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1人が楽だと思っていたのに、あなたと2人が楽しすぎて  作者: あぽぉ


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2/21

彼からもらったメロンパン

そのまた翌日の昼休みも、彼は同じ場所で、パンを齧っている。

私もいつもの花壇に座り、お弁当を広げる。

ふと彼の方を見ると、彼もこちらを向いていた。

目があっちゃった。

すると、彼がゆっくりと立ち上がり、こちらに歩いてくるではないか。

なになに?私何かした?

動揺している私の真ん前で立ち止まった彼は、大きなメロンパンを私に差し出した。

「昨日のお礼」

彼がボソリと呟く。

「お、お礼?」

「起こしてくれて、助かった」

「あー、いや大したことは」

「授業遅れるとこだった」

彼はと照れくさそうに、長めの前髪を触るふりをして、顔を隠す。

見た目によらず、律儀なんだな。

そして、超真面目。

「じゃ、じゃあお言葉に甘えて」

そう言い、私がメロンパンを受け取ると、

彼は、そそくさと桜の木の下に戻って行った。

私はなぜか、その後ろ姿から目が離せなかった。


お弁当の後に、この大きなメロンパンは食べきれないなと、メロンパンを持ったまま教室に戻る。

教室にはまだ、昼食をとっている生徒がちらほらいた。

そして、以前、一緒に食べない?と声をかけて来た学級委員長の佐々木さんが、自分の席で一人、お弁当を食べていた。

佐々木さんがいたグループの他の子たちは、集まってワイワイ楽しそうに、昼食をとっている。

また、女子間の面倒ないざこざの香りがする。

一人で、食べている彼女の表情は、とても寂しそうに見えた。

可哀想だけど、ここで首を突っ込めば、確実にトラブルに巻き込まれる。

それを避けるために、私はぼっち、を貫くと決めた。

私は彼女の方を見ないようにしながら、自分の席についた。



放課後になっても、佐々木さんは友達と話すこともなく、1人下校して行った。

彼女のことが気になって、心がモヤモヤする。

私はなんとなく、すぐに帰りたくなくて、駅周辺をうろうろしていた。


すると、自動販売機の前に、赤い髪の制服姿の男子を見つけた。

財布の中の小銭をじゃらじゃらかき回している。

その時、小銭が一枚、地面に落下し、コロコロと転がった。

それは、偶然にも、私の足元で止まった。

彼はしゃがんで、キョロキョロと小銭を探している。

私は、足元の10円玉を拾い、彼に近づいた。

「これ」と10円玉を彼の前に差し出す。

彼は、私の手の10円玉を凝視した後、しゃがんだままゆっくりと、目線を上げた。

「あ、」

私に気づいた彼は、「ども」と10円玉を受け取り立ち上がる。

改めて自動販売機の前に立った彼は、小銭ではなく、千円札を投入し、オレンジジュースとカフェオレのボタンを押した。

取り出し口からそれらを取り出し、私の方へ差し出す。

「どっちが好き?」

「え、いや大丈夫です」

「あげるとは言ってないけど」

と彼は私から目を逸らす。

「……カフェオレ」

私がそういうと、彼はカフェオレを私の手に握らせ、そそくさと去って行った。

なんなのあいつ。

私は、手に握らされたカフェオレを見つめながら、小さくほほえんだ。


その夜、彼からもらったカフェオレを飲みながら、大きなメロンパンを食べた。

学校の購買でも、コンビニでも見かけたことのないそのメロンパンは、今まで食べたメロンパンの中で一番美味しかった。


◇◇◇


翌日も、佐々木さんは友達と会話することなく、昼休みも1人で食べていた。

私ってば、昨日から佐々木さんのことばっか気にしてる。

何のために、ぼっちでいることを決めたんだ。

それに、一度佐々木さんの誘いを嘘ついてまで断ってるのに、今更私から声をかけるなんてできない。

そう自分に言い聞かせ、私はお弁当を持って教室を出た。


中庭のサクラの木の下には、いつもの光景があった。

私は、赤い髪の彼の前に立った。

訝しげな顔をして、彼が私を見上げる。

私は、今朝コンビニで買ったチョコレートとラムネを差し出した。

「どっちが好き?」

「どっちも」

「ちょっとー!違うでしょ。そこは「いらない」って言って、私があげるなんて言ってないしーって言うところでしょ」

口を尖らせ私が言うと、彼はぷっと吹き出して笑い出した。

初めて見る彼の笑顔が可愛く思えて、私も笑う。

さっきまでのモヤモヤした気持ちが嘘のように、穏やかな気持ちになっていた。

私はチョコレートとラムネを、彼の右手に握らせた。

「メロンパン、すごくおいしかったからお礼です」

そう言い残し、私はその場を後にしようとした時、彼は言った。

「当たり前だろ。うちのパンなんだから」

私は、足を止め振り返る。

「うちの?」

「うん。うち、パン屋だから」

「まじで?すごっ」

私は彼の方に向き直り、尊敬の眼差しを向けた。

「別にパン屋なんてどこにでもあるし、すごかねーよ」

彼はまた、前髪を手で触りながら、顔を隠す。

「なんて言うパン屋さん?」

「島崎ベーカリー」

目を合わせず、彼は答える。

「島崎ベーカリー。えっと、島崎くん。島崎先輩かな?」

「1年だけど」

「一緒だ。私、パン大好きなんだよね」

「うちがパン屋って、誰にも言ってねーから、広めんなよ」

「大丈夫。私、友達いないし」

笑顔でそう言う私を、彼は不思議そうに見た。

「あ、そう」

「今度、パン買いに行ってもいい?」

彼は少し迷った後、静かに頷いた。

「でも、制服で来るなよ」

「なんで?」

「親が、同じ学校の子が来てくれたよってうるせえから」

そう照れくさそうにいう彼が可愛く見えて、私は小さく笑いながら「わかった」と答えた。

私があげたチョコレートを食べ始める彼を見届け、私はいつもの花壇に向かって歩き出した。

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