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1人が楽だと思っていたのに、あなたと2人が楽しすぎて  作者: あぽぉ


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5/20

側から見てるだけかじゃわからないこと

あの日から、私は嶋崎くんと一緒に芝生に座って昼食を取るようになった。

「今日は何パン?」

「今日はグラタンパン」

「えー、そんなのあるんだ。こないだ行った時にはなかった気がするけど」

「俺が勝手に作ったやつだから、売ってはねーよ」

「え? 島崎くんが作ったの? すごっ」

「遊び半分で作ってるだけだから」

そう言って、グラタンパンを半分に割って、私に差し出してきた。

「食う?」

「いいの? ありがとう。じゃあ、おにぎり一つあげるね」

「やった。サンキュー」

彼が嬉しそうに、おにぎりを受け取る。

グラタンパンは、パンの器にグラタンが入っている形をしていて、一口齧れば口の中にクリーミーなグラタンとチーズの味が広がり、それが周りのサクサクしたパンと合わさり、冷めていてもとても美味しかった。

「めちゃくちゃ美味しい」

彼は「そう」と言いながら、前髪を触り顔を隠す。

「お店で売ったらいいのにー」

「こんなの、手間もコストもかかるし、きっと売り物には向いてない」

「そうなの? こんなにおいしいのに」

「おいしいだけじゃ、ダメなんだ」

と空を見上げる彼の横顔は、少し寂しげに見えた。


昼休みが終わり、教室に戻る途中、佐々木さんが廊下に佇んでいた。

私は声をかけるか迷いつつ、彼女に近づいて気づいた。

彼女は泣いていた。

メガネを外し、ハンカチで目を拭っている。

その時、彼女が私の気配に気づいたのか、チラリとこちらを振り返ったと思ったら、走って行ってしまった。


今、目が合ったよね?

睨んでなかった?

そして、逃げられた?

私、佐々木さんに嫌われてる?


彼女には、ずっと後ろめたさがあった。

お昼に誘ってくれたのに、嘘をついて断ったこと。

1人で寂しそうにしていたのに、見て見ぬふりをしたこと。

全部、自分を守るため。

もし、あの涙が、私の行動に関係しているものだったら……。

教室に戻ると、佐々木さんは自分の席に座って俯いていた。

私には、再び声をかける勇気はなかった。


◇◇◇


「おい、おーい」

翌日の昼休み、ボーっとお弁当を食べていると、島崎くんの呼びかけで我に帰った。

「メロンパン食うかって聞いてんだろ」

「え、あー、ありがとう」

「何があったんだよ」

「え? いやー、ちょっとクラスメイトとね」

「お前、友達いねーのに、クラスメイトとトラブルとか起きようがなくね?」

「そう思ってたんだけど。ある女子が1人で泣いてて、その理由が私にも責任があるかもしれなくて」

「お前って、1人が楽だから友達作らないって肝が座ってると思ったけど、結局友達でもないやつの心配して、よくわかんねーな」

「だってー、私のせいかもだしー」

「そんなもん、聞いてみねーとわかんねーだろ」

「だって、聞いて本当に私のせいだったらって考えると、怖くて」

「お前なぁ」

と呆れ顔の彼。

「お前お前言わないでよー」

「だって、名前知らねーし」

「あ、そうだっけ? 春野つむぎですー」

うなだれながら答える私。

「春野」

「……はい」

初めて、島崎くんに名前を呼ばれ、ドキッとする。

「側から見ただけで、どんだけ考えても、中身は見えてこねーぞ」

そう言って彼は、一つのパンを私に差し出した。

「このパン、外はクロワッサン生地で固く覆われてるけど」

彼が、それをひと口かじり、中身を見せる。

「中は柔らかく、甘いチョコクリームがぎっしり。側から見たんじゃ中身はわからねーんだよ」

「ふふっ、パンで例えるとか、さすがパン屋の息子だね」

「うるせー」

彼が、口を尖らせそっぽを向く。

「確かに島崎くんも、見た目と中身全然違うもんね」

「話してみねーとわかんなかっただろ?」

「うん、そうね。私、彼女と話してみる」

彼は、大きく頷いた。

どうしてだろう。

彼の言葉には、説得力を感じる。

勇気をもらえる。

まだ出会って間もないのに。


◇◇◇


翌日。

私は朝から、佐々木さんに話しかけるタイミングを見計らっていた。

結局、昼休みになってしまった。

佐々木さんは、お昼を食べる前に席を立ち、教室を出て行った。

私も、急いで後に続く。

後をつけるなんて、すごい罪悪感あるけど、仕方ない、仕方ないんだ。

佐々木さんは、一階の自動販売機の前まで行き、ミネラルウォーターを購入。

彼女が振り返ったところで、私は思い切って声をかけた。

「佐々木さん」

彼女が、目を見開き驚く。

「ごめん、ちょっと話したいことあって。いいかな?」

「うん」と訝しげな表情で、彼女が頷いた。

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