらいまで伸びていて、王宮で働いている時は後ろでひとつに括っていてそれがエロい。好き。
・・・・・、いつまでも語れるが次へ行こう。
攻略対象、その1。
第一王子、セルヒオ・コローナ。
伝統あるコローナ王家の次の王様候補で、腹黒系の優しい王子様だ。
王家の特徴と言っていい美しいプラチナブロンドに、金色の瞳。お顔は勿論超級で、優しい顔で時々いじわるを言うのが人気だった。
クークたんが王宮務めなので王族関係は散々攻略したので知識はバッチリ。好きな食べ物とか返答による好感度の差も分かっている。
実は王様になりたくなくて、世界を自由に見たいと考えている彼は、魔法学園で一緒にモンスターを倒しているだけで好感度が上がるのが楽でよろしかった。
けど、台詞から王になりたくないんだと思って最後に聞かれる、「僕は王にふさわしいかな」という選択肢にいいえを選ぶと即バッドエンドで初見殺しだった。夢はゆめ、現実はげんじつと考えられるスーパーマンなのだ。
攻略対象その2。
第二王子 エルネスト・コローナ。
同じく王家に生まれた次期王様候補のエルネスト。
出来のいい兄セルヒオに劣等感を抱いている。
王様になりたいと思って努力をするがなにをしても兄に負けてしまう彼を支えるのがこのルートの醍醐味だ。
色味はセルヒオと同じでプラチナブロンドに金色の瞳だが、あちらが甘い系優男顔だとしたら、エルネストは俺様系顔だ。
完璧な芸術品のようなお顔だが少しつり目がちで、笑うとえくぼが出来て可愛い。攻略対象としては1番好きだったキャラで、王位は結局兄に譲るのだが、ヒロインだけは譲れないと主張するシーンはものすごく人気があった。
彼は王になる努力をする中で我らがクークたんに教えを乞う場面もあり、クークたん出現率も1番高くて本当にありがたいキャラだった。
攻略対象、その3。
ウィルフレド・タルトジーク。
そう、タルトジーク。うちのタルトジーク家の長男、私の弟に当たるのが彼だ。
弟とは言ったが生まれは半年違うだけで同い年で、次期タルトジーク伯爵になる。
弟が攻略対象なのにこちらにはリーシャは全く登場しない。なんならゲーム内ではヒロインに兄弟の有無を尋ねられた時「ひとりっ子なので兄弟には憧れちゃいますね」と答えたりしている。
まあ正直、彼からしてみればほぼ関わりがない上に、母から散々私の悪口を聞かされ、家族とは言いがたかったのだろうが・・・・・。
ひとりっ子で甘やかされて育った彼はよくある弟属性で、ヒロインに甘えて可愛がられる。
ストロベリーブロンドがタルトジーク家の色で、そんな可愛い色が似合っちゃう彼だ。
瞳は私と一緒で緑がかった碧眼。これもタルトジークの色なのでリーシャはこの色が自慢だったのだ。
林檎の王冠では彼のルートを苺ルートと呼んでおり、名の通りあまあまな時間を過ごせる。攻略もさほど難しくなく、障害も少ない。あえて言うなら伯爵当主にウィルフレドとの婚約を拒まれ事件を経て許しを得るくらいしかないだろう。このルートではクークたんがあまりでないので1番攻略回数は少ない。
攻略対象、その4。
林檎の王冠最後の攻略対象、ハイムリズ・エンシーナ。
魔法学園の先生で、隣国エンシーナの王弟の1人に当たる。攻略対象の中でダントツの色気を持った大人の男性だ。
趣味が魔法研究で、今はコローナの魔法学園で教鞭を取りながら研究に勤しんでいる。
研究室の密室で進む話が多く、他のルートに比べてなんだか怪しい雰囲気が漂うことも多い。全年齢対象なのでなにということは起こらないのだが、妄想の余地ありと言ったところ。
この先生のルートへ行くには王家との繋がりが必要なのでセルヒオの友情エンドの選択肢で途中まで進める必要がある。
白銀の髪に赤い瞳で、ハッキリとした描写はないが室内でしか出会えないこともあってアルビノだろうと噂があったキャラだ。
眼鏡属性も抑えてある素敵な大人である。
と、4人の攻略対象と私の婚約者の説明を書き綴ったノートを捲る。まっさらなページに今度はペンをとった。
「これからすることは・・・・・まずは、手近なウィルから仲良くなっておければいいんだけど」
ウィルフレド、通称ウィル。勿論前世での呼び方で、こちらの私は本人と話すことすらほとんどなく、出会った時には「ウィルフレド様」とまるで召使いのようにへりくだって居た。
妾だった母は男爵家の娘で、行儀見習いにと伯爵家に来ていた時に伯爵・・・・・父に目を止めてもらったらしい。
母とは会話したこともなく、なんなら顔すらよく知らない上に父もまともに話してくれないので詳しいことは知らないが、父は妾のことを大切にしていたようだ。
今私がいる豪華なお部屋も母が使っていた所で、母が贈られていた為に少し流行遅れでもドレスや小物がある。
そして、母が愛されていたからこそ、義母は私が嫌いなんだろうと思う。
そんな義母の息子は殆ど関わりがなかったので、だからこそチャンスを感じるのだ。
「そう、1度でも私が母から聞いていたほど嫌な奴じゃないと思ってもらえたら・・・・・」
この広いお屋敷に味方がいないなんて動き辛いったらない。メイドと仲良くなるのも有りだけど、どれも父に報告が行く。
私を裏切らない仲間が必要だった。
ただし。
「報告がいくのは都合がいい時もあるわよね」
ニヤリとほくそ笑む。
見つからないようノートを母の衣装部屋に隠し、私はうきうきと部屋を後にした。
特に話をきっちり考えないまま書いてるのでこんな攻略対象で話が進むのか?進まないのか?




