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もしも人間が魔王になったら  作者: キバごん
異世界炎龍編
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第八十二話 意味がわからない時はしっかり挙手して質問しろ

「なんか今切った魚から人が出てきたんですけど」


「マジでか」


バルが倒れた巨大魚の前に座り指をさす。

そこには本当に人が倒れていた。


おかっぱ頭の男性だーーーーー顔からして30代半ばくらいだろうか。

魚の出血により大部分が血で赤く染まっている。

丸呑みにされたのだろう、傷らしい傷は見当たらない。


「……ぁ……ぁぁ……」


すると小さく、微小に声を発した。

意識が朦朧としているのか、はたまた偶然に声が漏れただけなのかわからないーーーー

そうであっても声を出したということは生きている可能性が高い……シウニーは近寄って呼びかけようとするーーー


「死んでるっぽいからこいつ餌にして進もうぜ」


だが海斗は冷静沈着に、手を顎にそえてそう言った。


「いや今、ぁ……ぁぁ、とか言ってませんでしたか!? 完璧息ありそうなんですけど!」


「生物は死んだ後、肺に残ってる空気が体重により押し出され声帯を震わすことがあるという……それだろ」


「手もピクピク動いてるんですけど! 生きてますよ! 早く助けましょ!」


「死後痙攣だろ、大丈夫、死んでる」


「んなわけないでしょう! 大丈夫ですか!? どこか痛いところは!?」


シウニーは海斗の言葉を切り捨てて男性の元へと駆け寄った。

60cm程度離れたところでしゃがみ、意識を戻すために呼びかけを行ったのだ。

すると、その懸命な呼びかけにより男性は少しずつ目を開き始めーーーーそれはシウニーを捉えた。



「……ぁ、ぅ……ぼ……僕は……死んだのですか……?」



言葉は言えるにしてもやはり気が動転している模様ーーーー

魚に飲み込まれる経験をしたのだ、それは致し方なし。

ただ死んでいないと伝えるだけなのだが……


「はい、死にましたーーーーこれから天界の怪獣の餌にされるところです」


またもや海斗は変なことを言った。


「ちょっ黙っててください! 口チャック!!……痛いところはありませんか、立てますか?」


「な、なんとか……」


今度も彼女は抑制した。

男性の腕を持ち立たせるーーーーー



「あの……本当に僕は死んだのでしょうか……」


「いえ、死んでませんよーーーーなんとか助かりました」



やっと死んでいないことを伝えられた。

それにより心なしか男性の顔が落ち着いたように思えた。

よかった、それが胸に浮かびあがってくるーーーーが



「ていうか死なないでくださいね、天使の仕事増えるんで」


花音がとんでもないことを言い出した。

天使から出たとは思えない言葉ーーーーやばい、この人やばい。

改めて思った。


「そこは同感ですね……天国に送らなければいけない仕事が増えるんですよ、私も天界にいた時めんどくさかったんで死なないでくださいます?」


続けてルシファー。

二人とも男性の容体に無関心な顔を作り言い放った。


「天使酷すぎるよ! 悪魔的な辛辣さだよ!」

「大丈夫ですからね! あなたは死んでませんよ! ちゃんと生きてますよ!」


死んだら、の意味ですから! 死んだらめんどくさいっていう意味ですから!

