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リーシャ、推しを招く。













「いらっしゃいませ、クークリオン様!」

「ああ、ありがとう」


満面の笑みで迎えた、今日のよき日。

クークたんが我が家へやってまいりました。


「とんでもございませんわ。今日も中庭で準備していますの」


私の推しがありがとうとか言ってる。録音機はどこだ!?

興奮する内心を押し隠し、中庭へ歩き出す。

前回も中庭だったが・・・・・どうしても、メイドが近付いてきにくい場所と言うと限られてしまうのだ。



ひらりとドレスの裾が舞う。

今日の私のコーデは母のものの中でも古いもの、アンティーク調のような、逆にあたらしいくらいのデザインのベージュカラーのドレスだ。

目立つ色ではないがその分繊細なレースがあしらわれていて、私的にとてもアリ。どのドレスにしてもそろそろ古そうな感じが否めないのだけが問題だ。

これはもしかして母様もその母様・・・・・お祖母様からいただいたものとかかもしれない。

祖母も亡くなっていて、会ったこともない私にはそのどちらのドレスでも大して差はないが。

髪飾りは白と黒のリボン。白はただの引き立て役で、黒いクークたんの色がよく映えた。


「どうぞおかけください」

「ああ」


中庭の椅子を勧め、私は茶器を載せたカートを引いてきたメイドからそれを貰う。

メイドはあからさまに鼻を鳴らすとスタスタ帰っていった。


一応、ギリギリ見えるところで立ち止まるとすまし顔をみせている。

私側に控える、というには距離を感じるが、今日はむしろありがたい距離感だ。


「クークリオン様。今日も私にお茶を入れさせて頂けますか?」


にこりと笑いかける。と、ブッと吹き出す声がした。

ちらりと目をやると、いつぞやの赤い護衛くんがいた。


「失礼」

「・・・・・、いいえ、構いませんわ。クークリオン様、構いませんこと?」

「・・・ああ、頂こう」


震え声で謝ってくるが全く失礼そうでない。

思わず睨みそうになって、けれどクークたんが見ていることを思い出して笑って許した。

クークリオンもどこか笑いそうな顔をしていて、こちらには苛立ちどころか感動すら覚えて見つめた。

笑うと言うには表情の変化は薄い。けれど少し細まった目は面白そうな色を宿していて、絵画かなにかに仕上げるべきだと思った。

そういうわけにはいかないのでこの眼で充分に見つめてから、お茶に向き直った。


茶葉の缶を開けて、中を見る。


「・・・・・」


飲めないほどではないが、少し湿った茶葉と目が合った。

ちょっと顔を顰めてしまってから、ふと息を吐く。

他ならないクークリオン様には同情以外から愛を向けられたいという偉そうな望みの為にすぐ微笑みを貼り付けた。


わからないよう鑑定。ただ単に古くなって少ししけっているだけだと確認して、巻き戻し魔法でちょちょいと元々の乾燥していた所まで戻した。

巻き戻し魔法は物凄く高度なものなのでこんなところで使っているのを誰かに見られた場合様々な問題が出てくるがーー私のクークたんに湿気った茶葉のお茶を出すわけには行かない。


無事乾燥した茶葉でお茶を入れ、机まで運ぶ。

なんのリアクションもない赤護衛やクークたんを見るに魔法は勘づかれなかったようだった。


「どうぞ、クークた、クークリオン様」

「ああ・・・そういえば前もそんなことを言っていたな」

「そんな?」


「クーク、だったか?」

「・・・ぅ」


私も椅子に着いて、首を傾げると爆弾が落ちてきた。

自分でクークとか言っちゃう。クークとか言っちゃう。クークとか言っちゃう。

私の記憶力よ唸れ。どうして録音録画が出来ないのか?いやまて。魔石に魔法付与すればあるいは?

頭の中でゲーム知識とこちらで学んだ魔法知識を総動員していると、動揺しているように見えたのかクークリオンが片眉を上げてみせた。


「っええ、その節は申し訳ありませんでした」


ハッとして返事をする。


「・・・・・いや、構わない。クークと呼びたければそれでもいいが?」

「しょっ、そ、そんな!いいんですか!く、クーク様!!!」


思わず噛んだ。

ここは淑女然とするなら『そんな、とんでもございません。クークリオン様』とかなんとか辞退する方がいいだろうとは思う。

しかし、私にクークたんを愛称で呼ぶ栄光を賜る機会を蹴るような真似をする程の理性はなかった。


私が目を輝かせると、今度こそクークたんは淡く微笑んだ。

目が潰れるかと思った。

瞬きも出来ずに見つめていると、すっと真顔に戻ってしまった。ああ、なんてことだ。太陽が隠れてしまった。


「リオンと呼ばれることはあっても、クークは今まで誰にも呼ばれたこともなかった。愛称のセンスはなさそうだな?タルトジーク嬢」

「あ、あ、あの。クーク様。もし良ければ私のことも、リーシャと」


クークリオンらしい素直ではない言い回しに、つい更に欲が零れた。

クークたんは少し考えてから、頷いた。


「そういえば、お前はずっと名前で呼んでいたが私は家名だったな。リーシャ嬢」

「は、はう・・・・・」


名前を呼ばれて言葉を忘れた。

りん。凛と呼ばれたい欲望が喉まででかかったがなんとか飲み込んだ。


私の入れた紅茶に口をつけるクークたんは私を名前で呼んだことも大して何とも感じていない様子だ。

こんなに幸福なのは私だけ。私ばかり幸せでいいんだろうか。



ふわふわした気持ちでクークリオンを見詰めていると、先程の暖かい表情からはすっかり冷めてしまった瞳がこちらを向いた。



「さて、リーシャ嬢。今日は君に話があってきた」

「あ、はい」




なんとかお空の上にいた気持ちを引っ張ってきて頷く。

深呼吸をひとつして、姿勢を正すとクークたんと向き合った。

ブックマークが増えてくのを見るのが趣味です。ありがとうございます。投稿してブクマや評価頂いてレベルあがってそう。忍者忍者

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