第六十六話 魔王は変態にしか成り立たない
「あぁ〜……無駄に体力を使った気がする……」
ひたすらの王になってくれ攻撃に、体から元気をなくす海斗。
久しぶりに会ったのは嬉しいが、こうなるとその感情も違う感情により押しつぶされてしまう。
「大丈夫ですか?種馬魔王様」
「だからそれやめろっつってんだろが」
だが追い打ちをかけるように不名誉なあだ名で呼んでくるバル達。
「これからドラゴン討伐なんだから、体はしっかり休ませとけよ変態たらし魔王」
「だぁらやめてと」
身に覚えのないことでこう呼ばれてしまう海斗ーーーー
何種馬って、何たらしって……
そう呼ばれることしてないんだけど。
変態なのは認めるが。
「何か食べたら元気になるんじゃないですか、この国では全員の方と知り合いなんでしょう?ーー食べさせてもらってはいかがですか?種馬変態野郎」
「ついに魔王でもなくなったよ、ただの歩く猥褻物に変貌したよ」
ごめんなさいシウニー。
今までのまな板呼びは謝るからせめて魔王はつけて。
「でもよかったですね……懐かしい方達と再会できて……」
「……まぁな……」
そりゃそうだ……いくら王になれ王になれとせがまれても嬉しい。
あれからあまり変わってないことにもーーーだ。
「いつ知り合ったんですか?」
「……今から……2年経たないくらいかな……」
「そこで私達の時と同じように助けたんですか?」
「そうなるかな……」
ここの世界に転移した時は驚いたがーーーすぐに身を引き締めることができた。
この国も以前のバルに不幸が襲いかかっていたように、同じような事態が起こっていたのだがーーー
あの時はかなりの酷さだった……
「へぇ……種馬変態クソ野郎でもいいところあるんですねぇ……」
「……あれ……?ーー今ふざけのシーンじゃないよね、過去の話をするシリアスシーンだよね?」
シリアスシーンに入ろうとする前にーーー
「部屋に来て早々すまないが、出てきてくれるか?」
アノミアが部屋を叩いた。
ーーーー
普段は作戦会議を開く大部屋に連れてこられた海斗達ーー
そこにはシェイラやアノミア、他にも懐かしい顔が揃っていた。
本当に皆変わっていないことに嬉しさがまた浮上してくるが
「先ほど、炎龍を見張る者からの連絡があったんだが……動き出したようだ」
「……」
そう思い続けてはいけないようだ。
「おそらく狙いはここ……こちらも兵を駆りださせる、お願いだ……止めて欲しい」
シェイラは苦しそうにそう言った。
この国にも猛者は当然いるーーーそれを見てきた海斗が一番よくわかっている。
だがーーーー
「いらねえよそんなもん」
海斗はその提案をはねのけたのだ。
「……なぜだ海斗……戦力は多い方が……」
当然引き下がらないシェイラ。
絶対にそうした方がいいと思っているからだ。
しかし海斗は
「相手はドラゴン、もちろん図体はでかいだろーーー人数が多ければ多いほどリスクが大きくなる」
「んでこっちは最高の人材を揃えてる……シェイラ達はもしもの時に備えといてくれ」
しっかりと根を張った考えがあったのだ。
ドラゴンは大きいーーー先の説明を聞けばますますわかる。
大きければ大きいほど、単純な攻撃範囲は広くなる。
人が多ければ多いほど被害が出た時それはひどくなるだろう。
「……海斗……」
海斗の胸中を聞き、目を開かせるシェイラ。
「惚れ直した、私を抱け」
「お断りします」
ーーーーーーーー
ーーーー
「ヒヒ〜ン」
「あらそうなのですか……大変ですね……」
「ヒヒン……」
勝は馬小屋で対話していたーーー
その相手は馬。
沈んでいるようでどこか和やかだった。
「すまねえな勝、馬小屋にいてもらって……」
そこに海斗が現れる。
どうやら勝を馬小屋に置いたのは海斗なようだ。
理由は獣用の部屋がなかったから。
「いえ全く問題ないですよ、今丁度レディと会話しておりましたので」
「あぁ、その馬女性の方?」
「そうですぞ、子育ての悩みを聞いていました」
「馬にも子育ての悩みがあるんだな……」
どこか心にはあったけど、ちゃんと耳で聞いたらそれはそれで衝撃だな……
そこへ
「魔王様、準備はできましたか?」
シウニーが海斗に続いて現れた。
海斗が外に出て行くのを見てついてきたらしい。
「おう、俺はいつでも準備万端ーーー二本の刀と腕がありゃあいい」
「そうですか……」
普段あんなにのんびりしてるくせに、いざとなったら頼り甲斐のありそうな声を出すんですから……
そう愚痴に近い声を胸に出した。
「先に皆と部屋で待機しといてくれ……俺もあとで行くからよ」
「わかりました」
とりあえずは待機ーーー龍が来襲したら教えてくれるだろうからな。
その時までは体勢を崩してはならない。
その考えでシウニーを城内へ戻させた。
「……魔王様は行かないのですか?」
シウニーがいなくなった今ーーー勝は海斗が戻らないことに疑問を持つ。
「……」
「ーーまぁな……」
ーーーーーーー
