クークリオン、敬礼する。
ききききいてください。ブックマークが100回りましたびっくりした。え、まじか。本当にありがとうございますおまいらだいすきだ!!!!!
(クークリオン視点)
「魔物の増加は確認もとれました。今までの資料から察するにスタンピードが起こり得るだけの増殖と言えます。王宮部隊にも声を掛け、見回りや間引きを行うべきでしょう」
「・・・・・とは言うけどねぇ。若い君らには分からないかもしれないけど、我々の立場からしても貴族街や王族にハッキリと害があると分かるまでは冒険者ギルドに声をかけるくらいしかできないのだよ」
わかり易く肩を竦めて見せたフォンシエ様。俺としては全く不服な返答だったが、俺が直訴できる最高位の方はこの人だ。
宰相をなさっているサウロ様の補佐をされているのがこのフォンシエだった。
フォンシエ様には気に入っていただいており、俺が所属している防衛省とはさほど関わりもない立ち位置でもこうして面会することが許されている。
「フォンシエ様。スタンピードが起こってからでは多くの死傷者が出ることは間違いありません。少しでも手を打つことが重要と考えます。」
「君の言いたいことは分かるよ、クークリオン。けれどね、それって100%じゃないでしょ。違った時に余計なところへ税を使ったと言われるのは僕らなの、それもわかるよね」
「それは・・・・・」
防衛省で言った時と同じことを伝えられた。
やはり、確証なく動くわけにはいかないようだ。
けれど。60年前や95年前の猛烈な災害となったスタンピードと同じ程度には魔物が増えている。
このままでは恐ろしい結果がやってくる可能性が十分にあった。
スタンピード自体は数年に1度起こっており、十分ギルドで対応可能なものばかり。前回の大規模なそれから時間が開きすぎているのが問題だった。
「・・・・・では、せめて可能性だけでも示し、避難経路や軍配置を文面化させて頂きたく思います」
「ふぅむ」
フォンシエ様は顎を触って、黙り込んだ。
フォンシエ様にも俺の言うことが一理あることはわかっておられるはずだ。
ーーただ、行動を起こすには理由が弱いだけで。
「あのねえ、君。とりあえずそれが防衛省所属でも行き過ぎた仕事をしようとしてるのはわかってるわけだよね?」
「はい、勿論。ですが目に付いた以上確認をせねばならず、確認した結果放置するには問題が多いと判断しました」
「クークリオンのところの大臣も駄目だと言ったから僕のところに来てるわけでしょ、結構無茶だよ」
「それも重々承知しています」
「なるほど、それでもというわけね」
少し考え込んで、俺がじっと待っているのを見て、フォンシエ様が折れた。
「文書は出来次第君の上官ではなく僕に持ってきなさい。問題なければ僕から防衛大臣とサウロ様に話を通すよ」
「はっ!ありがとうございます、フォンシエ様!」
踵を打ってから手を胸へ。形式に乗っ取った敬礼を行うと、同じように返される。
当たり前のように行われた敬礼に敬礼を返すこれが、上役によっては頷きだけだったり、下手したら無視されたりする。ここで敬礼が帰ってくることからも、俺はフォンシエ様を尊敬していた。
フォンシエ様の執務室を辞して、廊下を防衛省執務室のある方へ進む。
期待していたものにごく近い結果を得られた。
後は、今伝えたものを早々に文書に起こすことと・・・・・
「でき得るならば、戦力の確保か・・・・・」
ある程度大きな被害がでる大規模なスタンピードであることは予想できるが、詳細にどのようなスタンピードが起きるかまで把握はできない。
そうなれば備えをしておいて間違いはない。
王宮部隊へは文書が出来てから、冒険者ギルドへも早々に話を通して、と頭の中で整理をつける。
ふと、足が止まる。
戦力となり得る人物に心当たりを覚えたからだ。
リーシャ・タルトジーク嬢。
華奢で内気で静かな女性、だった。
タルトジークの中で身の狭い思いをしていることは承知しているが、つい最近まで興味どころか、若干の嫌悪感すらあった相手だ。
タルトジーク伯爵にちょっとした領地の問題を解決するのに手を貸したからと恩を擦り付けられて、婚約者まで押し付けられた。
そうしてできた婚約者が彼女だった。
物静かでも彼女の目はいつも俺に助けを求めていた。哀れみを求め、けれど手を伸ばすことすらしない。
その上社交性もなく、目を引く美貌もない。
自分の父親に言われるがままに俺の元へ来ては大してうまくもないおべっかを言うだけの女。
衣食住を満足に与えられていた彼女を助ける気にはならなかった。
だが、彼女は変わった。
俺が知る限りはひと月と少し前の、お茶会からだ。
俺に歌うように愛を伝え、笑う。これまでほとんど来たことがなかった手紙が3日に1度届くようになり、その中身も同じような内容だ。
「クークリオン様」
呼ぶ声が、態度が。今までの鬱々とした雰囲気とは正反対の明るいものとなり、会話も増えた。
今まできにしたこともなかった俺の好みの紅茶を用意し、俺がなにか言えば怯んでいたくせに、なんでもないように笑って言葉が返ってくる。
最初はそれが気味悪く、距離をおこうとした。だが。
「心から、お慕いしております」
「あなたしかいない」
態度で、言葉で、手紙で。
様々な方法で、言い方で愛を言い募り、挙句の果てに前回のあのカップ。入れ替えて間接的に口付けのようなものを得ようとしたらしかったが、理由も、手法も考えも恐ろしく馬鹿げていた。
俺を騙すにしてはお粗末に過ぎた。
そこまでずっと疑っていた気持ちがどこかへ行って以来、俺はあの奇妙になった婚約者への興味が湧いてきていた。
そこへ、今回のスタンピード。
彼女の魔法のレベルも確認しておきたかったところでもあるし、殆どなくなったが実家からの指示なのかも実にわかりやすい最終判断材料だと言えた。
伯爵が娘に戦場に行けというわけが無い。それは娘の命が惜しいからではない。
令嬢として、実に非常識で、問題がある行動だからだ。
顔に傷でもつけば俺との婚約も破棄まっしぐらであるし、そうなればほかの相手も見つかりにくい。
あの娘を駒扱いしている伯爵だからこそ、そんな指示は出さないはずだ。
「タルトジーク嬢が頷けば、ほぼ彼女の意思ということになる」
彼女が頷けば、俺の味方と考えてほぼ問題ないはずだ。
そうして彼女を味方とした後どうするかまで考えは及ばなかった。
クークリオン視点って楽しかった!




