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もしも人間が魔王になったら  作者: キバごん
異世界炎龍編
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第八十三話 いろいろありすぎてサブタイトルを考えるのも面倒臭い

「あー……なんとかついた……」


化け物がひしめき合う海を渡るのは困難を極めた。

こちらに気づいたそれらは暴れに暴れ海を荒れ狂わさせた。

よって蛇行運転で避けながら進むしかなかった。


その無茶苦茶な運転によりバルと花音が顔を青くさせ座り込んでいるーーーとても気分が悪そうだ。

子供達は今も楽しそうに頬を赤くさせているが……


「お前の運転雑すぎなんだよ……」


海斗の気分は悪くないにせよ、それ一歩手前までに達した。

避けるためには必要なのかもしれないけども、すんげぇハンドル回転させてたよ……


「しかし無事に着きました、しかも数を気づかれずに」


「いや全然無事じゃねえよ? 数云々の話じゃなく行動自体気づかれちゃってんだよ」


そこが重要なんだよ。

俺は本当にこいつと意思疎通できてんのか?

言い表すことが難しい不安に襲われる海斗ーーーーーうまくやっていける気がしない。


「いえ、それについてもご心配なさらずに、私の行動はしっかりと計算され尚且つカバーも用意されています」


「ほんとかよ……」


だがそれを払拭させるように言葉を添えた。

すると吉和は持っていたカバンから黒い何かを取り出した。


「まず、私はこのスーツを着ます」


「なんでスーツ?」


「この要塞のルールで、戦闘員は皆スーツを着用しているのです」


「マジかよ」


それはスーツ。

スーツを着れば敵に紛れ込む事が可能なのだというーーーーますます疑わしい……


……という事は……


「じゃあ俺たちにもスーツがあるのか……?」


「いえ、貴方達は着なくても問題ありません」

「私服はアルバイトが着るようになっているので怪しまれませんよ」


「どうなってんだこの要塞! どっちみち服関係ねえじゃねえか!!」


要塞の守護役でアルバイト募集してるの!?

ろくでもなさそうなんだけどここ!


「それでもストーリーを背景に持ってきた方がうまくいきます」


そのストーリーはこうだ。


まず吉和がスーツ姿になり、次に私服を着た海斗達を後ろに並ばせる。

つまり戦闘員がアルバイト希望者を連れてきたという設定なのだ。


なるほどそれは分かった。

後は自分達が適地を把握するだけーーーー

海斗とバルは影にしている壁から顔を出す。

そして目に入ってきたのは……


「……なんか、変じゃね」


「変ですね……」


戦闘員の姿。

いるのはしょうがない、守るために存在するのだから。

……でも、一つだけおかしい……どこがと言うと……頭がおかしい。

そのフォルムはーーーー


「スーツ着た人型の体に魚を取り付けたみたいになってるんだけど」


海斗の言葉通りのものだった。

魚の『頭』だけでは無いーーーー魚そのものが首の上に乗っていたのだ。


「あぁ、あれが普通です」


「普通なの!? どう見ても不審者なんだけど!」


しかし吉和は彼らを見て驚きもしなかった。

まるで日常を見ているかのような目をしていた。


「元々は魔界の要塞と言ったでしょう、人間から見ると不思議な形をしている奴は山ほどいます」


「……にしてもあれは……」


さすがに変だ。

正直モンスターと呼ばれてもなんらおかしくは無い。

悪魔であるバルでさえも若干引き気味だ。


あんな中を歩かねばならんのか……気が滅入る。


「でも俺ら私服じゃねえよ、水着のままだよ」


先程まで海での時間を満喫していたのだ。

水着姿なのも無理はない。


しかしどうするか……また海辺に戻るのか……?

それはごめんだ、あんな化け物が蔓延る海を往復したくはない。


「大丈夫ですよ〜、私服を置いてある場所は頭に入ってるので、そこへ魔空間を広げれば取れます〜」


悩む海斗の横でルシファーが発言した。

……魔空間……?


「……あぁ〜、あれか、ミョイーンって黒い円形の歪みが開く奴」


人間界から魔界に向かう時に海斗も道具を使って開く。

あれ魔空間っていうんだ……


「便利魔力ー!」


「流石」


なぜか喜ぶラーファとエリメ。

……かわいいなちびっ子二人……



ロリコンじゃないです。




ーーーーーーーーーーー


ーーーーーーー


ーーー




水着の上から服を着た海斗達。

あまり気が進まないのは変わらない。


ーーーで、あったとしても作戦は遂行しなくてはならない。

吉和の言った通りに行動する海斗達。

まるで練習不足の百足歩きだ。


「……」


全員が黙りこみ沈黙が流れるーーーー

と、目の前から魚頭の戦闘員が……!

お願いだぞ……バレないでくれよ……


海斗は平然を装い、心で焦りながら祈っていた。

そしてそいつは目の前までやってくる。



「お、見回りか?」


「はい、そうであります」


話しかけられたが、吉和が上手く対応してくれた。

しかし……開口一発目が『誰だッ!?』とかではなかったので海斗は少々驚いた。

本当にこれでいいんだな……


「……あれ、後ろの奴らはなんだ?」


あ、でも一応聞くんだ。

まぁそうだわな、私服でいるんだもんな。

……いやスーツもおかしいけど……


「こちらはここでアルバイトを希望している者達であります」


「おぉそうか、じゃあ面接室に行かなくちゃあな」


面接室!?あんの?マジであんの!?

聞いていた情報とはいえ、本当にその通りだと知ると衝撃がくる。

それが非日常であればあるほどだ。


吉和はそれだけの会話を交わし去ろうとするーーーーーだが


「ーーーッ!」


シウニーが何も無いところで転んでしまう。


お前騎士じゃねえのかよ!足腰命だろ!?なんで転ぶの!


「……?ーーーー! おい! 誰だぁ!?」


ほらぁ!また注目を浴びた!

何処かへ行こうとしていた先ほどの戦闘員がシウニーの方を見る。

彼女も焦りからか倒れたまま動けなくなっていた。


やばい、やっぱりバレちまったのか……!?

戦闘員が発した言葉はーーーー


「ここにまな板を落としたやつは!」


これだった。


……あれ……?まな板……?

おかしいな……私の耳にはそう………


いつものようにからかっているのかと思ったけど、魔王様の声でもない、女性の声でもない……

………んん?


己の耳を疑うシウニー、軽く困惑気味。


「あ〜すいませーん、僕です〜」


すると海斗が手を挙げた。


「僕料理が趣味でして〜、いつもまな板を持ち歩かないと落ち着かないんですよ〜」


「なんだおまえの物か、気をつけろよ」


「はい〜、すいませーん」


よいしょとシウニーを担ぐ海斗。

力無く引きずられていくーーー


目は見開き疑問が全身を覆った。







「やっぱりお前はまな板なんだよ」


「……」



胸無しで悪かったなあああああああああ!!





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