リーシャ、確認する。
「お前も気をつけろよ、リン」
「やっぱり魔物、増えてるんだね」
私は、冒険者ギルドからすぐの大衆食堂に居た。
目の前にはアリエルちゃん。
彼を呼び出して魔物の様子を確認してみたが、やはりゲーム通り魔物の増加が見られたようだ。
「気をつけろとか言ったがお前にはいらない心配だったか?」
「うっわ、馬鹿にしてるでしょ」
「いーやあ?どっかの魔力馬鹿を讃えてるだけよ」
ニヤリと笑ってみせるアリエルちゃん。意地悪そうな表情が実に可愛い。
くすくす笑いあって、息をつく。
ーー友達って感じ。
あれから何度か会ったが、アリエルちゃんとはいい友人関係を構築できていた。
アリエルは治癒から少しはどこか気後れしていた様子だったが、今ではそれをいじってくるほどだ。
「しかしまたなんで魔物の動きだ?お前らお貴族様にはたいした関わりねぇだろ」
「うーーん、直接私にはなくても、他は無くはないから気にしてるんだけどさあ」
ぼかした答えにもさほど突っ込んだ質問をせず頷いてくれるアリエルちゃんに感謝。
けれど、なんとなく黙っている罪悪感も抱きつつある今日この頃である。
ーーなんてったって、どうしても黙ってないといけない理由なんてないし。
「魔物の増加、実際どの程度の危険度なの?」
「・・・一概にはなんとも。ま、死人も増えてギルドもいい加減動き出すらしい。そうなりゃ直に落ち着くだろうよ」
「ん、うん。そうだといいね」
頷いては見せるがそう上手く進まないだろう事を私は知ってる。それもゲーム中でサラリと触られた過去の話でどのくらい冒険者に死者があがったかなんて私には想像もできない。
クークリオンを守ることは、きっと容易いけど。
どの程度被害が抑えられるかなんて私にはわからない。スタンピードまでに死ぬ人数を減らすことも難しいだろう。
無理ではない。だが、そうするリスクは高い。ここの普通の人間には出来ないことだろうし、私が露見するリスクも高まるし、なにより私は一人だ。使える手の数も限りがあった。
それに。と目を細めた。
私は私が興味無い人間が何人死んでもきっとさほどの何かを抱いたりはしない。
ニュースで見かけた遠い国の戦争のように、どこかの災害でなくなった方の人数を知った時のように、倫理観に乗っ取って悲しい顔をしてみるが、そんなもの、なんでもないメールや天気なんかで霧散してしまうほど薄っぺらい感情だ。
「そうだなあ。アリエルちゃん」
「だから、ちゃん付けはやめろっつってんだろ・・・・・」
嫌そうに顔を顰めてみせた彼は、彼が死ねば?
きっと私は悲しいし辛いだろうから。
「はい、あげる。肌身離さず私と思って大切にしてね」
「は?シンプルに気色わりぃこというなよ・・・・・って、なんだこれ?」
「お守り!」
そっと差し出した手の中にあるのは、ちょうど持っていたハンカチ。
なんでもないその布切れに簡単に防御魔法と危険通達の為のアラームのような魔法を付けてみた。
これでいざと言う時彼を守れるし、私もピンチに気づけるという寸法だ。
私は自分に大層甘い。私は私が傷つくのを避けるためにも、お気に入りの友人を守るためにもこんなことを簡単にする。
このハンカチを町中にばら撒くことだって容易いが、それはしない。
そういう人間だから、私なんだなあ、と諦めと、自己肯定の相反する感情を抱く。
こんな私が好きで、大概最低だから。
「・・・・・ははん、これ、まさかとは思うが相当高値で売れるんじゃね」
「最低だ!売ったら絶交だ!」
「ははは!嘘だよ」
屈託なく笑う笑顔が眩しい。
「どうも、有難くもらっとく」
「うん、大事にしなさいね」
にっこり笑いかけ、メニュー表を睨んだ。
お互いが席に座った途端に魔物の話をしだしたのは私。結果、まだ注文すらしていない。
それをよしとしてくれる素敵な食堂だった。
「よし、何か食べよっか」
「ここは肉だ、肉がいい」
「お肉?私パスタな気分〜」
私のゲーム知識はあっていた。あとは、これをどこまで思いつく理想の結果に置き換えるか。
ゲームの強制力なんかがあるのかすらわからないし、強制力がないとして私にそれをなしきれるかもわからない。
でも、だからきっと守るし、助ける。何にも屈せず推しを推して行かねば私ではない。
そうして、こんなモブのアリエルだって。
「なに1人でニヤニヤしてんだよ」
「ええ?決意的な〜。モブ1人助けられなくて、本命を推せるわけもないって言うか!」
「は?」
わけわからん、とため息をつくアリエルちゃんも可愛いな、と思いながら私はピシッと手を挙げ、目星をつけていた可愛いウェイトレスを呼んだ。
かっこいいも、可愛いも正義だよね!
イケメン美人美少女ショタ、なんでも整ってりゃそれなりに好きです。




