リーシャ、期待する。
「う〜ん・・・・・」
私は頭を悩ませていた。
クークたんから連絡がないことに悩んでいた。
シンプルに会いたいのも勿論、わざわざ私がこの前に魔法を見せつけたこともあっての事だった。
ちなみに間接キスに関してはもう何という話はない。私はやりきったのだ。
クークリオンからもその後もお咎めはないし、なんなら好きですアピールとして有効だったようにも思えたから。
・・・・・多分、話を蒸し返して彼の家のあの赤護衛くんの無礼にお咎めが行くのが嫌なだけな気はするけど。
「そろそろ、『あれ』のはずよね」
ゲーム開始前の事件がいくつか、ゲーム中に語られる。
それのうち、ひとつが起こる日が近いのだ。
私の計算では、そろそろその予兆にクークたんは気付いているはずで、だとしたら私を使わない手はない、と思うのだ。
あれ。そう、クークリオンが死亡フラグを立てる一番のきっかけ。これさえクリアしてしまえば死亡フラグの殆どは消えると言えた。
ーースタンピード。
小説なんかでよく耳にした、魔物の大群が押し寄せるあれである。
それが、今年の冬にやってくる。
原作では小規模な村や街で壊滅状態になった所もあるほどの大きなスタンピードだ。
今はまだ春ではあるが、確かその年に入った頃から魔物の動きが活発になり、増殖も見られていたはずだ。
そして、春には王宮内では『スタンピードでは?』という意見が出ていて、それの発言者がクークリオンなのだ。
つまるところ、クークたんはそろそろスタンピードに気がついている頃。
原作では王宮舞台と共にスタンピードに立ち向かったクークリオンは無理な魔法を使い続けて魔力機関を損傷。
それ以降小規模な魔法しか使えなくなるのだ。
が、故にちゃちな死亡フラグ、簡単なきっかけで彼は死にまくってしまうのだ。
クークリオンは特に防御魔法が得意で、王都に攻めいろうとする魔物を1匹も中に入れなかった。しかしあまりに長時間、大規模な魔法を使用した彼の体はヒビが入ってしまう。
「私なら、クークたんの負担をずっと減らせる」
それどころかなんなら役割全てを補ってあまりあるし、そうそうに魔物を一掃することも可能だ。
私にならできる。けれど、全力で戦うのはクークたんの見せ場を奪うし、クークたんが防衛戦以降王宮で一目置かれるようになるという流れも無視したくはない。
となれば、私がすべきはクークたんの負担を軽減させ、見せ場は作れる程度に魔物を狩ること。また、もしクークたんの体に異常が出たら治癒すること。
ただし魔法機関は私からしても治癒はとても難しい場所だ。完全に治せる確証もないし、できるだけは魔物を減らす方向で対処したい。
「その為にも、早い目に私を使う選択肢をとって欲しいんだけどなあ」
呼ばれなくても行くが、こっそり戦うのと、クークたんに願われて戦うのではモチベーションも、戦い方も違ってくる。
きっと声を掛けられただけで私は本物のチート主人公になれるし、隠れて戦うのは、まあ無理ではないなりに色々と制限が掛かってくる。
「呼ばれなかったら、“凛”として行くしかないかなあ?」
首をかしげた。
凛として出てしまえばこれはこれで“凛”の使い道が今後限られてくるかもしれない。
クークたん、私が必要だって言ってくれないかしら。
頼むとしたらどういう風に言ってくるのかな。素直じゃないけど、誠実だからな。ここは頭を下げてくるのか、それとも偉そうに指示するのか。
きっとヒロインになら、戦地に連れ出すことに罪悪感を抱えて辛そうにしながら頼むのだろう。
どんな言い方でも、どんな言葉でもいい。私を望んでくれたら。
・・・・・そうしたら、なんだってするのに。
「まあ勿論、呼ばれなくても行くけど!」
でもま、と目を細める。
期待するのはタダですから、とクークたんからのお手紙を心待ちにして、私は笑った。
短くなってしまいましたがリーシャらしい文になって私は満足。




