リーシャ、生涯ロングヘアー。
真剣な表情で萎びた花を見つめるクークたんは私のこの魔法のことを知っていたようだ。よかった。
巻き戻し魔法なんて、殆ど使い手はいないので知らなければ説明から始めなければならなかった。勿論、彼に説明できるなんて光栄極まりないのも事実だったが。
ササッと防音にフィデルを交ぜてやって、私は笑った。
「今の情報はクーク様の一存でどなたにお話になっても構いませんわ。でも出来れば必要最低限として頂きたく思います」
「理由は聞くまでもないか。私預かりとさせてくれることを喜ぶべきだろうな」
「俺までほりだしてなんの話してたんですか、クークリオン様!貴様、余計な事をしたんじゃないだろうな!?」
やっぱりうるさい護衛だ。
また弾いてやろうかと思ったが、事情を知っているということからもクークたんのお気に入りとも思えるし・・・文句も飲み込んで、困った顔をして見せた。
「フィデル様、まさか。クーク様にお確かめ下さい。私の事をお知らせしただけに過ぎませんわ」
「なに!?クークリオン様、間違いありませんか」
勢いよく振り返ったフィデルにクークたんは頷いてみせた。
「ああ、間違いない。彼女自身のことで、我々にも必要な話をしていた」
この場でフィデルに話したりはしないらしい。
フィデルには本当に信頼を置いているわけではないのかしら?ここで言ってしまうのが秘密を守るなら一番伝えやすい場のはず。
それとも私の信頼を得るために私の目がないところで話をするつもりなのかしら。
私にはクークリオンにとってフィデルがどの程度の立ち位置にいるのかがとても重要な情報だったので様子を伺ってしまう。
ーーそれによって彼への態度が違ってきてしまうし。
ここで話さないなら暫く彼を盗視、いや、見守る必要がありそうだ。
「ありがとう存じます、クーク様。では、今お話したことを聞いてすぐにでも私になにかお手伝いできることはございますか?」
「いや、スタンピードもすぐさまと言う訳でもない。君の情報を持ち帰り検討したいと思う」
「かしこまりましたわ」
ペコ、とその場で頭を下げる。
頭を上げるとクークたんと目が合った。
「・・・・お前は・・・・変わったな」
「ええ、クーク様」
私は変わった。
クークリオンは心底不思議そうに、首を傾げた。
「リーシャ嬢、君への興味が湧いてくるようだ」
私は思わずまた立ち上がって、指を組んだ。
私を知りたいだなんてどこの乙女ゲームか!そう言えばこの世界林檎の王冠か!
「まあ、なんて光栄なことでしょう!知りたいだけ、知りたい内容をお知らせ致しますわ!!私もクーク様のことがもっと知りとう存じますの!」
捲し立ててしまうと、クークリオンはまた一等不思議そうにしてから、頷いた。
「・・・・・ああ、そうだな、知ってばかりでは不公平か?私のなにを知りたい」
「まあ!よろしいのですか?」
後ろで赤いのが「貴様余計なことを聞けばわかっているな!」とかなんとか言っているのは無視して、ほうと息をついた。
私、凛が前世でクークたんにもし会えたら聞きたいと思っていたことがずっとあったのだ。
「クークリオン様、女の子はロングヘアとショートヘアどっちがお好み?それと、私は女として何点でございましょう!気に入らないところがあればぜひ教えていただきたいですわっ」
はっきりバッチリ言い切って、あんぐりと顎が外れそうなフィデルにも笑いかけてやった。
クークリオンは少し黙って、もうひとつ首を傾げた。
この世界では乙女ゲーらしく髪型も自由自在。ショートヘアだってはしたなくはない。
うなじが見えたり谷間が見えたりははしたないと思われるクークリオンだが、髪型としてうなじが見えない程度ならショートヘアが好みだとか、何かあるかもしれない。
流石にファンブックにも好みの髪型までは書いてなかった。
前世はショートヘア、今世はロングヘア。
ショートヘアがお好みだと言えばすぐにでも髪を切るべく風魔法を準備して身構える。
ついでに私の今の全体的な容姿や話し方などで気に食わないところがあれば直したい。
ちょっぴりうるさい女の自覚はあった。
「・・・・・女性の髪型というなら、長い方が美しく映るように思う、が。特段気にしたことはないな」
「まあ、まあっ」
ロングヘア!今世の私、グッジョブ!!
思わず自分の面白みのないブロンドを撫でた。
「君の点数と言うと・・・・・私には数字に起こし難いな。魔法が上手いことから貴重な人材だと思う」
うんうん頷く。まったく色気のない返答だがらしくてそれもいい。好きだ。
「では、なにか気になるところは?」
「それも特には。あえて言うなら“今の”君の方が好ましく思うが」
「・・・・・っ」
私はぐっと拳を握り、唇を噛んだ。
あまりの威力に失神するかと思った。
クークたんが『好み』ですって!?聴きましたか皆さん!!
もう今死にたい。だめだ彼のそばにいると死期が乗り越えても乗り越えてもやってくる。
「ありがとう、ございますわ、クークリオン様。私、ほんとうにほんとうに、なんでも致します・・・・・っ」
不思議そうなクークたんと、未だに驚愕から抜け出せないフィデルをすっかり置き去りにして私は幸せを噛み締めた。
ブックマーク200超え・・・・・!?どうしよう!嬉しい!
そろそろ細かい人物の名前を忘れそうなので登場人物のページ足そうかなと思ったり。まとめるのをめんどくさがってます。




