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1人が楽だと思っていたのに、あなたと2人が楽しすぎて  作者: あぽぉ


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3/20

島崎ベーカリー

ある日の英語の授業。

「今日は、2人1組になって、相手のプロフィールを英語で書いてもらいます。2人グループを作ってください」

授業開始早々、英語の教師が、そんなことを言い出した。

こういう時、ぼっちは困る。

どうしたものか。

私が無意識に佐々木さんの方を見ると、彼女もこちらを見ていた。

彼女は、例の下手くそな作り笑いを浮かべながら、席を立ちこちらに向かってくる。

「春野さん、私と組んでくれない?」

私は、少し考え、小さく頷いた。


相手のプロフィールを聞きながら、それを英訳していく。

「佐々木さん、下の名前なんだっけ?」

「加奈子だよ。春野さんは、つむぎちゃんだよね」

「うん、覚えてくれてるんだ」

「可愛い名前だなって、印象に残ってた」

佐々木さん、普通にいい子なんだよな。

「春野さんの性格を、教えてください」

「んー、面倒くさがりで、マイペースで、飽きっぽくて」

「もっといいところあるでしょ?」

「いやー思いつかないなー」

その時、女子の笑い声がして、反射的にそちらを見る佐々木さん。

ついこないだまで、佐々木さんと仲良かった女子たちだ。

私は、聞くなら今だと、ずっと気になっていたことを聞いてみた。

「友達と何かあったの?」

佐々木さんは、悲しげに答える。

「うん、ちょっとね」

そう言い苦笑いを浮かべる佐々木さん。

さすがに、ここでは言いづらいか。

「春野さんって、いつもあえて1人でいるね」す、するどいな。

「う、うん。なんでそう思ったの?」

「だって、1人でいても堂々としてるし、なんかかっこいいなーって」

「いやいや、私はただ人付き合いが苦手というか、面倒なだけで。1人の方が楽だなーって」

「そう思えるのすごいね。私には無理かな」

寂しそうに笑う佐々木さん。

気まずい空気になってしまった。

私は無理やり、話を課題に戻し、無事プロフィールは完成した。


その日から、お昼は佐々木さんと一緒に食べるように、なることはなかった。

私が1人が楽だと言ったから、声をかけてこないのだろう。

プロフィールの性格の話の中で、彼女は自分は寂しがりやだと言った。

それを聞いてしまったからか、1人の彼女はすごく寂しそうに見える。

だが、ここで同情から声をかけると、私はきっとまたしんどくなってしまう。

こうやって、他人の感情に寄り添ってしまうのが、しんどくなる原因の一つなのだろう。

そして私は、申し訳なく思いながら、彼女に背を向け教室を出た。


中庭には、今日も彼がいた。

私は、いつもの場所で、1人お弁当を食べる。

なんだろう、この空間はなんとも言えない安心感がある。

彼とはあれから話をしてないが、ただそこにいることが当たり前になっていて、一緒にいるわけじゃないけど一緒にいる感じ。

彼は、あれから昼寝をするときは、スマホのアラームをかけているようだ。

ほんと、見た目と中身がチグハグって言うか。

真面目なのか不真面目なのか、わからない。


◇◇◇


週末。

あの大きなメロンパンが無性に食べたくなり、島崎ベーカリーに行ってみることにした。

調べたところ、うちから歩いて5分と、意外にもご近所さんのようだ。

お店はすぐに見つかった。

外観は赤茶色のレンガでできた、ちょっとした洋館のような造りだった。

白い枠の窓からは、店内の様子が見え、外にいてもいい香りがして来る。

店先には小さな花壇があり、色とりどりの花が植えられていて、絵本に出て来そうな可愛らしいパン屋さんだ。

ゆっくりと木製の扉を開くと、扉に付いているベルがチリンチリンと鳴った。

中は結構なお客さんがいて、皆数十種類のパンからどれを選ぼうか、頭を悩ませていた。

私も、入り口に置いてあるトレイとトングを手に取り、店内を回り始める。

本当に種類が豊富で、10分ほど店内を周り、気づけばトレイの上はいっぱいになっていた。

例のメロンパンは、レジ前の目立つ場所に、一番人気と書かれたプレートと共に置いてあった。

残り1個だ。

嬉しくて、つい頬が緩む。

レジに向かうと、優しそうなおばさんが私のトレイを見て、「たくさんありがとね」と笑う。

島崎くんのお母さんかな?

「知り合いに、ここのメロンパンをもらったんですけど、感動するほど美味しくて」

「それでわざわざ買いに来てくれたのね。ありがとう」

おばさんの笑顔を見て、やっぱり島崎くんのお母さんだと確信した。

まだ、彼が笑っているところを見たことは1度しかないけど、よく似ていた。

そして、あれだけ買ったのに、思ったより全然安くて驚いた。


帰宅し、早速昼ごはんに食べたが、メロンパン以外も絶品だった。

島崎ベーカリー、最高じゃん。


◇◇◇


翌週の月曜日。

私は、早く島崎くんに、島崎ベーカリーに行ったこと、どのパンもすごく美味しかったことを伝えたかった。

やっと昼休みになり、中庭へ急ぐ。

だが、彼はいなかった。

まだ来てないだけかなと、昼休みが終わるギリギリまで待っていたが、結局彼は現れなかった。

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