先ほどの大部屋についたシウニー。
「魔王様はどうでした?」
その彼女に海斗のことを尋ねるバル。
「はい、準備万端らしいですーーー先に部屋で待機して欲しいと」
「そうですか……では先に行っておきましょうか」
それを聞きいれ大部屋を後にする悪魔一行。
途中で楽しそうに談笑する姿を見せた。
「それにしてもあいつが既に転移者だったとはな〜」
「通りで馴染むの早いはずですよ」
「だからたらし変態種馬になったんですかねぇ……」
「ボクは種馬でも変態でもいいよ……?ーーかっこいいもん」
「うわ、ほの字かよ……」
「ダメだぞぉ!!添い寝ポイントは私の方が高いんだ!ーーあいつと付き合うのは私を超えてからにしろ!」
「お前もかい……」
談笑が最高点に達した時に、部屋の前まで来ることができた。
「にしても広いですね〜この部屋……全員泊まれるくらい」
「魔王様は嬉しいんじゃないですかぁ……?ーー私達美女と一緒の部屋に泊まれて……」
「性格は堕ちてますけどね」
「それは言わないお約束……」
だって堕天使ですもの……
「ベッドにダーイブ!!」
「ーーアァ!?そのベッドは海斗のベッド!!ーーやらせんはせんゾォ!!」
言葉通りーーベッドに飛び込むレヴィ。
その彼女をどけようとするアイナーーー
「落ち着いてくださいお二人とも!」
「全く…………なんでしょう……この紙……」
その時シウニーが、ベッドの横にある机の上に一枚の紙を見つける。
字体から明らかに海斗であることがわかる。
「……魔王様からでしょうか……」
「なんて書いてある」
書かれてある文を読み上げるシウニー。
「これは……」
「……あの馬鹿……何やってんだ……」
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城から北の方角には森がありーーーそれを抜けた先には山がある。
その向こうから、翼を動かし飛来してくる生物が見えた。
「来たぞ……あの方達を呼べェ!!」
気づき、バル達を呼ぶように声を上げるアノミアーーー
その知らせを聞き外に出る彼女達ーーー
「生け捕りか……」
「魔王様の望みはそうでしたね」
「あのデカさじゃあ……生け捕りは難しそうですねぇ……」
「あぁ、あぁ……その通りだ」
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書いてある通りに実行してほしい
それは炎龍を殺さずに捕獲することだ
シェイラが普段はおとなしいと言っていた
つまりこれには裏がある
俺はその元凶に覚えがある だから龍の捕獲には参加できない
最後に、龍を捕獲する途中もーーし終わった後にも気を抜かないでくれ
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「殺してしまいそうですね」
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「ふふん……まさか、龍の次に我らが襲来するとは微塵も思っていないだろうな……」
森を越えた先にある山に、軍を引き連れて進む男ーーー
そいつは小さな不満を口にしながら歩を進めていた。
「その上あの龍を操っているのは我ら! 勢力は間違いなく二対一……!ーー負けるはずがない!]
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『おいてめぇら……意味なく国を攻めてんじゃねえよ』
『それでもまだ、その手止めねえんなら……俺が代わりに立つ』
『……かかってこいよ』
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「あの時の恨みは忘れぬ……ッ! あのクソ生意気なガキがいなければ勝てていたというのに……!!」
手を握りしめ顔の血管を浮かべる。
よほどの怒りなのか馬車を怒りがこもった拳で打つーーー
「……閣下、お気を確かに……」
それをなだめる兵士ーーー
普段から慣れているのか一切の焦りを見せない。
この男、かなりの短気なようだ。
「……そうだな……今回、奴はいない……」
「あいつらだけで我々を凌げる力はないのだ……ほぼ皆無に等しい」
「これでやっと、あの雌どもに後悔を与えてやれるのだ!」
拳を天に上げた男ーーー
「楽しみで体が震える……!ーーもう炎龍が到着している頃だろうしな……」
喜びを身体中を支配する最中ーーーー
「ーーーー閣下!」
前から一人の兵士が男の前に訪れる。
「なんだ? 丁度心地よい未来を想像していたというのに……」
「申し訳ございません……!ーーしかし!......前方より……」
「……?」
「あの男が……!過去に会ったあの男がーーーーー!」
「……」
「……!?」
「よう閣下さん!!」
「また会ったな……!」
あの男ーーーーそう呼ばれる者は
獣に乗り兵達を押しのけて通る海斗であった。




