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1人が楽だと思っていたのに、あなたと2人が楽しすぎて  作者: あぽぉ


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4/21

1人が楽な2人

今日も、サクラの木の下には誰もいない。

サクラは、もうとっくに散ってしまい、緑の葉っぱが生い茂っている。

なんとなく、私はいつも彼が座っている芝生に腰を下ろした。

花壇より座り心地いいじゃん。

横になってみる。

木の葉の隙間から見える真っ青の春の空、風に揺れて葉が擦れる音、学校で寝転んでいるという優越感。

なにこれ、めっちゃ気持ちいい。

彼がいつも、ここで寝ている気持ちがわかった。

島崎くんが、ここに来なくなってまだ

3日しか経ってないのに、もう随分会ってない気がする。

不思議。

私のこと、鬱陶しくなっちゃったかな……


◇◇◇


柑橘系の香り、聞き覚えのある声。

これは…

「おいっ」

私が目を開けると、赤い髪にピアスの不良男子生徒が、横にしゃがんで私の顔を覗き込んでいた。

「ひゃっ!」

私は驚きすぎて、変な声を出しながら飛び起きた。

「し、島崎くん」

「ここ、俺の、特等席」

無表情でそう言いながら、地面を指差す彼。

「あー、ごめん。てか3日ほどいなかったじゃん」

「いないから試しに寝転んでみよう、あー気持ちいいな、で気づいたら寝てたってところか」

ギクっ、その通りだ。

「島崎くんが、いつもここで寝ちゃう気持ちがわかったよ。で、風邪でもひいてたの?」

って友達でもないのに、いちいち聞くって面倒なやつじゃん。

「俺じゃなくて、母親がな。で、代わりに店出てた」

何食わぬ顔で答える彼。

「え、あのレジにいた人だよね?」

「やっぱりお前か」

ニヤニヤしながら、彼が言う。

「え?」

「俺と同い年ぐらいの女の子がうちに来て、トレイいっぱいにパン買って行ったって、オカンがめっちゃ喜んでたから」

「言われた通り、制服じゃ行かなかったけど、印象に残っちゃったか。恥ずかし。だってどれも美味しそうで、実際美味しかったよ」

「当たり前だ」

と自慢げに笑う。

「あのときはお母さん元気そうに見えたけど、無理してたのかな?」

「休めって言っても、店閉めるわけにはいかないって聞かねーし、親父だけじゃ店開けられねーから、俺が代わりに出たってわけ」

「それは大変だったね。お母さんもう大丈夫なの?」

「あぁ、もう平気」

「そっか。よかったー」

「人の親のこと、どんだけ心配してんだよ」

「いやー、お母さんもだけど、急に来なくなったから私が原因かなって」

「は?とんだ被害妄想だな」

「だって1人になりたくてここでお昼食べてるんでしょ?私がいたら1人じゃないし、別の場所に変えたのかなって」

私の言葉を聞いて、呆れた顔になる彼。

「自意識過剰かよ。お前のことなんて気にしてねーし」

「言い方ひどっ」

私が口をとんがらせ言うと、彼は笑う。

私も釣られて笑う。

この学校に来て、初めて心から、笑った気がする。


会話が一区切りつき、彼がいつものようにパンを齧りだす。

「あ、ごめん、1人で食べたいよね」

私が立ち上がろうとすると、独り言のように彼が呟いた。

「別に」

私は中腰の格好で固まった。

「え?」

「だから、別にここが気に入ったなら、ここにいればいいじゃん」

彼は、わざわざ皆まで言わせるなといった様子で、ぶっきらぼうに答える。

「ありがと」

私は再び、そこに腰を下ろした。

「ねー、ずっと気になってたこと、聞いていい?」

「ダメ」

「島崎くんって、ヤンキーなの?ヤンキーっぽい格好してるだけの優等生なの?」

「ダメって言ったのに、聞いてんじゃねーよ」

「だってー、すごい違和感あるんだもん」

「別に。それに好きでこんな格好してるわけじゃねーから」

「そうなの?」

「この格好してると、誰も寄ってこねーから楽なんだよ」

「なるほど。でも私は寄って来ちゃったね」

「だな。まぁ、お前はあんまそばにいても、鬱陶しくねーっつうか、いてもいなくても変わんねーつうか」

「なにそれ、褒めてんの?貶してんの?」

「さぁ」

とぼけた顔で、彼が首を傾げる。

「でも、ヤンキーになりきれてないのには、理由があったのね。でも、先生に怒られないの?」

「この学校、成績上位キープしてれば、何も言われねーよ」

「えまじ?てか、島崎くん成績上位なの?」

「まぁな」

この男、普通じゃないなとは思ってたけど、まさかの優等生だった。

私が、唖然としながら彼を凝視していると、彼からも質問が飛んできた。

「お前も、あえて連まないようにしてんだろ?」

「うん。わかっちゃった?」

「じゃねーと、あんな笑顔で『私、友達いないから』なんて言えねーだろ」

「確かに。まぁ、私も友達は欲しいけどさ。一緒にいて楽しい、この人といるとありのままの自分でいられる、気のおけない友達ってのが、今までできたことなくてさ。1人の方が楽だなって考えにたどり着いちゃったわけ」

「わかる」

珍しく島崎くんのテンションが上がったのを感じた。

「結局1人が楽なんだよな」

「それなー」

と、2人で笑い合った。

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