やっぱり1人が楽かも
そして、昼休み。
恐る恐る中庭をのぞいてみると、島崎くんと美希さんが何やらもめていた。
「なんで美希が、ここにいるんだよ」
「春野さんと、一緒に食べる約束したのよ」
その時、美希さんが私に気づき、
「春野さーん、こっちこっち」
と手招きする。
私は、仕方なく2人のところへ合流した。
「さぁ、3人で仲良く食べましょう」
と言いながら、自分の右側に島崎くん、左側に私を、強引に座らせる美希さん。
島崎くんは、心配そうな顔で私の様子を伺っている。
「龍二は今日もパンなの?」
彼女が島崎くんに体を寄せる。
「わー、相変わらず龍二んちのパンは美味しそうね」
美希さんは、島崎くんの実家がパン屋なの、知ってるみたい。
知られたくないって言ってたのに。
「あら、春野さんのお弁当も美味しそうね。おかず交換しましょ」
そう言って、自分のお弁当を差し出す彼女。
「どれでも取っていいわよ。お料理には自信があるんだから」
自分で作ったんだ。
どれも手が込んでる。
「じゃあ、これもらってもいいかな?」
「そんなちょこっとでいいの? お好みに合わなかったかしら」
「いやいや、どれも美味しそうだけど、これがいいなと思って」
本当は遠慮して、一番小さいのにしたんだけど。
「ほんとに? じゃあ、私このミートボールいいかしら?」
あー、大好きなんだけどな、ミートボール。
「いいよ」
「やったー」
ニコニコでミートボールを頬張る彼女。
この人、悪い人ではないんだろうけど、ぐいぐいくる感じ、苦手なタイプだな。
そして、島崎くんに向き直り、クラスの話を始めた。
これ、わざとだよね?
私は彼と同じクラスなんだぞアピールですか。
あー、この空間、居心地悪い。
島崎くんに視線を送ろうとしたが、美希さんがいるので、全く彼の顔が見えない。
その後も、彼女はひたすら島崎くんに話しかけていた。
時々、私に「ねー、春野さんもそう思うでしょー」とか同意を求めてくる。
知らねーよ。
私はさっさとお弁当を完食し、先に教室に戻ることにした。
「私、食べたから戻るね」
「春野、ごめんな、うるさくて。こいつが」
島崎くんが、美希さんを顎で指しながら言う。
「えー、私?」
美希さんが、おどけながら言う。
この2人、お似合いじゃん。
私は苦笑いを浮かべながら、その場を後にした。
美希さんが「また明日ねー」と手を振る。
明日もあの空間で食べると思うと、気が重くなった。
明日から違う場所で、1人で食べようか。
でも、行かなかったら島崎くん、どう思うかな。
優しい彼のことだから、私に悪いことしたなとか思うかも。
美希さんは、島崎くんと2人の方が、いいんだろうけど。
あーもう、こういうのが面倒で、ぼっちでいることにしたのに、なんでこんなことになった。
結局、翌日も私は中庭に向かった。
美希さんと2人になるのを避けて、遅めに行ったが、いつもの木の下には彼女が1人座っていた。
「あ、春野さん、早くいらっしゃいよー」
と手招きをする彼女。
「島崎くんは?」
「何か先生に、手伝わされてるわ」
「そ、そうなんだ」
「龍二って優しいからさ、頼まれたら断れないのよね。昔からそう」
「昔?」
「あ、私と龍二、小学校から一緒でね。幼馴染なの」
それでか。
「龍二ってね、昔から人を寄せ付けないオーラ出してたんだけど、いざ仲良くなると誠実で気遣い上手で、思いやりの塊で」
愛おしそうに島崎くんを語る彼女。
私は、思わず聞いていた。
「美希さんは、島崎くんのこと、好きなの?」
「好きよ。ずっとね」
即答だった。
切なそうな表情からして、まだ恋は実ってはいないのか。
「ここ入学したのも、龍二と一緒の高校に行きたくて、必死に勉強したの。だから、お願い……」
そこで、島崎くんが中庭に入って来た。
お願い、の後に何を言おうとしたのだろう。
私に、彼に近づかないで、とか言うつもりだったのか?
「龍二、お疲れ様。早くお昼食べましょ」
彼女の顔がパッと明るくなる。
本当に好きなんだな。
そりゃ、好きな男子が見知らぬ女子と2人きりで昼休みを過ごしてたら、気が気じゃないよな。
ほっとけないよなぁ。
やっぱり、私は明日から1人で食べよう。
そう決意した。




