私の居場所
そして、いよいよ一学期の期末試験が始まった。
勉強会の甲斐あって、中間考査よりかなり成績は上がった。
そして、試験が終わっても、放課後になると自然と私の足は図書室に向かっていた。
勉強会に参加することになった時は、成り行きだったし、試験が終わるまでならと思っていたけど、予想外にあの図書室での時間が心地よかった。
教室で1人でいる時は、なんだか落ち着かない感じがするけど、昼休みの中庭と放課後の図書室は、とても落ち着ける空間だ。
一緒にいる人のおかげかな。
図書室には、当たり前のように3人がいた。
試験で解けなかった問題の復習や、夏休みの課題に取り掛かっている人など、いつも通り、教え合いながら取り組んでいる。
私もいつもの席に座る。
勉強が一区切りつき、そろそろ帰ろうかと言う空気になった時、唐突に美希が言った。
「今週の日曜日、みんな空いてる?試験のお疲れ会しようよ」
それを聞いた佐々木さんと小林先輩は、「いいねー」と乗り気だ。
私も流れに逆らえず同意した。
流れに逆らえずとは言っても、嫌なわけではない。
むしろ、このメンバーならいいかなと思えている。
島崎くんの言うように、ほんと変わったんだな、私。
◇◇◇
そして日曜日。
島崎ベーカリーに行きたいと駄々をこねる桃花を制し、お疲れ会の会場となるカラオケ店に向かう。
待ち合わせ時間の5分前に到着すると、すでに佐々木さんが待っていた。
いつものお下げは下ろしていて、少しウェーブのかかった髪が背中まで伸びている。
服装は、白のブラウスに紺のロングスカートと、清楚な感じだ。
イメージ通りだな。
「早いね」
「今来た所だよ」
そんな挨拶を交わし、会話が途切れる。
佐々木さんと2人っきりって、久しぶりだな。
何を話せば。
こういう時のコミュ力のなさは、変わってないな。
すると、佐々木さんが沈黙を破ってくれた。
「つむぎちゃん、無理して私たちに付き合ってない?」
「え、」
「ほら、1人が楽って言ってたのに、美希ちゃんが強引に勉強会に誘ったから、断れなかったのかなって」
島崎くんと同じことを、心配してくれてたんだ。
私、自分が人に気を使うのがしんどいとか言いつつ、周りの人にめちゃくちゃ気を遣わせてる。
「全然そんなことないよ。自分でも驚くほど、みんなといるのは落ち着くんだよね」
佐々木さんが、安堵したように息を吐く。
「それならよかった。私も4人でいるの楽しいよ」
その時、ピンクのワンピース姿の美希と、ブルーのシャツにジーパン姿の小林先輩が、やって来た。
美希はやはり、お嬢様オーラが滲み出ていて、小林先輩はスタイリッシュに決まっている。
「わー、みんなの私服新鮮ね」
互いの私服姿を、一通り褒め合い、私たちはカラオケ店へと入って行った。
で、カラオケに来たのはいいが、誰かと来るのが久しぶり過ぎて、何を歌えばいいのやら。
1人の時はひたすらアニソンなのだが、おそらく喜んでくれるのは小林先輩だけで、あとの2人には引かれるかもしれない。
悩んでいると、美希が一番手に名乗りをあげた。
今流行りの、女性アイドルグループの曲だ。
っぽいなー。
次に佐々木さんが、マイクを取る。
こちらは意外にも昭和の歌謡曲だ。
最近の曲には疎いらしく、親が聴いている昭和の曲しかわからないとのこと。
そして気になる小林先輩は……アニメの曲だ。
けど、声優さんが歌ういかにもなアニソンではなく、普通のJ-popアーティストが、アニメに提供した曲だ。
なるほど、そう来たか。
しかもこの曲は、夏目友人本のオープニング曲だ。
「知らないなー」
「でも、いい曲だね」
と話している2人に、これはアニメの曲で、アニメも素晴らしいと熱弁したい気持ちを、グッと堪えた。
歌い終わった小林先輩が、私の方を見る。
こっそりグーサインを出すと、笑顔が返ってきた。
私も、小林先輩に習ってアニソンと気づかれないアニソンを歌った。
案の定、小林先輩だけ知っているようで、視線で会話を交わした。
その後も、4時間ほどカラオケを楽しみ、私たちは解散した。
なんだかんだ、楽しかったな。
また、4人で出かけたいと思った。
帰り道、突然スマホに着信が入った。
画面を見ると、妹の桃花の名前があった。
妙な胸騒ぎを抱きながら、通話ボタンを押す。
「もしもし桃花? どうしたの?」
すると、予想外の人の声が返ってきた。
「春野か?大変なんだ。桃が……」
それは、初めて聞く彼の酷く焦った声だった。




