どうしてこんなに緊張してるの私
翌日の昼休み。
「あー、いよいよ来週から期末試験かー」
「放課後の勉強会はどうなんだよ」
「ちゃんと勉強してるよ」
「お前のことだから、周りの空気ばっか読んで、参考書読む暇ないとかになってんじゃねーかと思った」
「全然そんなことないんだなー、これが。昨日なんて、みんなで美希の家にお邪魔したし」
「まじかよ。呼び捨てになってるし、苦手とか言ってめちゃ仲良くなってんじゃん」
「まぁね。美希いい子だし」
「お前、この数週間で変わったな。こないだまで1人が楽って言ってたのに、えらく仲間が増えたじゃん」
「なにー? ぼっち仲間が仲間作って寂しいの?」
「ちげーし」
これまでの友達には、こんな冗談も言えなかった。
うざいと思われるかな、嫌われるかな、と思っては、言葉を飲み込むばかりだった。
でも、島崎くんには、言ってしまう。
そして、彼は笑って受け入れてくれる。
美希たちと一緒に勉強しようと思えたのも、彼の存在があったからかもしれない。
「それにね、図書室で知り合った2年生の先輩が勉強教えてくれててね、みんなとっても助かってるんだー。男の人なんだけど、すごく話しやすくて親切でさ」
彼の顔が、かすかに曇る。
「俺だって勉強教えられるけど?」
「何、先輩に対抗心燃やしちゃってんのよ」
「そんなんじゃねーし」
数秒考えるような仕草をした後、彼が言った。
「明日、勉強会やるか?」
「誰と?」
「俺とお前で」
彼が前髪を触りながら言う。
「どういう風の吹き回し?」
「いや、まだ不安なところがあるなら、教えてやろうかと思ったんだけど、別に嫌ならいいけど」
「お、お願いします」
てなわけで、島崎くんと2人で、勉強会をすることになった。
◇◇◇
翌日の土曜日。
私たちは近くの図書館に集まった。
彼は公園で見たスポーティーな服装とは違い、ダボッとした黒いTシャツにジーンズと、ラフな感じだ。
一方、私はピンクのブラウスにブルーのふんわりしたスカート。
ちょっと温度差を感じる。
いやいや、服装なんて関係ない。
勉強にきたんだから。
図書館に入り、2人並んで座る。
これ、他人から見たら、私たちってどういう関係に見えるんだろう。
赤髪ピアスの高校生が図書館にいるだけでも、かなり目立ってる。
「わかんねーとこあったらどんどん聞けよ」
「うん、ありがとう」
さっそく苦手な数学から取り掛かる。
わー、この方式わけわかんないんだよな。
こないだ、小林先輩や佐々木さんにも散々聞いたけど、結局理解できなかったんだよなー。
ふと横を見ると、彼がサラサラと問題を解いている。
ほんとに頭いいんだな。
「何? わかんねーの?」
「あ、うん、ここどうやるんだっけ」
「ここはだな」
彼が私の方に体を寄せる。
まっ、ちょっ、近っ。
私、ここに来るまでに汗かいたけど臭くないかな。
お昼に食べたとんこつラーメンの匂いとか残ってない?
「おい、聞いてんの?」
「え、うん。聞いてる聞いてる」
私、男子に免疫なさすぎ!
小林先輩に教えてもらう時は、こんなことないのに。
その後も、彼との距離の近さに緊張してしまい、あまり集中して勉強することができなかった。