慌ててフォローを入れるシウニー。


気分が沈んだかと心配する彼女に反し、フォローで立て直した男性。


「あぁ……どうやらそのようですね……普段見ている光景そのものです……」


ホッと胸をなでおろす。

何事にも受け皿の役割を強いられてしまう彼女の心労がマッハ。


「しかし……! 不覚! あのような怪物に遅れをとるとは……!!」


だが男性は、先ほどからの弱々しい顔を変えた。

それはますます怒りに染まっていったのだ。

崖を殴る、ついに体も怒りを表現する始末ーーーーー


「ど、どういうことですか……?」


「いえ……なんでも」


全員が疑問を持った。

まだ恐怖に怯えているーーーならわかるが、復活早々怒りを出すとは……その理由を聞いてもはぐらかされてしまった。

なんなのかわからずじまい……しかしその刹那、男性はハッとしーーー


「すいません申し遅れました、私はこの海の平和を守る男、吉和よしかずカッパと申します」


ーーー名前を言った。

……でも……その名前が……


「……カッパ……?」



カッパだった。

カッパってなんだよ……名前……名前なの? 名前ですら怪しいんだけど。

っていうか吉和……? 名前のあとに名前がきてるよ。


言いたい……そう言いたい。

だがぐっと堪えたーーーなぜならシウニーがジトーっとこちらを見ているからだ。

何を思っているのかわかっているのだろう。



「お前全然カッパらしくないじゃん、頭に皿のってないし」


だから違う事を聞いた。

名前を聞いて尋ねたい事No.2だ。


確かに海斗の言う通り、全く人間らしくない。

どこからどう見ても人間そのものーーーとてもカッパらしくないのだ。


「これは、今カツラをかぶってるから皿が見えないだけです………ほら」


だが吉和は的確な答えを持ってきた。

髪を引っ張ると皿が顔を出したーーーーー驚き。


「本当だ……皿がのってる」


「私はよく陸に上がるので、人間の格好をしているんですよ」

「ーーーしかしこんなことはどうでもいいんです、私はあの浮上してきた海中都市に行かなければ」


「吉和さんはあれが何なのか知ってるんですか?」


「はい、もちろんーーー」


海斗達がずっと知りたかった事を知っているのだという。

それを吉和は語り始めた。


「あれは魔界の海の奥深くに存在する要塞ーーーーー魔璃死天まりしてん業塊ぎょうかい

「本来、業塊は魔界の海の秩序を守るために作られたものです」


「業塊……聞いたことがあります、我が国から1000km離れた海の底に建てられているとか……」


「でもぉ、何故人間界にぃ?」


名称を聞き、記憶がバルの頭に映し出される。

だが魔界にあるものがどうして人間界に現れたのか……?

その事も吉和の頭に入っていてーーー


「業塊の当主ーーーー蝦夷えみしがその原因です」

「奴は、5年かけて業塊を人間界に転移させましたーーーーーそれと同時に魔界の海に生息する化け物も一緒に」

「しかし、どのような意図で行動したのかわかりません……僕が考えるに人間界の海も、魔界のそれのようにしたかったのだと思います」


そんな奴が企てを……

ある程度は納得できた海斗達。


「ーーーそうか……ならなんにせよ早く行ってどうにかしねえと……」


「でもどうやって? 化け物がウジャウジャいるし、手段が……まぁ私は海斗を担いで飛んでもいいんだけど?」


「それでは化け物からも要塞からも見られてしまいます、もっと違う方法が……」


これからしなくてはならない事は、再び認識できた。

だとしても、彼らに良い手段はなかったのだ。

すると吉和が声を上げた。


「それについては何も問題はありません、僕の隠れ基地が近くにありますーーーーそこに手段が存在します」




ーーーーーーーーーーー


ーーーーーーー


ーーー




案内されるがままについていく海斗達ーーー

崖下から、海岸沿いに歩いて木が少し生い茂る場所まで歩いた。

その森の出来損ないの中に、草木と岩で隠された洞穴が小さく存在感を出していたのだ。


入ってみると、下へ続く階段がありーーーー行き着いた場所は海につながる洞穴。

面積の半分は生活場所、そしてもう半分は海の水が入り込むようになっていた。

そして水の上に浮かぶものを指差す吉和ーーーーまさしくそれが最優の向かう手段。


「これです」


……なのだが。


「……いや思いっきりモーターボートじゃねえか」


どう見ても黒光りするでかめのモーターボートなのだ。


「俺達は気付かれずに行きたいって言ったんだけど」


「大丈夫です、気付かれずに行けます」


何言ってんのこいつ、話がまったく噛み合わねえよ。

呆れる海斗。

するとラーファとエリメが煩わしさを解消するように言葉を投げかけた。


「姿が見えなくなる機能とかついてるのではないですか?」


「ステルス」


「…..あ〜、確かに」


流石に 『気付かれず』 の意味はわかっているはず……

そこまで薦めてくるということは何かしらの機能が付いているのだろうーーー二人はその考えに至ったのだ。

なるほどそれなら了解、早速……としたところで思い出した。


「ーー! あぁでもあれか……ラーファ達もいるんだな……」


悪魔といえども要塞まで連れて行くのはどうなのか?

確実に戦闘は怒るだろうし、そこで怪我でもされたら一大事だ。

海斗の悩みが増えてしまった……ように思えたのだがーーー


「心配するな……私たちがいる、子供達は任せろ」


シェイラとアノミアがいた。

この二人が守ると言ってくれるのなら安心だーーー実力も相当のものだとわかっているし。


「……そうだな、任せたわ」




ーーーー



そうして海斗達はモーターボートへと乗る。

これから起きることに目を背けず、皆、前方の穴から見える要塞の鱗片を直視していた。


「皆さん乗りましたねーーーーーーでは、行きますよ……!!」


吉和の号令が狭い洞穴に響き、エンジンがかかる。

水しぶきを上げて推進力を上昇ーーーーー 一気に外に出た。


ここでステルスか!? と思ったのだが……

すごく、とても、思いっきり化け物達がこちらに顔を向けてきた。


……あれ? おかしくね?


「ちょっ! 気付かれないように行けるんじゃなかったのかよ!!」


「何人で向かっているとかは気付かれないでしょう、大丈夫です、僕の言った通りです」



何人で向かうのかを気付かれないようにする……?

そうじゃねえ……俺が言ってることはそうじゃねえ……!



「俺は向かうこと自体を気付かれないようにしてって言ったのおおおぉぉぉぉぉぉーーーーー!!」




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