ぼっちとヤンキー
女子はめんどくさい。
噂話と悪口が大好き。
話を合わせないと、空気が読めないとすぐ省られる。
そして、男子より人間関係のトラブルが多い。
私の中では、そんなイメージになっていた。
中学までは、一人でいるといじめのターゲットにされるレベルの低い学校だったから、私は頑張って輪に入っていた。
仲良しごっこだった。
面倒だった。
しんどかった。
だから、高校では、ぼっちを貫くことに決めた。
ぼっちだからといじめてくるような低レベルな輩がいない、レベルの高い進学校を選んだ。
私の成績では無理だと言われたが、平和な学校生活を手に入れるため、死ぬ気で勉強した。
そして、無事この高校の門を潜った。
ここには、まじめくんとまじめちゃんしかいない。
休憩時間も、一人で黙々と勉強している子や読書を楽しむ子がちらほらいる。
ぼっちが目立たない環境なのだ。
もちろん、いじめなんかするような子もいない。
そんな学校での昼休み。
私は今日も、中庭の隅で一人お弁当を食す。
以前は、教室で1人で食べていたが、気を使ってか、担任に誘ってやれと言われたか、はたまた罰ゲームか。
話したこともない女子、絵に描いたようなメガネに三つ編みの学級委員長の佐々木さんが
「よかったら、あっちで私たちと一緒に食べない?」
と声をかけてきた。
下手くそな作り笑顔を浮かせながら。
「ごめん、今日は違うクラスの友達と約束してるから」
と、私も作り笑顔を浮かべながら答え、教室を出た。
その日から、私は昼休みになると中庭に飛び出すようになった。
花壇に腰を下ろし、膝の上にお弁当を広げる。
母が作ってくれる、カラフルなお弁当。
まさか、こんなところで、一人で食べているなんて思ってもいないだろう。
「お母さん、ごめんね」
そう呟き、卵焼きを口に運ぶ。
その時、少し離れたところに男子生徒の姿が目に入った。
彼は、もうほとんど散ってしまった桜の木の下の芝生に座り、パンを齧っていた。
少し長めの赤い髪、耳に光るピアス、着崩された制服。
この学校にも、ヤンキーがいたんだ。
この学校であんな格好してたら、教師が黙っていないと思うが。
彼はパンを食べ終えたようで、なにやら制服のポケットを探っている。
食後の一服か?
しかし、ポケットから出てきたものは、まさかの単語カードだった。
まさかの勉強タイム?
彼は、しばらく熱心に単語カードを見つめていたが、5時間目の予鈴のチャイムが聞こえると、校舎へ戻って行った。
授業にもちゃんと出席するらしい。
翌日の昼休みも、彼は同じ場所でパンをかじっていた。
私から見て、彼は、横向きに座っているので、目が合う事は無い。
こちらに気づいているかも怪しい。
パンを食べ終えた彼は、また勉強タイムかと思いきや、芝生に仰向けに寝転んだ。
今日は、昼寝かよ。
そう心で突っ込みながら、私はお弁当を食べすすめる。
ふいに、彼の顔がこちらを向いた。
やば、こっち見た。
私はとっさに目をそらしたが、彼は気にも留めず、目を閉じ眠りだした。
しばらくして、5時間目の予鈴のチャイムが鳴る。
しかし、彼は起き上がらない。
爆睡しすぎ。
なんとなく、彼をこのままほっとく気になれず、
私はそっと、彼のそばに近づいた。
近くで見る彼の寝顔は、どこか少年のような幼さがあり、いかつい髪型にミスマッチだった。
私は立ったまま、彼に声をかけた。
「あのー、昼休み終わりましたけどー」
彼の切れ長な目が、ゆっくり開かれる。
「5時間目、出ないんですか?」
数秒考えた彼は、やっと状況把握したらしく、「やべっ」と体を起こした。
彼は空になったパンの袋を掴み、校舎の方へ颯爽と走って行った。
私は、唖然としながら、その後ろ姿を見送る。
彼の去った後には、桜の香りとほのかに柑橘系の香水の香りが残っていた。




