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1人が楽だと思っていたのに、あなたと2人が楽しすぎて  作者: あぽぉ


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18/21

彼の好きなところ

翌日、予定通り桃花は無事退院した。

島崎くんも病院まで駆けつけてくれた。

昨日、自転車に潰された分のパンを新しく焼き、桃花にと桃のデニッシュも持って来てくれた。

まだ目は赤かったが、いつもの彼に戻ってくれたようだ。


「ねぇ、りゅう兄ちゃん、公園に遊びに行こ」

桃花が島崎くんの手を引っ張る。

「バカ、退院したばかりだろ。まだ安静にしとけ」

「えー、大丈夫なのにー。じゃあ、うちで遊ぼ?」

「え、そんな急に」

彼が私に目配せしてくる。

「よかったらぜひ、うちに来てやって」

「仕方ねーな」

てなわけで、島崎くんがうちに来ることになった。

平静を装ってああ言ったけど、内心めちゃくちゃ動揺していた。

島崎くんがうちに?

しかも、昨日、流れで手を重ねたりしちゃったし。

冷静に思い出すと、恥ずかしすぎる。

彼は昨日のこと、どう思ってるのかな。


◇◇◇


「ババ抜きしよー」

と桃花がトランプを持って来た。

「負けたら罰ゲームね。1位の人の言うことを絶対聞くこと」

「おい、勝手に決めるなよ」

島崎くんの反論をスルーし、桃花は3人分のカードを配り始める。

観念したように手持ちのカードを合わせ始める彼。

私も配られたカードを手に取る。

げっ、ジョーカーあるじゃん。

罰ゲームだけは、逃れたい。


そして、ゲーム開始。

私の手札から島崎くんがカードを引くのだが、なかなかジョーカーを引いてくれない。

そして、桃花が一抜けし、私の手札はジョーカーを含めて2枚。

次に、島崎くんがジョーカーを引いてくれないと、私の負けだ。

「りゅう兄ちゃん。お姉ちゃん、すぐ顔に出るから、よく見たらわかるよ」

「ちょっと桃花、変なこと言わないでよ」

「そうかそうか」

彼が私の手札に手をかけながら、私の顔をまじまじと見つめてくる。

え、やだこれ、めっちゃ恥ずかしい。

彼から顔を逸らす。

「お姉ちゃん、顔赤い」

桃花が、私を指差しながらニヤニヤしている。

そうしている間に、彼が何食わぬ顔でカードを引き、私の手にはジョーカーが残った。

「わーい、お姉ちゃんの負けー! 罰ゲームだー。何してもらおうかな」

と悪そうな笑みを浮かべる桃花。

「変なのやめてよ」

「決めた! 私とりゅう兄ちゃんの好きなところを3つ挙げよ」

「えー、好きなところって」

動揺を隠せない私。

桃花が期待の眼差しを向けてくる。

「えっと、じゃあ桃花から。んー、明るいところと、ポジティブなところと、コミュ力が高いところ、かな」

「いやー、照れますな」

満足そうに、ニンマリ顔の桃花。

てか、

てかこれ、全部、私が桃花を羨ましく思ってるところだな。

「はい、じゃあ次、りゅう兄ちゃんの好きなところ」

桃花がニヤニヤしながら見てくる。

「え、えっと、島崎くんは……」

彼を見ると、真っ直ぐに私を見つめていた。

なんだろう、彼に見つめられると、体が熱くなってくる。

思い返してみると、いつも隣から横顔を見ることが多いから、こうやって真正面から目を合わせることは、あまりなかった。

島崎くんって、こんなにかっこよかったんだ。

こないだの図書館でのドキドキといい、私、どうしちゃったんだろう。

「え、えっと、優しいところと、パン作りが上手なところと……」

やばい、顔を合わせられない。

変な汗が出てきた。

「もう一つは?」

彼が急かしてくる。

「んっと。えっと、かっこいいところ」

な、何言ってんの私。

恥ずかしすぎる。

「どうも」

そう言いながら、前髪を触る彼。

「きゃー、お姉ちゃん積極的ー」

「ち、違う。そういうんじゃなくて、普通にかっこいいなって」

だから、何言ってんの私。

「お姉ちゃんが茹でたこになったところで、おやつでも食べよ。お腹すいちゃった」

まだ鼓動が鎮まらない私をよそに、島崎くんが持って来てくれたパンにかぶりつく桃花。

「桃のデニッシュ、すごく美味しい」

「だろー。春野にもデニッシュ持って来たぞ」

と彼から差し出されたのは、生ハムメロンデニッシュ。

私が、また食べたいって言ったの、覚えててくれたんだ。

お礼を言い、デニッシュを受け取る。

3人で食べるデニッシュは、1人で食べた時よりも、さらに美味しく感じた。


「じゃあ、そろそろ帰るわ。桃、まだ無茶するなよ」

島崎くんが荷物を持ち、玄関に向かう。

「りゅう兄ちゃん、ありがとう。また遊びに来てね。お姉ちゃん、お見送りよろしく」

「え、あ、うん」

彼に続き、私も玄関を出る。

家の前まで出た彼が、私へ向き直る。

「春野、昨日はありがとう」

「え、いや、何もしてないよ、私」

手は握ったけど。

「あんな話、家族以外にしたことなかったのに、なんかお前には聞いてほしくなった」

彼が、照れくさそうに笑う。

「いつも私ばっかり弱音吐いてるから、たまには島崎くんも吐いていいんだよ」

「サンキュー」

柔らかく微笑んだ彼は、「また学校で」と軽く右手を上げて、帰って行った。

私はその背中を、見えなくなるまで見送った。

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